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ニュースをおさらい〜2014

ニュースをおさらい〜2014

STAP細胞問題

2014年1月末、マウスの体細胞に外から刺激を与える方法で、様々な細胞や臓器に変化する可能性をもつ「万能細胞」(STAP細胞)を作り出すことに成功したと理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子ユニットリーダーらのグループが発表した。論文は英科学誌「ネイチャー」に掲載された。万能細胞にはこれまで、ES細胞(胚性幹細胞)とiPS細胞(人工多能性幹細胞)があり、小保方らが作成したSTAP細胞は、簡便な方法で作成できる第3の万能細胞として新聞・テレビなどで大きく報道された。若手の女性研究者であったため、「リケジョ」という言葉とともに関心が集まり、割烹着を着て研究する姿の映像や写真が盛んに伝えられた。しかし、2月初めにネイチャー論文の画像の不自然さなどがネットで指摘され、その後の理研の調査で、論文のデータ画像に重大な捏造や改ざんの研究不正行為があると認定された。(この続きは本誌で。解説執筆は、瀬川至朗)

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『アンネの日記』損壊事件

2014年2月、東京都内などの図書館や書店で、『アンネの日記』や関連書籍が相次いで破られる事件が発生した。被害は杉並区など主に東京都23区西部の5区および隣接する市の公共図書館に集中し、横浜市内の図書館や大手書店でも被害があった。当初、反ユダヤ主義者による犯行が疑われ、被害に遭った図書館への同書の寄贈も相次いだ。3月、警視庁は都内在住の無職36歳の男を器物損壊容疑で逮捕。専門家による精神鑑定の結果、東京地検は被疑者が犯行当時、心神耗弱状態にあったとして不起訴とした。(この続きは本誌で。解説執筆は、永江朗)

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教育委員会制度

「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され、2015年4月から、教育委員会制度が大きく変更されることになる。教育委員会は自治体ごとに置かれるが、今回の改正は、知事・市長等、首長の権限を強める方向での改正であることが基本的な論点になっている。11年に大津市での、いじめによる児童の自殺事件が教育委員会の対応が不十分であり、非常勤の委員長・委員という教育委員会制度そのものの「欠陥」だという議論につながった。12年の大阪市立高校における体罰が原因の生徒の自殺事件も教育委員会批判を強めた。複数の知事による教育委員会の「欠陥」の指摘も制度変更への動きを加速させ、13年4月に教育再生実行会議が首長の関与強化を提言し、12月には、中央教育審議会が法改正に向けての答申を行った。その後、文科省案、自民党案、公明党を含めた政府与党案と、主として首長の関与をめぐっての紆余曲折を経て、14年6月に地教行法の改正に至った。(この続きは本誌で。解説執筆は、鈴木眞理)

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美味しんぼ騒動

発端は2014年4月28日発売の「ビッグコミックスピリッツ」に掲載された原作/雁屋哲・作画/花咲アキラ「美味しんぼ第604話福島の真実22」。そこでは、取材で福島を訪れた主人公たちが後日、突如鼻血を出すなど体調の異変を訴える場面が描かれた。その原因に原発の放射線を連想させるとWeb上で話題になると、雑誌編集部は綿密な取材に基づく作者の表現を尊重した旨を公式HPで釈明。5月4日には原作者がブログで、反論は次回以降を待ってからとコメントした。これに対し、同月7日に放射線被ばくの風評被害を助長すると福島県双葉町が抗議声明を発表、9日には石原伸晃環境相が作品への不快感を露わにした。5月12日発売号で、双葉町前町長の所見や除染作業の危険性に言及する場面が出ると、さらに議論は紛糾。以後、福島県知事や閣僚らが相次いで作品を批判、震災がれき処理を進めていた大阪府や岩手県も抗議を寄せた。一方、取材を受けた地元住民からはマンガの内容が事実に基づくことや原発問題を風化させない意義を持つといった反論が出るなど、賛否は全国的に発展。5月19日発売号にはシリーズ最終話に加え、一連の騒動への対応として有識者の批判と意見が併載され、問題提起のためにあえて作品を掲載した旨などが編集部から述べられた。(この続きは本誌で。解説執筆は、吉村和真)

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広島土砂災害

特別警報が2013年に制度化され、年初からの運用としては最初の年になった2014年、まるでそれを待っていたかのように気象災害が頻発した。中でも犠牲者数で最大となったのが広島で発生した大規模な土砂災害であった。未明に広島市内各所で発生した土石流は、山際まで建て込んでいた家屋を飲み込み、救助活動中に二次被害に遭った消防士も含めて、犠牲者は74人に上った。日本が位置する温帯地域は、他の地域に比しての気候の穏やかさも見えない長所の一つであったが、どうも失われた後で、それが長所だったことを思い知ることになるのかもしれない。(この続きは本誌で。解説執筆は、才野茂)

