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2012年に消えた現代用語

2012年に消えた現代用語

脱ゆとり教育

2013年版で、[子ども問題]のジャンルから消えた用語。

2008年に改訂された新学習指導要領もしくはそれに基づく教育のこと。新学習指導要領では、小中学校の主要科目の授業時数が約10%増えた。週休5日制や授業時間・内容の削減などを盛り込んだ「ゆとり教育」の完全実施は02年。直後からPISA(OECDの学習到達度調査)の結果低迷などを受け、学力低下の元凶とされた。これを受けて、小泉政権および安倍政権時代に「脱ゆとり」の流れが加速し、全国一斉学力テストも復活した。しかし、「ゆとり教育」が学力低下の原因と考えるのは早計だ。現に、09年実施のPISAでは日本の順位は上昇した。そもそも、受験の在り方は変えずに授業時間や授業内容をただ削った「ゆとり教育」の本質は、「エリートには手厚く、それ以外には最低限の教育保障を」という教育費削減と平等教育の解体を目指したもの。しかも教師の管理強化、事務仕事の増加とセットにして、子どもと関わる時間を奪いながら行ってきたのだから、全体の学力低下は当然の帰結だ。さらに言えば、特定の知識を無理矢理詰め込む「脱ゆとり教育」の効果もはなはだ疑問だ。親や教師との良き関係の中で生き、学ぶことの楽しさを体得することなしには、批判的で創造的な思考力(学力)は身につかないはずだ。

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教育特区

[教育・学校]のジャンルから消えた用語。

構造改革特別区域法(2002年12月)の一環として教育特区が認められた。学習指導要領によらない教育課程の編成(例えば小学校からの英語の授業、小中一貫教育、教科「日本語」)、ITの活用による不登校児童・生徒の学習機会拡大、3歳未満児の幼稚園入園、高等学校等における学校外学習の認定可能単位数拡大、市町村費負担教職員の任用などを推進する例が認定された。このうち、教育課程の改善に資する研究のために必要があったり、地域の特色を生かした教育や不登校児童・生徒を対象とした教育については、学習指導要領によらず教育課程を編成できることが、教育特区制度を使わなくても、より柔軟に認められるようになっている(教育課程特例校制度)。

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都市再生機構

[都市問題]のジャンルから消えた用語。

1955年に発足した日本住宅公団という特殊法人が母体。良質で安価な住宅を大量に供給する政策が求められた時代にはその役割をしっかり果たした。今日、民間企業に委ねることが妥当な事業が多いと指摘されることが多い。2010年4月には政府の行政刷新会議のワーキンググループ(WG)は、都市再生機構の仕分けを行った。約77万戸のストックを有する賃貸住宅事業について、高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体等に移行、市場家賃部分は段階的に民間に移行する方向で整理するとされた。

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守秘義務

[裁判と社会]のジャンルから消えた用語。

裁判員法108条で、裁判員は裁判の感想は話してもよいが評議内容について話せないという守秘義務が規定されている。違反すると6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。しかし、市民には、どこまで話せるのかがわかりにくい。2011年6月に日弁連は、守秘義務規定は表現の自由を過度に制約し、裁判員の経験の共有化を妨げるおそれがあり、裁判員制度の運用における調査研究の必要性からも、「裁判員法における守秘義務規定の改正に関する立法提言」を法務省に提出している。

裁判員が評議で述べた意見が明らかにされて批判されることを恐れて、率直な意見を述べなくなることを防ぐために、守秘義務はある。また、守秘義務は裁判員のみならず、裁判官にも課せられているので正当性があると考えられている。しかし、裁判官は義務で裁判官を務めているわけではないが、裁判員は国民としての義務で務めている。このため、裁判員を裁判官と同様に扱うことに対して異論がある。また、裁判員に守秘義務を課すのであれば、裁判員の辞退事由に「私は、口が軽いから裁判員を辞退する」という要項も付け加えるべきという意見もある。いずれにしても、守秘義務は制度見直しの論点の一つである。

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医療費適正化計画

[社会保障]のジャンルから消えた用語。

一般的には医療費を抑制するための計画をいうが、2006年の医療制度改革に基づく都道府県単位の計画を指す場合が多い。その計画では、08年度から15年度までに、生活習慣病患者・予備軍を25%減少させ、平均在院日数について全国平均値(36日)と長野県(27日)の差を半分に縮小することを目標としている。生活習慣病対策としてメタボリック・シンドロームに着目した特定健診・保健指導の強化を図るとともに、在院日数縮小のために療養病床の再編が挙げられた。

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大介護時代

[高齢社会・介護]のジャンルから消えた用語。

本格的な介護の時代はこれから始まる。何よりも、これまで介護に当たっていた子世代の実数が激減する。1950年、いま60代に入った世代の合計特殊出生率は3.65、わずか10年後の60年は2.00。そして2.00を大幅に切る時代(2010年は1.39)となった。介護保険はもともと家族の介護負担の「軽減」を目指してある程度成功してきた。それは一定数の家族の介護力に支えられてきたからで、配偶者は老老化、子世代は半減に近い大台少子化世代が介護世代となる。この大介護時代に備え、介護従事者の確保、地域のケアシステムの強化など新たな認識によるシステム構築が必要だ。

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RC造  Reinforced Concrete

[住まい選び]のジャンルから消えた用語。

鉄筋を芯材とし、その周りにコンクリートを固めて造る構造。マンション造りの基本的な構造である。これとは別に、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、断面がH型になった頑丈な鉄骨、いわゆるH鋼によって鉄筋コンクリート造を補強した構造。柱や梁に鉄骨による粘りが加わるため、柱と梁の本数を減らすことができる。

