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2014年の終わりに、見おくる言葉

2014年の終わりに、見おくる言葉

リコノミクス  Likonomics

[中国]のジャンルから退場した用語。

李克強(りこくきょう)総理が打ち出した経済政策が、リコノミクスと呼ばれている。リコノミクスは、景気刺激策より、構造改革を通じて持続的な経済発展を目指すことに重点がおかれている。具体的には、無駄な公共投資の削減、不動産投機の抑制、環境保護強化等に関する政策が打ち出されている。全国人民代表大会閉幕日に行われる恒例の記者会見において、李克強総理は改革を推し進めるために、既得権益との対決も辞さない決意を強調したことが注目される。その一方で、金融機関への引締めによる景気減速への懸念や「影の銀行」(シャドーバンキング)を通じた地方政府の莫大な不良債権問題が危惧されている。

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『南方週末』事件  Southern Weekly incident

[中国]のジャンルから退場した用語。

広東省広州市に本社がある『南方週末』は、リベラルな報道で知名度の高い週刊新聞であるが、その2013年新春特別号の社説等の記事が、中国共産党広東省委員会の宣伝部の指示によって差し替えられたことが問題となった。宣伝部とは、イデオロギーや思想工作等を担当する部門で、各種メディアの報道内容や出版物、インターネット等の管理を統括する。当初、1月3日発行の同紙新年特別号では、憲政の樹立を中国の夢とする社説を掲載しようとしていたが、宣伝部の命によって「中華民族の偉大な復興」を夢とする内容へと書き換えがなされた。それに対し、1月6日、同紙の記者らは反発し抗議のストを行うことを決定したが、1月9日にストは中止、翌10日には新年第2号が発行され、事態は一応の収束をみた。この事件の背景には、憲法に基づく政治(憲政)の実現をめぐる論争があり、その後、憲政は社会主義崩壊につながるといったような保守的な言論が公式メディアに多数掲載されるようになった。

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イラク戦争  Iraq War

[中東]のジャンルから退場した用語。

アメリカとイギリス両軍は2003年3月、「イラクの自由作戦」と名づけたイラク戦争を開始した。戦争目的はフセイン体制の終焉、大量破壊兵器の捜索・発見、テロリストの拘束などとされた。フセイン体制はすぐに崩壊し、アメリカのブッシュ大統領(当時)は03年5月「主要な戦闘の終結」を宣言した。アメリカ政府によれば、戦争に参加、あるいは支持したのは日本を含む44カ国で、「有志連合(The Coalition of Willing)」と呼ばれた。

イラク側は04年6月に主権を回復、新しい政治体制を樹立した。しかし、反米勢力による攻撃や宗派・民族間対立による衝突・テロが拡大した。このためブッシュ政権は07年に米軍を増派し、イラクはようやく安定化の兆候をみせ始めた。アメリカは10年8月、イラク駐留米軍の戦闘任務を終結し、「イラクの自由作戦」を正式に終了し、11年12月までに、米軍はイラクから全面撤退した。

戦争による米兵の死者は約4500人、イラク人犠牲者は11万人以上と推定されている。またアメリカ議会調査局によると、米軍の戦費は8055億ドルにのぼった。

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シオニズム  Zionism

[中東]のジャンルから退場した用語。

19世紀後半以降、ヨーロッパのユダヤ人の間で始まったユダヤ人国家建国運動。エルサレムの別称「シオンの丘」への帰還という意味から生まれた言葉。1896年にテオドール・ヘルツルが『ユダヤ人国家』を出版し、翌年スイスで開催された第1回シオニスト会議で「パレスチナにユダヤ民族の郷土を創設する」とのバーゼル綱領が採択され、シオニズム運動が本格化した。イスラエルの現在の左派の源流である労働シオニズム、右派政党リクードの原型となった修正シオニズム、宗教的な価値観を優先させる宗教シオニズムなどの潮流に分かれる。中東和平プロセスの進展で、占領地の取扱いなどシオニズム本来の価値観が改めて問われ、イスラエル国内ではポスト・シオニズム的状況も生じている。

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反体制派ブロガー

[ロシア・NIS諸国]のジャンルから退場した用語。

2013年7月18日、キーロフ州の地区裁判所は、反体制派ブロガーとして知られ、米「タイム」誌による「世界で最も影響力のある100人」(12年)にも選ばれたA・ナワリニーに禁固5年の有罪判決を言い渡した。森林売却にともなう横領で国営林業会社に損害を与えたとし、50万ルーブルの罰金も科した。