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集団的自衛権

2014年7月1日、集団的自衛権行使容認の閣議決定がなされた。安倍政権は、当初、正面からの9条改正を目指していたが、様々な情勢分析から容易でないと判断して以降、9条を実質的に無効化する、いわゆる解釈改憲の路線に方針を変更し、今回の閣議決定を目指した。解釈というより、ほとんど憲法を無視するに等しいその内容に、各界から非難の声が沸き起こったが、公明党の支持も取り付けて、政府は数の力で押し切った。(この続きは本誌で。解説執筆は、土屋和恵)

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ウクライナ危機

ウクライナの親ロシア派武装集団は、2014年4月以降ロシアへの編入などを求め、東部ドネツク、ルガンスク州で地方政府庁舎や警察署を占拠。こうした動きに対し4月半ば、ウクライナ暫定政府が強制排除に乗り出し、混乱が拡大。その調停を試みた「ジュネーブ声明」も空文化する中、5月12日、親ロシア派が住民投票を強行し東部2州がウクライナからの独立を宣言。一方、ウクライナ大統領選で圧勝したぺトロ・ポロシェンコは、大統領就任式で「和平計画」を発表し実務協議を開始したが、親ロシア派勢力は、東部の「主権承認」やウクライナ軍の即時撤退を求める立場を堅持。そのため戦線は拡大した。

7月17日、ウクライナのドネツク上空でマレーシアの旅客機が撃墜され、事態は一気に緊迫化した。(この続きは本誌で。解説執筆は、左治木吾郎)

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シリア内戦

勃発から3年半がたったシリア内戦は、ますます出口が見えなくなってきている。2014年1月から2月にかけてスイスで政治的解決を目指す国際会議「ジュネーブII」が開催されたが、進展はまったくなかった。一方、北部から北東部のユーフラテス川流域を支配している反体制外部勢力であるジハード主義過激グループ「イラクと大シリアのイスラム国(ISIS)」が14年初めごろからイラクにも支配を広げ、14年6月末には「イスラム国(IS)」の樹立を宣言した。彼らはイラクで奪った武器や資金をシリアに持ち込んで勢力を拡大しているとみられる。

一方、アサド大統領は6月初めに行われた大統領選挙で再選された。選挙は体制側が支配する地域だけで厳しい監視下で行われており、反体制側は「茶番」と批判している。シリアで11年3月に始まった反体制運動は内戦に発展している。(この続きは本誌で。解説執筆は、立山良司)

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袴田事件

2014年3月、死刑囚の袴田巌(はかまだ・いわお)さんが釈放された。袴田さんは、約半世紀前に起きた殺人事件の犯人として逮捕されてからずっと身柄を拘束されていた。しかも、1980年に最高裁判所で死刑が確定してから33年以上「死刑囚」であった。

1966年6月、静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人放火事件が起こった。数日後に、プロボクサーであった袴田さんの自室から血痕が付いた着衣が発見された、ということで、袴田さんが逮捕された。袴田さんは最初は犯行を否認していたが、勾留期限の間際に犯行を「自白」した。(この続きは本誌で。解説執筆は、國部徹)

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南シナ海領有権問題

2014年5月、南シナ海の西沙(パラセル)諸島近辺で、ベトナム漁船と中国海洋監視船との数次の衝突が発生し、ベトナムでは大きな反中デモが起こり、死者まで出す騒ぎとなった。この衝突事件は、中国の石油掘削現場近くで起こったが、同じころ、フィリピンも中国の密漁船を拿捕(だほ)するなど、この海域での緊張は著しい。中国最南端の海南島から、マラッカ海峡東に至る広大な南シナ海には、多くの小島やサンゴ岩礁群の集合がみられる。わけても、海南島南にある西沙群島、南部の南沙(スプラトリー)群島で、各国の利害が対立している。(この続きは本誌で。解説執筆は、西川潤)

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ビットコイン事件

2014年2月、インターネット上の仮想通貨であるビットコインの両替・送金業務を行っていた大手取引所であるマウントゴックス社が経営破綻した。原因は、顧客から預かった口座や自社で保有していた大量のビットコインが、不正アクセスによって消失したためとされるが、ずさんな資金管理も指摘されている。この事件をきっかけに、ビットコインの存在が一般に広く知られるようになった。

仮想通貨には類似のものがいくつも存在するが、ビットコインはその中で代表的なものだ。09年に「サトシ・ナカモト」と名乗る人物が原理を発表し、その後、利用が広がっていった。政府や中央銀行といった通貨を発行する主体は存在しない。その代わりに、ビットコインの取引記録のデータは公開され、多数のコンピュータで形成するネットワークが全体としてそれを維持している。(この続きは本誌で。解説執筆は、西村陽造)

