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ランニングというジャンルをめぐる用語集
執筆者 円谷直子

ランニングというジャンルをめぐる用語集

美ジョガー

これまでのランニングのイメージは、禁欲的、つらい、汗くさいというもので、特に女性からは敬遠されがちなスポーツだった。ところが、東京マラソンの開催や皇居ランの人気などで、女性にとっても走ることが身近なものになってきた。

それと同時に、どうせ走るならもっと美しく、オシャレに、楽しく走りたいという意識も高まっている。

美ジョガーとは“美”と“ジョガー”(ジョギングする人)を併せた造語で、そんな女性ランナーたちの総称だ。女性たちのニーズに応えて、スポーツメーカーも女性用のランニングウエアに力を入れている。

人気のランニングスカート(ランスカ)は、スパッツやレギンスの上にはく、テニスのスコートのような短いスカート。女性らしさを出すとともにヒップラインなどの気になる体型をほどよく隠してくれることも人気の理由だ。

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ランスカ

ランニングスカートの略で、ニューバランスが提案した新しいスタイルのスポーツウェア。走りやすいようスリットが入ったスカートにストレッチ素材のインナースパッツが付いている。

機能重視だったウエアも、女性ランナーの増加で色とりどりで華やかなものに様変わりしてきている。

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通勤ランニング

ランニングをしながら通勤すること。いわゆる「通勤ラン」。

ランニングをしたくても忙しくてなかなか時間が作れない、通勤ラッシュを避けられる、ストレス解消になるなどの理由から通勤ランニングを始める人が増えている。

デイパックの中に下着、ワイシャツなどの着替え、タオルなど必要なものを入れて走るのだが、特にこうしなければいけないというルールはない。

走りに自信があるなら行き帰りすべての道のりを走ってもいいし、自宅から職場まで距離があったり、初心者の人は、途中まで交通機関を使ってもいい。

もちろん体調の悪い日は休むこともできる。

自分の好きなようにスケジュールや距離を決められるのが通勤ランニングのよさだ。

どちらにしても、無理せずにできる範囲で走ることが長続きさせる秘訣のようだ。

 

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ファンラン

記録を追求する競技としてのマラソンとは違い、楽しく走ること。

その目的は、健康やダイエットのため、仲間と一緒にわいわい走りたい、仮装をして走りたいなどさまざまだ。

各地で、家族連れ、友だち同士などでファンランを楽しめるマラソン大会が開催されていて、「仮装ランナー」のコンテストなどを行っている大会もある。

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皇居ラン

皇居の周回コースを走ることがランナーたちの間でブームになっている。

1周5km程度でタイムトライアルがしやすい、東京の中心地でアクセスの便がいい、景色がよく走っていて飽きない.、信号がない、適度なアップダウンがあるなどが人気の理由としてあげられる。

皇居周辺には、皇居ランナーをサポートする施設も増えている。

銭湯もそのひとつで、銭湯に荷物を預け、走ったあとは風呂に入って帰るというランナーもいる。

そのほか、ランニングマシンの代わりに皇居ランを取り入れているスポーツジムや女性専用のパウダールームを併設したシャワー施設などもある。皇居を走るランナーの増加とともに問題も浮上している。コースはあくまで歩道であってランニング専用ではない。そのため一般の歩行者からは、走ってくるランナーに危険を感じたなどの苦情も出ており、歩行者への配慮が求められている。

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LSD  Long Slow Distance

「長い距離をゆっくり走る」という意味で、長距離を走るための心肺機能や持久力、筋力を鍛えることのできるトレーニング方法。

具体的には1kmを7分程度のペースで最低でも1時間以上、2時間程度走り続ける練習を行う。

ポイントは、息の乱れない、会話のできる程度のゆっくりとしたスピードで、長い時間をかけて走ること。

仮に1km7分を2時間走った場合、17km以上走ることになり、ハーフマラソンの距離までかなり近づける。

こうして長い距離を走ることに慣れてきたら、少しずつペースアップしていくことで、しだいに長い距離を一定のスピードで走ることが可能になる。

 

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東京マラソン

2007年から開催されている日本最大の市民マラソン大会。招待選手をはじめとするトップランナーと一般の市民ランナーが共に走り、参加人数は3万人を超える。

人気の背景として、東京都庁から飯田橋、皇居前、日比谷、品川、銀座、日本橋、浅草雷門、築地、豊洲、東京ビッグサイトという東京の名所を走るコース設定である、制限時間が7時間(10kmは1時間40分)で初心者でも完走しやすいなどがあげられる。2015年は2月22日に開催予定。

