月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
「日本新語・流行語大賞」からみる今年のキーワード
 

内部告発

食品の安全・表示事件、リコール事件、医療過誤事件、牛肉偽装事件、原子力発電所トラブル隠し事件など、一連の企業の不祥事を明らかにするきっかけとなった「内部告発」が注目されている。アメリカでは、内部の腐敗などを告発するホイッスル・ブロワー(whistleblower)を保護する法律を先進的に制定しており、イギリスでも、1998年に、公益情報公開法(Public Interest Disclosure Act 1998)が成立した。日本でも、国民生活審議会消費者政策部会「消費者に信頼される事業者となるために―自主行動基準の指針」(平成14年4月)が「公益通報者保護制度」について言及している。

受賞者:27年前に勤務していた運輸会社で違法運賃の実態を内部告発したことから、その後さまざまな嫌がらせと闘いつづけている。

串岡弘昭 さん

関連項目(2002年の“内部告発”)

東京女子医大手術ミス隠ぺい事件

立て続けに発生する医療ミス。ついに医師の逮捕という異例の事態になった。2001(平成13)年3月、群馬県高崎市の歯科医師、平柳利明さん(51)の2女、明香さん(当時12=小学6年生)が、東京女子医大病院(東京都新宿区 林直諒院長)で心房中隔欠損症の手術を受けた3日後に死亡した。死因は心不全と説明された。ところが、葬儀を済ませた翌日、父親宛に病院の内部告発と思われる匿名の封書が郵送された。それには、心臓手術中の人工心肺装置ミスによる脳へのダメージが明香さんの死因で、主犯は人工心肺を操作した佐藤一樹医師(38=循環器小児外科助手)で、執刀医の瀬尾和宏医師(46=同講師)がミスを隠した、と記されていた。父親は、死因は心不全とだけ繰り返す病院側の態度に不信感を抱き、02年1月に手術チーム6人を刑事告発した。警視庁捜査一課と牛込署は長時間に及ぶ任意聴取のすえ、6月28日、手術を統括する立場にあった瀬尾を証拠隠滅容疑で、また、心肺装置の操作を担当した佐藤を業務上過失致死容疑で逮捕。両者が事実関係を認めないなど、悪質な点が認められたことから医療事故では異例の逮捕となった。また、瀬尾は、明香さんが死亡したあと、過ちを隠ぺいするため、看護記録の一部を看護師長(54=証拠隠滅容疑で書類送検)に「俺が責任をもつから」と無理やりに改ざんさせるなど、改ざん箇所は40を超えた。病院側が初めてミスを認めたのは01年10月。同大が依頼した有識者でつくる医療安全管理外部評価委員会の中間報告では、医師たちの上司にあたる小児心臓外科の権威として知られる今井康晴主任教授(66=名誉教授)が改ざんを黙認するなど、組織的隠蔽があったことを指摘した。なお、明香さんの両親は、8月28日、今井元教授を証拠隠滅を指示した容疑で東京地検特捜部に告訴状を提出した。両親は、組織的な隠ぺい体質が改善しないかぎりこの事件は終わらないという。

ページの先頭へ 戻る

日本ハム牛肉偽装事件

不正は雪印食品、日本食品に次いで、食肉加工最大手の日本ハム(本社・大阪市)までもが牛肉買取り制度で不正を犯していた。日本ハムは、グループ企業の日本フード(社長は東平八郎日本ハム副社長・日本ハムの100%子会社)の愛媛、徳島、姫路の3営業部で、2001(平成13)年10月から11月にかけて、輸入牛肉約4.3トンを国産に偽装。日本ハムを通じて申請した約14トンの中に紛れ込ませて、業界団体の日本ハム・ソーセージ工業協同組合に買い取らせ、1010万円の仮払金を詐取していた。抜取り検査では不正を見逃すことがわかった農水省は、保管中のすべての牛肉の箱を開けて中身を調べる全量検査に切り換えると、7月、日本ハム・ソーセージ工業協同組合が「自主点検で対象外の肉を見つけたため」と補助金を返上し、国が止めるのも聞かずに業者に肉を返却。1.3トンの返却を受けた同社は、品質保持期限の切れた肉だといって焼却してしまったのが発覚の発端。庄司元昭専務(64)と東平八郎副社長(69)が隠ぺいを主導したとされ、専務は「(補助)金を返せば問題ないと思った」と述べている。3営業所のそれぞれの部長は「自分の独断でやった」と話し、上層部からの指示を否定。本社も関与を否定している。農水省は9月12日、偽装工作を直接指示した3営業部長の詐欺容疑で刑事告発した。8月20日の新人事の発表で、大社義規同社会長(87)が経営の第一線から退くものの、「名誉」会長職に就くとするなど大甘なもの。この期に及んで「名誉」を付けた部署を新設し、創業者をかばうトンチンカンな感覚に厳しい目が向けられた。6日後、会長は完全撤退することに改められた。また、女性の有識者を社外取締役に迎えたり、内部告発の窓口を社外の弁護士事務所におくなどの、再発防止策が発表された。

ページの先頭へ 戻る

三井・大阪高検検事汚職事件

2002(平成14)年4月22日、大阪地検特捜部は、現職検事で大阪高検公安部長・三井環容疑者を、マンション売買にかかわる登録免許をめぐる詐欺や公務員職権乱用などの疑いで逮捕。また、共犯として指定暴力団山口組系組長ら3容疑者も逮捕した。現職検察幹部が詐欺等暴力団がらみの刑事事件で立件されるという検察史上例のない不祥事件として、法務・検察当局を震撼させた。三井容疑者は、01年来、一部週刊誌等で、特定検察幹部を名指しして、検察の裏金とされる「調査活動費」が、飲食費などに流用されているという報道の内部告発者との見方が検察内部や周辺では一般的だったとされる。しかも、同容疑者は逮捕直前に、検察の裏金をテーマに取材中のテレビ朝日のニュース番組「ザ・スクープ」鳥越俊太郎キャスターのインタビューに応じる約束だったところを検挙されたので、「口封じ」ではないか、とも疑われたのである。

ページの先頭へ 戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS