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「日本新語・流行語大賞」からみる今年のキーワード
 

貸し剥がし

景気も低迷したままで、銀行は不良債権回収もすすまない。そんななかでもBIS規制による自己資本比率を一定水準以上に保つためには、よりリスクの大きい中小零細企業への新しい資金貸し出しを渋り、既に貸しているところからは“引き剥がすように強引”に資金を回収しなければならない。返済の滞ったことのない相手からも性急に元本を回収しようとする、担保の上積みを要求する…など、そのような“貸し剥がし”がますます日本経済の活性を損なっている。

ちょっとやそっとでは解決できなくなっている不良債権回収問題の根本の原因が、好況期の「過剰融資」にあったことの責任など忘れているかのようにだ。

受賞者:いっこうに進まない金融機関の不良債権をまえに、ついに貸出し資金の回収に走り出した元凶。その当事者を特定不能のため〔受賞者保留〕とする。

関連項目

貸し渋り

1998年の新語流行語大賞

金融機関が融資基準・融資条件を厳しくした結果、健全な企業までが必要な資金を調達できなくなることを貸し渋りという。日本の金融機関は伝統的に担保至上主義に基づく貸し出しを行ってきたが、バブル崩壊後の不況や担保不動産価格の大幅下落で不良債権が増大、金融機関の貸し出し姿勢が極端に慎重化している。早期是正措置で求められている自己資本比率規制を達成するため、金融機関が総資産の圧縮を余儀なくされていることも一因。

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30社リスト

金融コンサルタント会社・KPMGフィナンシャル社長である木村剛が、2001(平成13)年6月に自民党経済産業部会で配布したもの。木村は、経営が危ないとされる大手企業が正常先債権や要注意先債権に分類されたまま、銀行が十分に引当金を積んでいないことが不良債権問題の本質であると主張するために、この「30社リスト」を作った。主に、建設、不動産、流通、商社などの分野で経営が悪化している大手企業がリストにあげられているといわれる。実際、引当てを十分に積まないまま、こうした企業が潰れると、多額の損失がいきなり表面化して銀行の収益を圧迫する。その結果、自己資本を大きく減少させる圧力が加わるために、自己資本比率規制を充たすように貸出しを圧縮する(いわゆる貸し渋りや貸し剥がしの)必要に迫られる。

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不良債権

本誌1993年版掲載。以下、

担保不足や利払いの延滞などの理由から、回収が困難と判断されるような貸付金や売掛金等の債権をいう。不良債権の定義は幅広く、<1>担保など債権を確保するための条件は整っているものの、元本や利子の返済が滞っている債権(延滞債権)、(2)回収に懸念があり、損失の発生が見込まれる債権、(3)貸出先の倒産などで回収不能に陥っている債権、がすべて含まれる。

バブル経済の崩壊に伴う不動産不況によって、最近では不動産、ノンバンク向けの融資の一部が不良債権化し、それが銀行経営を圧迫する大きな要因になってきている。不動産市況の低迷下では担保物件の売却による不良債権の回収にも限界があり、銀行の貸出姿勢が過度に慎重になるなどの弊害が懸念されている。

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柳澤伯夫

第1次小泉内閣の金融担当大臣。衆議院議員静岡3区、当選6回。1935(昭和10)年8月18日、静岡県袋井市出身。東京大学法学部卒。大蔵省、在ニューヨーク領事、内閣官房長官秘書官をへて、80年衆議院議員に。財政、金融はもとより、農政、外交と政策の守備範囲が広い。

98年、小渕内閣の国土庁長官。同年、金融再生担当大臣、新設された金融再生委員会の委員長。

2000年第2次森改造内閣において金融再生委員会委員長に再就任。2001年1月の省庁再編で、金融担当大臣、同年第1次小泉内閣において再任。この間には、アジア・ウイーク誌で「アジアのパワフルな政治家」第8位に選ばれ、ビジネス・ウイーク誌でも「アジアの星」に選ばれている。

「銀行は健全で、今は金融危機ではない」と言い続け、公的資金再注入に慎重姿勢を崩さなかったため竹中平蔵経済財政担当大臣と対立、2002年10月の小泉改造内閣で事実上の更迭。金融担当大臣は、竹中氏が兼任。

著書に『赤字財政の10年と4人の総理たち』(日本生産性本部)

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竹中平蔵

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BISの自己資本比率規制

銀行の自己資本比率を規制する国際的統一基準。その対象となる銀行は、国際決済銀行(BIS)の銀行規制監督委員会メンバー12カ国(ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、日本、オランダ、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカ)の国際業務を営む銀行。BIS規制の特徴としては、自己資本比率としてリスク・アセット・レシオ(危険資産比率)を用いていることが最も重要である。リスク・アセット・レシオとは、自己資本比率(自己資本÷資産)を算出する際の分母として、銀行の資産をそのリスクの度合いに応じてウェイトづけして集計したものを用いる方式をいう。具体的には、現金、自国中央政府向け債権(国債など)はリスク・ウェイト0%、民間部門向け債権は100%というように、危険度が増すほどその資産の掛け目が高くなる。BIS規制では、リスク・アセット・レシオを1993年3月末以降8%以上に維持することを求めている。BIS規制の背景としては、まず、累積債務問題の深刻化で「国際的な銀行システムの健全性の確保」が焦眉の課題となったことをあげることができよう。ただ、同時に、金融のグローバル化で「国際的な銀行間の競争条件の同一化」が必要になってきたことも見逃すことができない。

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BIS(国際決済銀行)

ビス Bank for International Settlements。もともとは第1次世界大戦後ドイツの賠償問題処理のため1930年にバーゼルに設立された銀行であるが、第2次世界大戦後は主要国中央銀行の国際金融・通貨問題解決のための政策協調機関として重要な役割を果たしてきた。60年代から70年代にかけてはイギリス・ポンド残高の処理、ユーロ・カレンシー市場の実態把握などに貢献したが、74年にG10(→ G7)による銀行監督のためのバーゼル委員会ができてからは、その事務局として銀行監督に関する国際協力の推進者となった。92年には国際業務を営む銀行には一定比率以上の自己資本維持を義務づける、いわゆるBISの自己資本比率規制を導入した。現在世界の33の中央銀行がBISの株主となっているが、理事会を構成する主要国中央銀行の月例会議は国際金融・通貨問題に関する意見交換の場ともなっている。各国中央銀行から受け入れた預金を運用する銀行業務も行っており、国際的な金融危機の際には短期のブリッジ・ローンを提供して支援活動に参加することもある。

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