東京マラソンの成功に続けと、全国各地で新たな市民マラソンが開催される。11年10月から開催されている大阪マラソンは、道頓堀、通天閣など大阪の名所を通過するコース設定で、東京マラソン同様3万人近い規模の大会になっている。

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サブスリー

42.195kmのフルマラソンを3時間未満(2時間台)で完走すること。

フルマラソンでサブスリーのできるランナーはほんの一握りのため、市民ランナーの憧れのタイムとなっている。

2010年の東京マラソンでも3時間未満で走ったランナーは499人(男子472人、女子27人)で、全体のたった1.7%にしか満たない。

同じような用語でサブフォーもあり、これはフルマラソンを4時間未満で完走すること。同じく10年の東京マラソンでは5816人で全体の19.3%となっている。

一般的にフルマラソンでは、初心者は完走、中級者はサブフォー、上級者はサブスリーを目標にすることが多い。

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ランナーズハイ

長時間走り続けているうちに、気分が高揚してきて、いつまでも走り続けられるような気持ちになってくる現象のこと。

走っている最中に、モルヒネに似た性質のエンドルフィンという神経伝達物質が脳で分泌されるため、体の痛みや疲労が麻痺し高揚感をもたらすといわれる。

ただし、一流のランナーだからといって、だれもが走っている最中にランナーズハイになるわけではない。

 

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カーボローディング

マラソンや長距離の水泳、自転車のロードレースなど、持久力の必要なスポーツに欠かせないエネルギー源がグリコーゲンという物質だ。

レース前にこのグリコーゲンを体内になるべく多く蓄積しておけば、それだけレース中のスタミナ切れを防ぐことができる。

そのための食事療法をカーボローディングという。

これまでのカーボローディングは、レース本番1週間前からグリコーゲンの元となる炭水化物を減らし、3日前になったところで炭水化物の量を増やすという方法が主流だった。

しかし最近では選手の体の負担を考えて、本番3日前から運動量を抑えつつ麺類やご飯などの炭水化物を多くとる、という方法になってきている。

ただし、ランナーによってカーボローディングの方法はさまざまで、必ずしもだれもが行っているわけではない。

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体幹

体の胴体に当たる背中、お腹、お尻などのことで、スポーツはもちろん、日常のあらゆる動作で重要になる部分。

この体幹を鍛えてしっかりとさせると、体の軸がぶれにくく、動きが安定するようになるため、体幹トレーニングはいまやさまざまなスポーツに取り入れられている。

ランニングも同様で、マラソンコーチとして有名な金哲彦が体幹を使ったランニング方法である「体幹ランニング」を提唱している。

肩甲骨や骨盤などの体幹を意識して使うことで正しいフォームが身に付き、体に無理なく、楽に走れるようになるという。

体幹がしっかりすることで腰やひざへの負担が少なくなり故障が防げるうえに、走るスピードも上がってくるそう。

また脂肪も燃焼するのでダイエットにも効果的だという。

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基礎代謝  basal metabolism

基礎代謝とは、体温、呼吸、心拍など、人間が生きていくために必要な最低限のエネルギーのことで、成人では1日約1200〜1500キロカロリーである。

中高年になると太りやすくなるのは、筋肉量の減少にともなって、基礎代謝が低下するのも一因。

したがって、筋肉量を増やせば、基礎代謝が上昇し1日の消費カロリーが増えて、ダイエット効果が高まることになる。

日常生活の中で筋肉量を増やすには、早足歩きや階段登りなどが効果的。

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ウォーミングアップ  warming-up

ウォーミングアップはスポーツを行う前に行う準備運動。関節や筋肉の柔軟性を取り戻すためのストレッチング、心拍数を無理なく高めるためのジョギングなどを通じ、肉体各部にエネルギー源(酸素)を送りやすくし、これからスポーツをするのだという精神的準備を整えるのにも有効である。