今回の有罪判決は、汚職追及などでプーチン政権を厳しく追及する同氏への政治的圧力の側面が強く、反プーチン運動を展開する市民はもちろん、欧米諸国からも懸念の声が高まっている。プーチン政権はこうした抗議行動の広がりを受け、9月8日のモスクワ市長選への同氏の出馬を容認。当選した現職のプーチン大統領側近のソビャーニン(得票率51%)に対し、27%の票を集める健闘をみせた。今後ロシア市場の投資環境の悪化など、03年のユコス事件以上の社会経済的影響が懸念される。

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KEDO  The Korean Peninsula Energy Development Organization

[朝鮮半島]のジャンルから退場した用語。

朝鮮半島エネルギー開発機構。米朝合意枠組みに基づいて、1995年3月、北朝鮮の黒鉛減速原子炉および関連施設の軽水炉発電所への転換を支援する国際共同事業体として発足し、日米韓3国が原加盟国として理事会を構成。しかし、2002年10月、北朝鮮がウラン濃縮計画を認め、結局、06年5月、軽水炉プロジェクトの「終了」を決定した。

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ジンバブウェ連立政府

[アフリカ]のジャンルから退場した用語。

2009年2月に発足した、ジンバブウェ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)と民主変革運動(MDC)など旧野党の連立政権。ZANU-PFのロバート・ムガベが大統領、MDCのモーガン・ツワンギライが首相、政府閣僚は08年3月の下院選挙の結果(与党99議席、野党110議席)を反映して、与党ZANU-PFが15、旧野党はMDCの13、MDC-ムタンバラ派の3の計16人で発足した。

これは、08年3〜6月に実施の大統領選挙の際、最強の野党MDCのツワンギライ議長(第1回投票で1位)が激しい弾圧を受けて出馬を取りやめたにもかかわらず、決選投票を強行してムガベ5選の体裁を取り繕ったことなどへの内外の非難が強まった結果、08年9月ムベキ南アフリカ大統領の仲介で、連立政府樹立協定(包括的政治合意)に調印したことによる。連立政府は発足したが、「崩壊国家」状態に陥った同国を立て直すのは容易でない。

13年3月実施の国民投票で、懸案の憲法草案が95.5%の賛成を得て承認され、7月の大統領選挙でムガベがツワンギライ首相を破って6選した。

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3月23日運動  March 23 Movement / Mouvement du 23-Mars

[アフリカ]のジャンルから退場した用語。

コンゴ民主共和国の反政府武装組織。人民防衛国民会議(CNDP)から派生した集団で、CNDPが2009年に政府と締結した和平協定や政府軍への不満分子が、12年4月に結成した。組織名は前記の和平協定締結日(3月23日)に由来する。構成員は主としてツチ族で、12年6月に北キブ州で反政府武力闘争を本格化させ、11月には東部の主要都市ゴマを制圧して首都キンシャサを脅かすほどの勢いをみせたが、コンゴ国軍はフツ族民兵「マイマイ」(マイは「水」の意。組織名は「被弾しても死なない」との水信仰に由来)と協力してゴマを奪回した。その後M23に内部分裂が起き、13年3月にはその創設者ボスコ・ンタガンダが逮捕されるなどして勢力は弱化している。

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黒海の領海紛争

[東欧]のジャンルから退場した用語。

ウクライナとルーマニアの間では、冷戦時代から黒海の海洋境界画定をめぐり対立が続いていた。ルーマニアとソ連は1960年代から交渉を続けたが、80年代の海底資源発見もあり、合意をみないままソ連解体とウクライナの独立に至り、ウクライナとルーマニアが境界問題の交渉を続けた。97年に友好協力条約が締結され、ルーマニアがソ連時代の国境を承認し、両国間で帰属が争われていた「蛇島」についてもウクライナの領有が確定。しかし、この島を国連海洋法条約上の「島」とみなし、周辺の排他的経済水域や大陸棚の領有を主張したウクライナと、それを「岩」とみなし3カイリの領海を形成するにすぎないと主張するルーマニアの対立はその後も続き、この問題は国際司法裁判所(ICJ)に提訴された。2009年、ICJが判決を出し、この島を事実上の「岩」として扱い、両国間で領有が争われた海域のうち約8割がルーマニアのものと認められた。

