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世の中不信になりそうです

偽装とおカネの用語集

偽装輸出

1955年度版本誌掲載。以下、

輸出契約を結ばないのに、既に契約が成立した如く偽装することを言う。原料綿花が綿製品の輸出にリンクして割り当てられていた当時、しかも輸出価格より国内価格が高い水準にあったところから、一部の貿易商が、外商と結託して計画的に輸出契約を結び、一応原綿の割り当てをうけてから後に、契約が取り消された形にして、その製品を有利な価格で国内に売却した。法規上では、現実に輸出契約が結ばれなければ為替予約は許されないので、この輸出の擬制契約にもとづき為替予約を行って、輸出にリンクした原料の割り当てを受け、これを流用した一種の違法行為である。

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粉飾預金

1955年度版本誌掲載。以下、

銀行がみせかけに作った預金のこと。それは、店頭の窓飾りになぞらえて、ウインドウ・ドレッシング(Window Dressing)ともよばれる。粉飾預金は、手形交換所から持ち帰った小切手を、その日に預金口座から引き落とさずに、翌日引き落としたり、貸付金の返済があった場合に、貸付はそのままとして、返済金を一旦預金としておくこと、などの方法で作られる。預金を多く見せかけようとする理由は、それによって、顧客の信用を厚くしたり、日本銀行の高率適用を免れようとすることなどにある。

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偽装解雇

1955年度版本誌掲載。以下、

国内の需要減や外炭の輸入で不況に陥った炭鉱が、おきまりの操短となったが、休業手当も出せないとあって、労働者となれあいで解雇の形を取り、失業手当の期間中官費で休業させるという窮余の策。

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粉飾決算

1966年度版本誌掲載。以下、

企業経営が危機にひんしているにもかかわらず、さも健全経営であるかのようにごまかす決算。昭和40年3月、倒産した山陽特殊鋼会社が、実質的には赤字だったに関わらず、毎期数億円にのぼる黒字を決算面に計上、年1割以上もの配当を行っていたことから問題となった。粉飾の方法は非常に巧妙で、企業の提出するごまかし資料を、公認会計士でも見破ることは困難だといわれ、なかには企業と監査する会計士のなれ合いもあるようだ。

これを防止するには(1)企業の財務内容に対する立入り検査、(2)公認会計士の監査権限の拡充、(3)公認会計士に対する罰則の強化などが必要とされている。

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逆粉飾

1968年度版本誌掲載。以下、

企業における決算の過小表示。実体が赤字であるにもかかわらず、黒字にみせかける過大表示を粉飾決算というが、その逆に過剰金が多額にあるにもかかわらず、それを純益として配当金に回さず、いろいろな名目の“引き当て金”として社内留保に向ける決算の仕方をいう。商法第287条の2に「特定の支出に備えて引き当て金を設けてもよい」との規定があるから、違法とはいえないが、さいきんあまりその度がひどいので、大蔵省が問題にし実態調査を行った。引き当て金には、たとえば法人税引き当てとして三年先、五年先の分まで積み立てるとか、研究開発引き当て金、特別修繕引き当て金、貸し倒れ引き当て金、退職給与引き当て金などがある。

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偽装請負(委託)

契約上は請負という形を取っているにもかかわらず、その実態が労働者派遣である場合「労働基準法第6条(中間搾取の排除)」にあたる可能性がでてくる。労働者派遣とは労働者を注文主の管理下へ常駐させ、注文主の指揮命令を元に業務をさせることである。業務が「労働者派遣」と「請負」のどちらにあたるのかという判断は、契約(書類)ではなくその実態、指揮系統による。

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偽装倒産

企業がある目的のために故意に倒産をすること。社員(組合員)の解雇、不祥事の証拠隠滅など、自社が抱える問題をリセットするために行われることがほとんどで、実際、偽装倒産をした会社の多くはその後新たな資本、環境で業務を再開することが多い。

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偽装農地

1988年度版本誌掲載。以下、

宅地なみ課税を逃れるため、クリ、モモ、ウメの苗木を植えたままほったらかしにしている農地。自治省は三大都市圏の189市に、営農認定を厳しくするよう通達を出した。

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山一証券粉飾決算「廃業」事件

1999年度版本誌掲載。以下、

1998(平成10)年3月4日、山一証券の経営破綻を招いた約2700億円の債務隠し事件で、商法違反(違法配当)などに問われた前会長行平次雄、前社長三木敦夫、前副社長白井隆二各容疑者ら三人が東京地検特捜部に逮捕され、同年9月16日、東京地裁で行平、三木両被告の初公判が開かれた。検察側の冒頭陳述によると、「法人の山一」とよばれた同証券は、事業法人から直接資金を預かり一任勘定で運用するなど、いわゆる「ファンド」営業を展開していたが、株式相場の急落以降、膨大な損失を抱え込んだ。行平被告らは、この巨額の含み損を「顧客企業との取引で評価損を生じた場合、決算で損失が表面化しないよう決算期の異なる企業間で含み損のある有価証券を転売する=飛ばし」方式で粉飾決算を重ね、約3500億円の簿外債務を発生させ会社を破綻に追い込んだ責任を追及された。この山一証券破綻の核心である飛ばし処理について、大蔵省の証券局ぐるみの指導・助言があったとの疑惑がある。

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日債銀粉飾決算事件

2000年度版本誌掲載。以下、

1999(平成11)年7月23日、東京地検特捜部と警視庁捜査二課は、日本債権信用銀行の旧経営陣が前年3月期決算を粉飾していたとして、同行の前会長窪田弘、前頭取東郷重興ら6名の旧幹部を証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)の疑いで逮捕し、証券取引監視委員会と合同で各容疑者宅を捜索した。大手銀行のトップが刑事責任を問われるのは、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行に次いで3行目。調べによると、窪田前会長ら旧経営陣は98年3月決算をまとめるにあたって、系列ノンバンクの関連会社や一般貸出先などに対する融資について、回収不能なのに、償却・引き当て等の必要な損失処理をせず、同期の未処理損失(赤字)額などを約800億円過小に偽った有価証券報告書を大蔵省に提出したとされる。粉飾の理由は、98年3月に公的資金注入を受けるため3期連続の赤字を避け、また、実態どおり損失処理した場合、債務超過に陥る可能性があったためとみられる。しかしその間、大蔵省大物OBである窪田前会長の要請による、「大手行は潰さない」とした大蔵当局主導の、銀行12行、保険22社に対する「奉加帳増資」の策動があったとされるが、この「官民合作」で、裁かれるのは「民」だけでいいのだろうか。

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