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「日本新語・流行語大賞」からみる今年のキーワード
 

ムネオハウス

あっせん収賄、受託収賄、議院証言法違反、政治資金規正法などの容疑で逮捕、起訴、追起訴されている鈴木宗男・元北海道沖縄開発庁長官は、「疑惑のデパート」とよばれた。北方四島支援事業に絡む「友好の家」(ムネオハウス)建設の不正入札問題はじめ、ディーゼル発電所不正入札問題、国有林の無断伐採の製材会社「やまりん」から収賄…。

鈴木議員が、報道や部外者のみならず支援や利益を受けている側からも「鈴木」ではなくカタカナの「ムネオ」であるのは、強引な利権誘導・金権政治というスタイルがもはや少々古いということ、所作・行動が少しこっけいな印象を与えるからであろう。

受賞者:衆院予算委において北方領土・国後島の「友好の家」(ムネオハウス)の不正入札問題等を鋭く追及した共産党所属衆院議員。

佐々木憲昭 さん

関連項目

政官接触

鈴木宗男・元北海道沖縄開発庁長官をめぐる一連の疑惑は、わが国の政治がもつ根本的な問題を再び白日の下にさらすことになった。北方領土・国後島の「友好の家」(ムネオハウス)の不正入札問題、国後・択捉・色丹島のディーゼル発電所不正入札問題、国後島の桟橋改修工事問題などでは、鈴木議員が外務省に直接指示を出し、地元企業を含む特定の企業に落札させる準備をさせたことが疑われている。また、国有林の無断伐採で入札参加停止7カ月の処分を受けた製材会社「やまりん」から依頼(請託)を受け、入札停止解除後、1年さかのぼって事業を行わせるなどの便宜提供の見返りとして500万円を受け取ったことも明らかになっている。これら一連の事件が象徴しているように、わが国の政治には、政策立案・執行にかかわる官庁、政策決定にかかわる政治家、そして公共事業に食い込もうとする企業(財界)との間の癒着関係が根深く存在する。自民党の国家戦略本部・国家ビジョン策定委員会は、政治家と省庁が接触する場合は、「原則として閣僚、副大臣、政務官」に限定するという緊急アピールを提出した。特定の政策領域に大きな影響力をもつ、「族議員」の政策立案過程や執行過程への影響を断つのが目的。しかし、現行のシステムを維持したまま、政治家と官僚との接触を形式的に断っても、結局は、闇で癒着が継続される危険性もある。この意味では、内閣の機能強化や首相公選制などの議論が出てくるのもうなずける。しかし、伝統的に官僚機構が大きな力をもち、政策の基本的枠組が各省庁によって形作られているわが国の政治文化のなかでは、単なる制度改革だけでは十分ではない。国と地方の役割分担、地方自治体の財政的自立を確保する方策なども含めて抜本的に検討する必要がある。

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北方四島支援事業

1991年のソ連崩壊にともなう混乱で生活環境が悪化した北方四島在住のロシア人に対する人道支援として日本政府が始めた事業。93(平成5)年からはロシアなど旧ソ連諸国と設立した国際機関「支援委員会」を通じ本格化、2001年度までに計約91億円分を実施。診療所、発電所、ムネオハウスとよばれる宿泊施設などの建設事業が中心。

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ムネオ号

政府が4億1685万円を出した国後島の「友好の家」が「ムネオハウス」とよばれているほかに、色丹島の診療所が「鈴木宗男診療所」、政府が贈った4輪駆動車が「ムネオ号」とよばれている。

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鈴木宗男汚職容疑事件

2002(平成14)年9月13日、元北海道沖縄開発庁長官・鈴木宗男衆院議員(54)が、<1>あっせん収賄、<2>受託収賄、<3>議院証言法違反、<4>政治資金規正法などの容疑で逮捕、起訴、追起訴された4事件に関する東京地検特捜部の捜査が終結した。

捜査は、異例の「検事50人体制」で、「広く薄く」集められた巨額資金の流れを追い、87日間にも及ぶ拘置にも否認を通し続ける鈴木被告と検察の戦いは、11月からの公判廷に持ち越された。事件の発端は、2月4日、アフガン復興支援会議での鈴木被告のNGO(民間活動団体)排除ととられる行為が外務省での異例の権勢執行として問題化した事件。次いで、衆院運営委員長辞任、衆院予算委での参考人質疑などを経て3月4日、外務省が鈴木被告の一連の公的振舞いを「社会通念に照らしてあってはならない異常」と総括した調査報告書を発表。さらに、衆院予算委での証人喚問、野党による偽証告発、鈴木被告の自民党離党など疑惑の深まるなかの4月30日。国後島「友好の家(ムネオハウス)」の入札妨害事件で、東京地検特捜部は、鈴木被告の宮野明公設第1秘書ら7名を偽計業務妨害容疑で逮捕。5月14日、外務省関連団体「支援委員会」の不正支出事件で、佐藤優外務省元主任分析官と前島陽元ロシア支援室課長補佐の両名を背任容疑で逮捕に続き、6月17日、特捜部は、林野庁の行政処分をめぐる不正口利き事件に関し、あっせん収賄容疑で衆院に逮捕許諾請求を行う。19日衆院本会議は全会一致でこれを議決。特捜部は鈴木被告をあっせん収賄罪で逮捕、7月10日起訴となった。調べによると、<1>鈴木被告は内閣官房副長官に就任した直後の1998年8月4日、官邸の副長官室で、無断伐採のため入札参加資格停止処分を受けた「やまりん」会長らと面会。処分中に購入できる見込みだった国有林と同量を処分後に随意契約で購入できるよう林野庁に働きかけてほしいとの不正の請託を受け、謝礼として500万円のわいろを受領した疑い。<2>鈴木被告が北海道沖縄開発庁長官だった97〜98年に、有力後援者「島田建設」(網走市)側から、北海道開発局発注(「官製談合」による受注調整疑惑)の複数工事受注で職務に関して同時期に請託を受け、見返りに計600万円のわいろを受け取った受託収賄容疑で8月1日再逮捕(21日追起訴)。また9月13日、特捜部は鈴木被告を<3>議院証言法違反(偽証)と<4>政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で追起訴したことを発表した。「法律と証拠の枠内で、できることはぜんぶやった」という検察の姿勢はいちおう了とするも、捜査が、鈴木被告が深く関与していたと報道された本丸の外務省ODA(政府開発援助)疑惑の中核を摘発できなかったことも確かだろう。

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