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医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと

医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと
  • 通常販売
  • 森田 豊
  • 『ドクターX~外科医・大門未知子~』医療監修の医師が綴る息子としての誠心、医師として描く展望
    家族と自分の為の認知症への備え

    ◆本書は原稿の一部を公開しています。お読みいただく方はこちらをClickしてください。「試し読みサービス」へ

  • 定価 1,430 円(本体 1,300 円 + 税)
    四六 判/ 224ページ
    2022年07月08日 発行
    ISBN 978-4-426-12812-8
  • *ご注意 発行年月日は奥付表記のものです。実際の発売日とは異なります。
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テレビ朝日系『ドクターX~外科医・大門未知子~』医療監修の現役医師が綴る
息子としての誠心、医師として描く展望
兆候、検査、施設選び、予防と対策……そして、それでも失われないもの
――家族と自分のために考えたい認知症への備え

認知症に不安を抱いている方へ
母の病と長年向き合ってきた現役医師が
自らの反省を込めて今、伝えたいこと――


「私、失敗しないので」
 僕が医療監修を務めるドラマ「Doctor-X~外科医・大門未知子~」、主人公の決め台詞だ。この台詞には、僕が長年自分自身に言い聞かせてきた医師としての思いが反映されている。
 ところが、僕は失敗した。それも、僕を心から愛しみ育ててくれた、かけがえのない母に対して。
 僕の母は、23年前にアルツハイマー型認知症を発症し、現在施設で暮らしている。認知力や短期記憶力が日に日に衰え、今では僕以外の家族のことは、ほとんど誰だかわからない。
 アルツハイマー型認知症の多くは、年単位で緩やかに進行する。本人は病識に乏しく、家族はそれと気づかないうちに進んでしまう場合が多い。検査や治療に取りかかるのが遅れても致し方ないと考える人もいるが、僕について言えば、致し方ないでは済まされない。徐々に進行するとはいえ、僕は自分が途方に暮れるまで、家族や主治医と忌憚なく話し合うことも、情報を共有し協力し合うことも、できなかった。
 母に心の底から謝罪したい。僕はこの深い後悔や反省を、本書にまとめてみようと思った。これは母がどのように認知症を発症し、僕らがどう対処し向き合ってきたかを詳述した、23年に及ぶ一認知症患者とその家族の記録である。息子として、医師として、自らがどのような過ちを犯し、その反省から何を学び、考え、どのように行動したかを、恥をさらす覚悟で、包み隠さず書き綴ったつもりである。
 言い訳になるかもしれないが、僕は認知症の専門医ではない。したがって、認知症の予防や治療についての専門的な医学情報を知りたい読者には、物足りなく感じるかもしれない。だが、医師としての経験や知識、母のケースから僕なりに得た認知症に関する知見をもとに、認知症の予防や改善に役立ちそうな内容を、できるだけ盛り込むよう努力した。介護施設の方々にも多大なるご協力をいただき、認知症に対する施設の取り組みなども紹介した。そして最後に、認知症を通して痛感させられた「死」というものについても、自分の思うところを述べさせてもらった。
 本書が家族の認知症で悩む方をはじめ、医療者や介護従事者など、認知症と日々奮闘する方々、そして今後直面するかもしれないすべての方々に何らかのヒントをもたらし、深刻な認知症問題の改善に微力ながら貢献できれば幸いである。
(本書「はじめに」より)

著者紹介

森田 豊 (もりた ゆたか)

1963年東京都台東区生まれ。医師、医療ジャーナリスト。
秋田大学医学部、東京大学大学院医学系研究科を修了、米国ハーバード大学専任講師等を歴任。
現役医師として医業に従事し、テレビ朝日系『ドクターX ~外科医・大門未知子∼ 』の
医療監修を行うなど、種々のメディアや講演等で幅広く活躍中。

目次

序章 それは振り込め詐欺から始まった

認知症を突きつけた振り込め詐欺事件
被害に遭ったことを理解できない母
メンツを潰された父の苦悩
「何でも話し合う家族」だったはずなのに


第1章 忘れる、怒る、無頓着になる。我が家を襲った認知症という嵐

「健康名人」の母が突然不調を訴え始める
食べても忘れる、飲んでも忘れる
知的でおしゃれな母がどんどんだらしなくなって
出かけたくない、外食もしたくない
医者に言うのは「いいこと」だけ
バナナ事件とボヤ騒ぎ
団欒の食卓がバトルの場に
「あなたが盗った!」姉を深く傷つけた母の振る舞い
「キーパーソン」をもっとサポートすべきだった
溺愛と遠慮に甘えた情けない息子


第2章 検査は絶対、「いたしません!」

「私は認知症じゃない!」検査を徹底的に拒む母
「病識がない」「命の危険がない」という病
「医者である前に息子」という意識が検査を遅らせた
母を検査に導いた言葉とは
当人に内緒で受けさせるべきではない


第3章 なぜ、しっかり者で社交的な母は認知症になったのか

活動的できれい好き、一家の羅針盤だった良妻賢母
「人生は100%努力!」という教育哲学
「好きなことを、とことんおやり」
息子の失敗と挫折……ピンチのたびに開かれた家族会議
同居の妻に太鼓判を押す母
念願だった息子の渡米が認知症の引き金に


第4章 母、「人」によってよみがえる

「ちいちいぱっぱ」なんか、やりたくない!
ショートステイをきっかけに、施設への入居を徹底討論
「帰りたい」と言っていた母が、なぜかイキイキ明るくなって
「人を褒める母」が帰ってきた
介護のプロに聞く(1)入居者に対して気をつけていることとは?
介護のプロに聞く(2)認知症を進ませないアクティビティーと取り組み
介護のプロに聞く(3)寂しがる入居者にどう寄り添うのか
介護のプロに聞く(4)現場から見える介護の課題
大事なのは対人接触と適度なストレス
施設選びで大事なこととは
それでも認知症は進む、いつかは僕のことも忘れていく


第5章 僕なりに考える、認知症の予防と対策

認知症の一歩手前=「認知機能障害」で食い止めよう
認知症には遺伝より生活習慣が影響する
セカンドオピニオンを積極的に求めてみよう
認知症検査を義務化する
その人らしくいられる「つながり」を見つける
趣味や好きなことを見つけよう
怒りのトリガーをなくす
「抱え込む」は百害あって一利なし
思考に代わって感性が活発になるという可能性
認知症になっても個性は残る


第6章 医師として考えること、息子として思うこと

認知症から見える日本の医療の問題点
「成績のいい人が医師になる」という現状
大病院がいいとは限らない
医師の手本は、銀座のママよりスナックのママ
死について考えてみる
もはやタブー視できない、安楽死という選択
「あと何年生きるのだろう」介護につきまとうお金と不安
認知症を「幸せなお別れ」にするために

エピローグ たとえ血のつながった母親じゃなくても

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