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オリンピックの歴史に燦然と輝くキーパーソンからキーワード
 

インゲマル・ステンマルク  Ingemar Stenmark

1956年3月18日生まれ。スウェーデンのアルペンスキー選手。

スキーの神

インゲマル・ステンマルク の活躍はまさに「アルペンスキーの神」とも呼ぶにふさわしいものだった。アルペンスキーは、滑降、大回転、回転、複合(現在はこれにスーパー大回転が加わる)から成るが、彼は大回転と回転で圧倒的な強さを誇った。ワールドカップ通算86勝、世界選手権優勝3回、そして1980年のレークプラシッド・オリンピックで金メダル2個という記録を残している。その強さから、同時代の選手たちは「ステンマルクに継ぐ2位は1位と同じだけの価値がある」と語った。

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ワールドカップ

アルペンスキーは競技中に天候が大きくことがあり、滑走順で選手の条件は異なってくる。また陸上などのレースと違って常に転倒の危険性を抱えている。そのため、一発勝負のオリンピックや世界選手権よりも、各地を転戦しながら5から10回のレース行い、その総合成績を競うワールドカップが真の王者を決める大会として評価されている。だからこそ、ステンマルクのワールドカップ86勝(2位はトンバの50勝)は偉大なのである。

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逆転のステンマルク

ステンマルクの強さは、優勝回数だけでは語れない。アルペンスキーは、通常1秒以下のタイム差で争われる。100分の1秒差で勝負が決まることもある。しかし、ステンマルクは2位との間に、大回転で4秒09、回転で3秒16という大差をつけて優勝した記録を残している。また、逆にいえば、1秒以上差をつけられることはほとんど逆転不可能であることを意味する。だが、ステンマルクはこれを覆すような大逆転劇も演じ「逆転のステンマルク」とも呼ばれた。

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テルナビー

スウェーデンの首都ストックホルムから1200キロ北の片田舎、人口600人足らずの小さな村。北緯66度。ステンマルクは、このテルナビーで生まれ育った。そこにあるゲレンデといえば、標高差約170メートル、全長約500メートルと、アルペンスキーをやるのに適した環境ではなかった。しかし、そんな中でもステンマルクは、友人と一緒に我を忘れてスキーに打ち込み、スキー選手だった父親の指導を受けつつ、自分からあらゆるテクニックを試し身につけていった。そして15歳の時に生涯のコーチとなる、イタリアのノグラーと出会う。

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グスタボ・トエニ

イタリアの貴公子と呼ばれたスキー選手。ステンマルクは、出場2回目にあたる1974年のワールドカップで初優勝を遂げる。快進撃はここからはじまる。74/75年のシーズンで5勝し総合優勝争いに食い込む。このシーズンの最終戦は、歴史に残る名勝負となった。4回目の総合優勝を賭けたイタリアのグスタボ・トエニと新星ステンマルクのどちらが勝つかに注目が集まった。イタリア勢が意図的にトエニを援護するなど、レース会場は異様な雰囲気に包まれた。結果はステンマルクがコースアウトしトエニが勝つ。負けはしたが、ステンマルクはこれ以降スター選手として活躍することになる。

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ELAN(エラン)

スロベニア(旧ユーゴスラビア)のスキーメーカー。ステンマルクは、1975/76年、76/77年、77/78年の3シーズン連続でワールドカップ総合優勝を達成する。スウェーデンの若者が一人勝ちする結果に対して、アルペン大国であるオーストリア、イタリア、フランスの大会運営者やスポンサーは苛立ちを隠さなかった。当時は無名のメーカー、エランのスキーを履き続けたことも不満を買った。そのため、79年から総合優勝のポイントの計算方法が、ステンマルクに不利な形に改正されてしまう。

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偉大な沈黙者

ステンマルクは、マスコミに対しては沈黙を通すことでも知られていた。インタビューに対しては、ほとんどイエスかノーでしか答えず、取材する記者たちの頭を悩ませた。北極圏に近い自然だけしかないといっていいような小さな村で生まれ育った彼にとっては、話したことを過剰に演出して書き立てるマスコミは受け入れがたいものだった。ルール改正後も一言も不満を口にすることなく黙々と勝負に挑む彼は、「偉大な沈黙者」と呼ばれた。

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志賀高原スキー場

上信越国立公園の美しい山々にまたがる21のスキー場で構成される日本を代表するスキーエリア。ステンマルクが最後に出場した大会は、1989年3月のワールドカップ・ジャパンシリーズで、大会最終レースにあたる志賀高原スキー場での大回転が引退レースとなった。優勝には至らなかったが2本目の滑走でベストタイムを出し、有終の美を飾っている。

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