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厚木基地訴訟

アメリカ海軍と海上自衛隊が使う神奈川県・厚木基地の騒音被害をめぐる裁判で、横浜地裁は2014年5月21日、自衛隊機について午後10時から翌午前6時までの飛行差し止めを命じる一方、米軍機の差し止め請求は退けた。判決では住民の「睡眠や読書が妨げられ、子供の発育への不安など精神的苦痛もあり、軽い被害とは到底いえない」と認定。基地騒音訴訟の判決としては過去最高額の約70億円の支払いを国に命じた。だが今回差し止めが認められた時間帯は、既に自衛隊が飛行を自主規制しており、騒音の大半を占める米軍機の飛行差し止めが行われなかったことで、根本的な問題解決には至らなかった。原告、国ともに敗訴部分を不服として控訴を行った。(この続きは本誌で。解説執筆は、白井和夫)

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佐村河内守問題

2011年秋に発売されると、クラシック音楽としては異例の大ヒットとなった佐村河内守(さむらごうち・まもる)作曲の交響曲「HIROSHIMA」。佐村河内は広島出身の被爆二世で全聾だと自称、NHKをはじめとするマスコミは「現代のベートーべン」だと持ち上げ、コンサートも連日満員、聴衆は涙を流し感動していた。ところが14年2月6日発売の「週刊文春」で、現代音楽の作曲家・新垣隆が、この曲は佐村河内に頼まれて自分が作曲した、広島とは何の関係もない曲だと証言した。また新垣は記者会見で佐村河内が全聾というのは疑わしいと発言、後に佐村河内自身も、障害はあるが全聾ではないと認めた。かくして「現代のベートーべン」は一夜にして「偽ベートーベン」となった。(この続きは本誌で。解説執筆は、中川右介)

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大川小訴訟

東日本大震災の大津波で、教師と共にいながら全校生徒108人中70人が死亡し、4名が行方不明という大惨事となった宮城県石巻市立大川小学校事件。同事件で亡くなった子どもの遺族54家族中19家族が、2014年3月10日、石巻市と宮城県に対し教職員の過失を問い、1人当たり1億円、計23億円の損害賠償を求めて仙台地方裁判所に提訴した。津波襲来まで50分もの時間があり、すぐ裏には子どもでも40秒で登れる山があった。さらにはスクールバスも待機していたにもかかわらず、「なぜ子どもたちが命を落とさねばならなかったのか」を裁判の中で明らかにするためだ。(この続きは本誌で。解説執筆は、木附千晶)

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都議会セクハラヤジ問題

東京都の塩村文夏都議が2014年6月18日の都議会で晩婚化や不妊治療に関する質問をしていたところ、「自分が早く結婚すればいい」「産めないのか」などのヤジが飛んだ。ヤジは自民党の都議らの席側から聞こえたとされ、後日、少なくとも4人の男性がヤジを飛ばしていたことがわかった(「朝日新聞」14年7月29日付)。「セクハラだ」との抗議が相次ぎ、欧米のメディアはヤジの主を「性差別者」と断罪したが、都議会はもみ消そうという雰囲気がありありだった。事件2日後、塩村都議が都議会議長に発言者の処分を求める要求書を提出したが、「発言者が特定されていない」として不受理。6月25日には、ヤジを飛ばしたほかの都議の調査などには触れない自民、公明など5会派共同の「信頼回復と再発防止に努める」という中途半端な決議案が賛成多数で可決し、事実上の幕引きとなった。(この続きは本誌で。解説執筆は、木附千晶)

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普天間基地移設問題

沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、沖縄防衛局が2014年8月、辺野古沖の埋立て予定地で海底ボーリング調査を始めた。普天間の移設計画が浮上した1996年以降、初めての海底掘削となる。10年前には抗議市民の激しい抗議で調査は中止に追い込まれたが、国は今回、警備を強化。ブイやフロートで埋立て予定地を区切り、海上保安庁は数十隻の巡視船やゴムボートで警戒した。抗議する船やカヌーを抑え込み、「過剰警備」との批判が上がった。辺野古にある米軍キャンプ・シュワブのゲート前では連日抗議が続けられている。月に1度のペースで、ゲート前や辺野古の浜、県庁前ではそれぞれ数千人規模の抗議行動があった。(この続きは本誌で。解説執筆は、矢島大輔)

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NHK籾井体制

21代目となる籾井勝人NHK会長が、多くの問題発言でNHKへの不信感を拡大させた。2014年1月25日の就任会見では「(慰安婦は)戦争地域にはどこでもあった。ドイツやフランスにはなかったと言えるのか」「(安倍首相の靖国神社参拝について)総理が信念で行かれたということで、それはそれでよろしい」「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」などの発言を連発。政治的中立性を定めた放送法に違反しているとして、国会で追及を受ける事態にまで発展した。この発言は国内外で大きく報道され、イギリスの公共放送BBCは、政治的に中立なはずのNHKに、政権に近い発言をするトップが誕生したことを「衝撃的」と報道。日本の視聴者からの抗議も殺到し、受信料不払い運動も再燃している。(この続きは本誌で。解説執筆は、宮野ナナ)

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