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ドイツ総選挙

[EU圏]のジャンルから退場した用語。

2013年9月に行われたドイツ連邦議会選挙で、中道右派の与党のキリスト教民主・社会同盟が圧勝し第1党の座を維持したが、連立を組む自由民主党は議席獲得に必要な得票率5%に届かず議席を失った。中道右派の議席が過半数を割ったため、メルケル首相は3期目の政権を目指して、中道左派の野党第1党の社会民主党か第2党の緑の党との連立を模索することになった。国民の要望が多い、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党の2度目の大連立政権が有力視されている。ドイツのユーロからの脱退を掲げた反ユーロの新党「ドイツのための選択肢」は、議席は獲得できなかったが4.7の得票率と善戦し注目された。社会民主党や緑の党は、財政再建と構造改革を重視してきたメルケル政権を批判してきただけに、緊縮財政に苦しんでいる南欧諸国からは、新政権のユーロ政策がこれまでに比べ軟化するのではないかという期待の声が聞かれる。

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バローゾ欧州委員会委員長

[EU圏]のジャンルから退場した用語。

2004年11月にプロディ欧州委員会委員長の後任として、ポルトガルのバローゾ元首相が就任。09年に任期5年を迎え、6月のEU首脳会議で全会一致で再任が採択され、9月の欧州議会で承認された。欧州委員長の再任は、初代のハルシュタイン、8代のドロール以来3人目。アメリカに人脈をもち、ポルトガルの経済政策成功でEU内の評価も高い。バローゾ委員長は2期目の重点課題として、金融危機への対応や雇用対策、地球温暖化対策を挙げた。

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ピークオイル  peak oil

[世界経済]のジャンルから退場した用語。

2004年ごろから08年にかけて原油価格は大きく高騰し、バーレル当たり40ドル台から一時は147ドルの史上最高の高値を付けたが、その後反転し、09年2月には底値の40ドル程度に下がったものの、その後騰勢に転じ、11年5月には100ドル台へと再び上がり、高止まりした。この間の原油価格の急騰は、イラク戦争をきっかけに、投機資金が原油、穀物の先物市場に流入したことにあるが、実はアジア諸国、新興国の工業化とともにエネルギー需要が世界経済で増加傾向という事情がある。そのため、世界の石油生産は突然枯渇をみるわけではないが、遠くない将来にピークに達し、その後、生産量が低下するにつれて、原油価格は再び高騰し、工業生産コストを引き上げて、世界経済も縮小に向かうという議論が提起されてきた。ピークオイルは20年前後に訪れるとする見方もある。日本は依然1次エネルギー供給を石油に大きく依存しているが、3.11以降、一層再生エネルギーの開発が課題となるだろう。

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突発性難聴

[医学]のジャンルから退場した用語。

突然、原因がわからないまま、片方の耳が聞こえなくなる病気。左耳が聞こえなくなった歌手の浜崎あゆみは、この病気と診断された。発症前に疲労感を感じている人が少なくない。聞こえなくなると同時に、耳鳴りやめまい、吐き気を感じることもある。推定される原因に、ウイルスの感染説や、耳の内部にある「内耳」血管の循環障害説があるが、はっきりしない。大音量を聞いて起こる難聴は騒音性難聴と呼ばれる。

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正常性バイアス  optimistic bias

[メンタルヘルス]のジャンルから退場した用語。

異常事態が起こっても、それを正常の範囲内のこととしてとらえ、心を平静に保とうとする働きのこと。日々の生活の中での変化に翻弄され疲弊しないように備わった自己防御能力であるといえるが、リスク判断に影響を与えるものであり、度が過ぎると、震災など本当に危険な場合にも避難などの対応の遅れにつながりかねないことが指摘されている。

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スクールカースト

[子ども問題]のジャンルから退場した用語。

クラスメートの間に存在する上下関係、序列・ランク付けのこと。テレビドラマ「35歳の高校生」(日本テレビ)や『教室内カースト』(鈴木翔、光文社新書)で話題になった。同書によると、小学校時には「個人間」の地位の差だったものが、中学・高校時になると「グループ間」による地位の差に変化するという。その関わりは空気を読んで行われ、クラスに笑いが起きるもので、上位のグループにはさまざまな特権が与えられるそうだ。子どもたちにとって「笑いを取れる人」であることは学校生活を送るうえでの最重要課題だから、下ネタや自分を下に見せるような言動で、自らいじめの延長線上にある“いじられキャラ”を演じることは多い。やられている側もいじめと認識していなかったり、笑っているため、教師も遊びと思ってしまう。だが一方で、いじめを受けたり、いじめをしたことがある小学生は共に90%にもなる(2013年8月5日、国立教育政策研究所)。こうした現実に「道徳教育の充実」やいじめっ子への指導・懲戒、警察との連携、自治体や学校などにいじめ防止のための組織を常設するなどを盛り込んだ、いじめ防止対策推進法(13年6月20日成立)が有効かは大いに疑問だ。日常レベルで教師が一人ひとりの子どもと真に向き合える体制の確立こそ急務ではないか。