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クーリングダウン  cooling-down

クーリングダウンは、スポーツによって興奮状態にある肉体と精神を徐々に、平常時の状態に戻すための軽い運動。そうすることで激しい血液循環が無理なく沈静化する。

ジョギングから歩行に移り、仕上げもウォーミングアップ同様、節々を伸ばしながら体をほぐすストレッチングを行うといい。

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無酸素運動  anaerobic exercise

無酸素運動は、エネルギー源が筋グリコーゲンの分解によることから解糖系運動とも呼ばれ、運動中にピルビン酸や乳酸という疲労物質が発生する。

筋肉内に多量の乳酸が蓄積すると収縮できなくなるため、無酸素運動はせいぜい2〜3分が限度である。

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有酸素運動  aerobic exercise

有酸素運動は酸化系運動とも呼ばれ、筋肉内に発生した乳酸を酸素で分解するため、筋肉は疲労なしに長時間の運動が継続できる。

エアロビクス(aerobics)と呼ばれるのはこの有酸素運動である。

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ランニング障害  running injury

ランニングによる負荷のかけ過ぎが原因で、股関節や下肢に起きる故障のことで、最近の健康志向や市民参加型の大会の増加により、比較的経験の浅いマラソン愛好家に多く発症する。

原因としては、自己流の練習メニューによる練習量の過多やランニングフォームの欠陥などがある。

予防には、適切な練習量のコントロールや練習後の疲労回復などが重要である。

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機能性タイツ

スポーツ時に筋肉や関節の動きを安定させ、けがを防ぐタイツ。ワコールの「CW-X」はひざ、腰、股関節に加え、カラダを支えるのに重要なおしり、ふとももの筋肉までサポート。必要な箇所に簡単に着用できて、動きやすいと評判を呼んでいる。

 サポーターも以前は保温するようなシンプルな商品が主流だったが、近年は間接部を固定しつつ身体の動きを助ける機能性商品が増え、市場を活性化している。

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サイクルメーター  cycle meter

サイクリングやランニングなどで走った距離や消費カロリーを自動的に記録する機器が次々に発売されている。

あるメーカーのサイクルメーターは、5cm程度の小さな機器を自転車に取り付けると、タイヤの回転速度を感知し、走行距離や消費カロリーなどを計測してくれる。

専用のサイトに接続すると、走行データをグラフで管理し、利用者同士で励まし合うこともできる。

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ウォーキング  walking

ウォーキングは、健康づくりを目的とした歩行運動(walking exercise)のことで、ジョギングやランニングと比較して運動強度が低いことから、日常生活の中で、いつでも、どこでも、気軽に実施でき、しかも病弱者や低体力者、高齢者でも体力に応じて安全に行えるのが特徴である。

ジョギングで走るときは人間のひざには体重の3.3〜3.5倍もの重量がかかり、ひざの故障(ジョガーズ・ニー)が問題になるが、ウォーキングなら左右どちらかの足が地面に着いているので、ひざへの負担は大幅に軽減されるという理屈である。

健康づくりのウォーキングは、毎分100メートル程度の早足歩きを1日30分以上、毎日続けることが必要となる。

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トレイルラン

起伏のある森や山など自然の中の「小道」(トレイル)を走る新しいアウトドアスポーツ。

日本には山や森林が多いこともあり、その自然を利用して最近ではさまざまなレースが開催されている。

トレイルランの人気の背景には、舗装されていない自然の中を走ることで癒される、コースが起伏に飛んでいて飽きない、厳しい自然の中を走る緊張感や達成感がある、などの理由が考えられる。

走るコースは山や森でハイキングコースとして設定されているルートを走るのが一般的だが、上級者になるとオリジナルのルートを開拓して走ることもある。

ただ通常のマラソンと違って、未整地の路面を走ることも少なくないので、しっかりとしたトレーニングを積んでおくことはもちろん、ある程度、山の知識やルールを知っておく必要もある。

一番恐ろしいのは、道に迷って遭難してしまうことなので、方位磁石の使い方や山岳地図の読み方を覚えておくことも大切だ。

一般の登山者などからは、トレイルランのコースを設定することによって自然にダメージを与える、岩場を走ることで落石事故を生むなどの危険性を指摘する声も出ている。

登山者優先などまわりへの配慮やマナーも求められている。

 

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突然死

突然死とは、それまでは元気だった人が一見何の前触れもなく倒れ、死に至ること。とくに1980年代以降のジョギング・ブームのさなかには毎年のように突然死が続出し、社会問題化していたが、現在もスポーツ中の突然死は減少していない。

種目別ではジョギングを筆頭にゴルフ、水泳、ゲートボールなどと「健康スポーツ」に多いのが特徴。

逆に野球、テニス、サッカー、ラグビーなどハードなスポーツ種目の突然死が意外に少ない。

つまり、日頃スポーツに親しんでいない人が急に肉体に付加を与えることの危険性がまざまざとわかる結果となっている。直接の死因としては、やはり心筋梗塞、不整脈など急性の心臓疾患が多い。直射日光にさらされることによって起こる熱中症が心臓に負担を与える例も目立つ。

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