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そんなに負担はできやしないの特集
 

公平の理論

世代会計

generational accounting 各世代別に、政府に対する支払い(税金の納付、国債の購入、年金の支払い)と政府からの受取り(補助金の受取り、国債の利払いの受取り、年金給付)をそれぞれ分類して、しかもそれをある世代に属している人が一生の間に合計でどれだけ受け取ったり支払ったりしているかを計算して、世代別の損得勘定を確定することを、世代会計という。このような作業は、近年、アメリカの有力な財政学者であるコトリコフ(L.J. Kotlikoff)らによって提唱され、最近ではわが国を含めて主要な先進諸国で、数量的な作業が進められている。世代別のトータルな損得勘定が確定すれば、財政制度によって、どのような世代間の再分配が行われているのかが明確になる。また、世代会計はストックベースの指標であり、フローベースの指標である財政赤字よりも、ストック化した経済では財政に関するより有益な指標と考えられている。

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将来世代の負担

burden of future generation 現在世代の人が自分たちの利益のために公債を発行して、国民経済全体から必要とは思われないものまでつくると、財政が放漫化し、その後始末が将来世代に転嫁される。公債や年金は、自然環境と同じく、現在世代の行動が将来世代の生活環境、経済環境に大きな影響をあたえるものである。それらはいずれもストック変数であり、短期的には変更が効かず、長期的に大きな影響をあたえる。ともすれば、現在世代の短期的な利益を優先して財政政策が決定されると、将来世代に大きなデメリットをあたえる。特に、高齢化・少子化が進展し、老年世代ほど投票の機会費用が小さくて、選挙に行きやすいことを考えると、現在の老人世代や団塊の世代の利益を反映した政策が採用されやすくなる。

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リカードの中立命題

Ricard's debt neutrality 公債発行と公債償還が同一の世代に限定されているとき、ある一定の政府支出を公債発行と課税調達で賄うのでは、まったく同じ効果をもつという命題。課税調達のときと現在価値でみて同じ税金を支払うのであれば、公債発行と課税調達に実質的な差はない。この議論は「リカードの中立命題」とよばれている。人びとが生涯にわたる予算制約式に基づいて最適化行動をするかぎり、どの時点で課税されても税負担の現在価値は同じであって、生涯にわたる予算制約も同じとなる。課税と公債とではなんら相違はない。公債発行、あるいは財政赤字のマクロ的な効果がないという公債の中立命題が成立する。

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バローの中立命題

Barro's debt neutrality 公債の償還するのを先送りし、借り換え債をどんどん発行していけば、現在の世代が死んでから現在の公債が償還される。世代の枠を考慮すると、リカードの中立命題は成立しない。この場合にも課税と公債の無差別を主張するのが、遺産による世代間での自発的な再配分効果を考慮する「バローの中立命題」である。バローは、親の世代が利他的な遺産動機をもつことで、子の効用=経済状態にも関心をもつことを指摘し、その結果、子の子である孫の世代、さらに孫の子であるひ孫の世代の効用にも関心をもつことを示した。これは、結局無限の先の世代のことまで間接的に関心をもつことを意味するから、いくら公債の償還が先送りされても、人びとは自らの生涯の間に償還があるときと同じように行動する。公債発行と償還のための課税が同一の世代の枠を超えても、公債の中立命題が成立する。

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二重の負担

年金財政を賦課方式から積立方式に切り替える際に生じる負担。賦課方式の年金では世代間扶養が順送りになされる一方、積立方式の年金は同一世代内部だけで短命に終わる人から長命の人へ所得を再分配する。賦課方式から積立方式へ切り替えると、切り替え時点の青壮年層は両親や祖父母の年金を賦課方式で支えながら、自分の老後は子どもや孫をあてにせず自分の世代だけの年金積立てで備えることになる。特定の世代だけに老後生活資金を二度調達させることは平時では容易ではない。

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クロヨン課税

本誌1986年版収録。以下、

所得税を国が徴収するに当たり、給与所得者等に対する税の捕捉割合をいう言葉であって、給与所得者は90%、営業所得者は60%、農業所得者は40%の所得しか捕捉されていないことをいい、このことから「九・六・四(くろよん)」というようになった。また、さらにこれを「トウゴウサンピン」という場合もある。

これは、給与所得者は100%であるのに対して政治家は10%しか捕捉されないという推測から。

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