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皇太子ご夫妻ご成婚20年

[皇室]のジャンルから退場した用語。

2013年6月9日、皇太子ご夫妻はご成婚20年を迎え宮内庁を通じ感想を発表された。ご成婚時を振り返り「多くの方に祝福して頂き無事に執り行うことが出来ましたことを深い感謝の内に懐かしく思い出します」とし、また「嬉しい出来事もありましたが自然災害や少子高齢化など多くの変化を経験」されたとして「東日本大震災での被災地へ永く心を寄せていきたい」と決意された。

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会田誠展

[現代アート]のジャンルから退場した用語。

2012年から13年にかけて、東京・六本木の森美術館で会田(あいだ)誠展が開かれた。副題に「天才でごめんなさい」とあるように少々、挑発的なところのある展覧会で、例えば“戦争画Returns”のシリーズの〈紐育空爆之図〉は、平成の世に壮麗なるキッチュとして臆面もなくリターンしてきた戦争画といえるし、日本に潜伏しているビン・ラディンに自らが扮したビデオ作品もしたたかなユーモアの感覚をはらんでいる。児童ポルノ的な作品に市民団体が抗議するという一幕もあったが、美術館側は作品は撤去せず、ホームページの一部作品画像を削除するにとどめた。あえてタブーとの境目を行く会田の毒のある批評性とそれを支える描写力は、日本の穏和な文化風土における大いなる“異才”として賞賛されてよい。

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オクトーバーフェスト

[食生活]のジャンルから退場した用語。

ドイツ・ミュンヘンで毎年秋に16日間にわたって開催される収穫祭。1810年以来、200年の歴史があり、600万人以上を動員する世界最大のビールイベント。日本では2003年に第1回のオクトーバーフェストが横浜の赤レンガ倉庫で開催された。横浜、東京・日比谷を皮切りに地方都市にも波及し、13年には過去最多の全国11カ所で開催されるようになり、すっかりイベントとして定着した。屋外会場の場合、テントの中に1000〜2000の客席が設けられ、ドイツのプレミアム生ビールとソーセージなどのドイツ料理が楽しめる。ドイツ語で乾杯という意の「プロースト」という掛け声が響き渡りにぎやか。ドイツの民族音楽をはじめとした生演奏が来場者を盛り上げる。気軽に踊ったり、歌ったりできる開放感に満ちあふれ、非日常的な雰囲気に酔えるのが人気の理由と考えられる。

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プロボノ  pro bono

[社会福祉]のジャンルから退場した用語。

各分野の専門家や専門職組織が、職業上もっている専門的知識や経験を生かして行うボランティア活動、またはそれに参加する専門家や専門職組織をいう。「公共善のために」を意味するラテン語の「pro bono publico」に由来し、近年、新しい社会貢献活動として注目されている。東日本大震災後には、医療や看護、ソーシャルワーク、介護、心理、教育、情報、輸送、建築等々の専門家ボランティアが支援活動に携わった。情報通信技術の分野から「情報支援プロボノ・プラットホーム(iSPP)」が設立され、専門家同士の相互連携や被災地のニーズとのコーディネート等を行っている。

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いやミス

[本と文芸]のジャンルから退場した用語。

読んだ後、いやな気分になるミステリー。読後感の悪いミステリー。心理サスペンスの傾向の一つ。人間の本質の中にある、暗い面、邪悪な面を描いた作品が多い。2012年に『ユリゴコロ』で大藪春彦賞を受賞した沼田まほかるがブームとなると同時に使われるようになった。書店のPOPなどでも多用される言葉である。ほかには湊かなえや真梨幸子らの作品が挙げられる。悪のかたまりのような怪物ではなく、読者と等身大の人物の心に潜む邪悪な部分に焦点を当てる。謎の解明によってカタルシスを与えられることは少ない。事件の犯人だけでなく、謎を解く探偵役の人物も、100%の善人ではないことが多いのが特徴。

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チュニック  tunic

[ファッション]のジャンルから退場した用語。

フランス語では「tunique」。筒形のシルエットで、長さが腰から膝程度の丈の上着。語源は中世の東ローマ帝国で着られていた「トゥニカ」と呼ばれた衣服。現在ではAラインやエッグシェイプのものなどがある。ボトムスにパンツやスカートを組み合わせて着用する。

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