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政治につきもののお金の事典〜収入編〜
秘書給与のピンハネくらいで足りるのか?
執筆・協力   齋藤信義(ジャーナリスト)

“先生”としてのお仕事

口利き料

政治家の究極の“裏技”。業者と役人とのパイプ役となり、斡旋料をせしめる手口である。許認可、公共事業など、実務を取り仕切る役人に業者を紹介し、実益を得た業者から「口利き料」をもらう。もっとも代表的で、かつ利益が多いのが公共事業の斡旋で、総事業費の3-5%が相場だという。100億円の公共事業を与えたときは、約5億円をもらえるわけである。もちろん、表にできない金で、現金で受け取ることが鉄則である。「率」は政治家の“実力”によることもあるし、高額な事業の場合は少なくなるという。業者はこのような表に出せない裏献金は、架空の必要経費を捏造し、それでも足りないときは「使途不明金」として会計処理される。これが表沙汰になった場合は、斡旋収賄罪である。

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会社経営

この場合、健全な実業としての会社経営ではない。各種公共事業に元請け、あるいは中請けとして参加するペーパー企業を経営する議員は多い。議員本人が会社の経営陣に名前を連ねることはほとんどないが、親族や有力後援者を責任者としている。議員の権力を基盤として、各種工事を受注し、サヤを抜いて、そのまま下請け、孫請けに丸投げする手口である。伝統的な手法だが、未だに後を絶たない旨みがある商売。もちろん違法だが、証明が難しい点が議員にとっては利点となっている。サヤは、通常工事代金の5-10%といわれる。

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就職斡旋料

議員は有力後援者の子弟を、企業に就職させるために力を尽くしている。いっぽう議員の力を借りたい企業は、議員の頼みを断れないという“利害関係”が成立する。有力後援者の子弟の場合は、“無料”で斡旋することもあるが、斡旋料を取ることもあるという。よくマスコミ等が議員稼業の煩わしさを紋切り型の表現で揶揄する場合に引き合いに出される“この仕事”の斡旋料は、議員の実力、就職した企業などによって千差万別だが、最低でも20万円程度で、多い場合は100万円クラスという。この金は、政治資金として計上はしないヤミ収入となる。

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裏口入学料

これも議員の“仕事”の紋切り型表現であるが、特定の大学には「議員枠」があるという噂は絶えない。毎年、何人かの入学者を議員に割り当て、議員の推薦により入学させているのだという。相場は、文科系で100万円、理科系で200万円、医学部で1,000万円程度という。議員の地元で、秘書が入学希望者を募っているという噂すらある。

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講演料

この場合、講演会で議員に政治の話をしてもらい、その謝礼としての講演料ではない。あやしげな諸団体、自分に箔をつけたい企業や個人が、議員を招いたときに支払う金は「講演料」という名目である。規模、会場、招待主、議員の格によって金額は違うが、50-200万円程度がよく聞かれる金額である。領収書は切らず、裏収入とすることが多い。ちなみに、大勢のひとを前に政治の話をすることは議員本来の仕事であって、また自身の宣伝になるので、じっさいの“講演”は、多くの場合は無料で行われる。

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お車代

企業、諸団体・集団、個人などが、パーティーや集まりを開催したときに、自分の権威づけなどのために議員を招待する場合がある。このとき、帰りにソッと渡すのが「お車代」。最低でも10万円程度。ある議員は、お車代に500万円を渡され、“恐ろしく”なって後で返したという話もある。もちろん裏収入である。

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葬儀出席料

葬儀に参列し、香典を渡すどころか、参列料金を徴収する手口。前議員・加藤紘一夫人が、葬儀に参列して弔辞を読んだ料金500万円を請求したことがバレて世間を騒がしたが、同じようなことは常態化しているという。「僧侶と同額はもらわなければ」とうそぶく議員もいるが、葬儀には僧侶が必要なように、葬儀の格付けのためには議員参列が必要で、したがって料金も同額程度との理屈である。この理屈に従えば50-100万円だが、お車代程度の10万円クラスという声もある。弔辞を読むか読まないかで、金額は違ってくるそうである。当然、領収書を出さない裏資金となる。

田中眞紀子の父・角栄は生前、冠婚葬祭のうち葬儀への出席をとりわけ重視した。葬式は結婚式などと異なり「呼ばれなくても出られる」という“政治向け”の利点があるのもその理由のひとつであったが、その真意は「どんなことがあっても自分に関わりのあった人に対しては冥福を祈る」だったという。「密葬から本葬まで1週間、供えられた花が枯れないのので“おかしい”と調べると、贈り主・田中の指示(花が枯れては仏様がかわいそう)で花屋が新しいのに差し替えていた」という“できすぎた”エピソードまで残る。政治家の器も小さくなったものである。

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結婚式出席料

葬儀出席料と同じ仕組みである。議員は、親しい人物からの招待のときは、お祝い金を用意するのだが、親しさが薄まるにつれ、逆にお車代・結婚式出席料を用意されるというように変化する。その変化は、聞くだけでも気持ちのよいものではないが、そういうことへの差配の上手な秘書が「優秀な秘書」ということになるそうである。とある“成金実業家”が、息子の結婚式に出席した議員全員に100万ずつ円渡したという噂はひろく信じられている。

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