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ツーバイフォー住宅

[住まい選び]のジャンルから消えた用語。

2インチ×4インチ(5cm×10cm)の断面をもつツーバイフォー材(主にパイン材=松)を使って壁や床用のパネルを作成。このパネルで箱を組み上げるように造る住宅のこと。このように造られた家は壁と床(天井)全体で建物を支えるため、壁式構造となる。正確には、壁式構造のうちツーバイフォー材を使うものがツーバイフォー住宅だ。→壁式構造

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浴育

[育児]のジャンルから消えた用語。

親子のコミュニケーションの場としてお風呂を活用する「浴育」が広まっている。お湯のリラックス効果があるうえ、人と人の距離が狭い浴室は親子の会話が弾み、子どもたちも素直に思っていることを話してくれるという。体を清潔にし、体を温めて心身を健康にするという目的のほかに、親子の絆を深める場として活用したい。

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タイガーマスク運動

[社会福祉]のジャンルから消えた用語。

漫画タイガーマスクの主人公「伊達直人」と名乗り、児童養護施設や児童相談所にランドセルや文房具などを寄付する行為。2010年末から11年に入って急速に全国各地に広まっていった。運動の広まりを受けて、11年3月にNPO法人ファザーリング・ジャパンがソーシャル・インクルージョンの事業として「タイガーマスク基金」を設立。児童養護施設で生活する子どもや退所後の子どもの自立のための経済的支援を行っている。児童養護施設は、親元で暮らせない子どものための福祉施設の一つで、虐待の増加を受け、全国約600カ所の施設で約3万人の子どもたちが暮らす。

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派遣切り

[貧困と労働]のジャンルから消えた用語。

派遣労働者の契約中途解除や更新拒絶などのこと。2008年9月、リーマンブラザーズ証券の破綻をきっかけに広がった世界的な不況の影響を受け、日本では自動車工場などの生産ラインに派遣されて働く派遣労働者の契約中途解除、契約打切りが相次いだ。製造業で働く派遣労働者の多くは、決して安くない家賃を支払って工場のそばに派遣会社が用意した寮(多くがいわゆる「借り上げ社宅」)に入居することが、就労の条件になっている。派遣切りによって、解雇をされると同時に退寮を迫られたため、雇用と住まいを同時に奪われるという事態が日本各地で発生した。雇用調整の波は、派遣労働者のみにとどまらず、期間工や正社員に及び、育児休業中の労働者を職場復帰させず、そのまま解雇に追い込む「育休切り」なども問題になった。この派遣切りに対応するため、08年12月31日から09年1月5日までの間、東京都千代田区の厚生労働省前にある日比谷公園で、労働組合やNPOが年越し派遣村を開設した。「村長」はNPO自立生活サポートセンター・もやい、反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長(当時)。ハローワークや福祉事務局が閉まっている期間中、派遣切りに遭って真冬に路上生活を余儀なくされた派遣労働者たちを受け入れて、相談窓口を設置し、緊急食事対策・住居対策を実施した。大村秀章厚労省副大臣(当時)は、派遣村実行委員会の要請を受け、1月2日に厚労省の講堂を開放。派遣村の「村民」は500人に達した。09年の年末から10年の年始にかけては、政府が緊急雇用対策として失業者の支援対策を実施した。東京都では「公設派遣村」(「失業者など生活困窮者の年末年始を支援する東京都の生活相談、宿泊提供の事業」)を国立オリンピック記念青少年総合センターで開設。12月29日から1月4日まで失業者に住居と食事を提供し、ハローワークの相談窓口を開設した。労働者派遣法の改正が店ざらしになっており、11年に入っても登録型派遣の原則禁止が実現していない。そのため、11年3月11日に起きた東日本大震災後、被災地以外の製造業の工場などで、部品調達ができないことを理由に、派遣労働者が休業・雇い止めを命じられる「震災派遣切り」が相次いだ。このことが、個人加盟労組の全国組織である全国ユニオンによる「震災ユニオン」結成のきっかけとなった。形を変えて繰り返される派遣切りに終止符を打つためにも、1日も早い労働者派遣法改正が望まれる。

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ぽん酢ジュレ

[食生活]のジャンルから消えた用語。

ジュレとはゼリー状にしたもののことで、ぽん酢ジュレはぽん酢をゼリー状に固めた調味料。2011年2月にハウス食品が「のっけてジュレぽん酢」を、ヤマサ醤油が「昆布ぽん酢ジュレ」を発売。8月には、ぽん酢最大手ミツカンの「ぽんジュレ香りゆず」が加わり、ぽん酢市場は活性化した。液体のぽん酢とは異なり、豆腐、サラダ、エビフライ、とんかつなどにのせられるのが魅力。ぷるぷるとした食感が楽しめ、料理をきれいにデコレーションできることから、内食志向が強く、頻繁にホームパーティーを開く主婦層に人気がある。「食べるラー油」の爆発的なヒットに続き、新しいタイプの調味料が定番化するか注目される。

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食品中の放射性物質の暫定基準

[消費者問題]のジャンルから消えた用語。

食品衛生法に放射能汚染食品の規制値は定められていない。2011年3月11日、福島第一原発事故による原子力緊急事態宣言が発出されたことから、厚生労働省は3月17日、原子力安全委員会により示された「原子力施設等の防災対策に係る指針における飲食物摂取制限に関する指標値(Bq/Kg)」を暫定規制とし、これを上回る食品については、規制することを決めた。3月29日、これについて諮問を受けていた食品安全委員会は、厚労省のこの措置を妥当とし、「当分の間、現行の暫定規制値を維持することが適当 」であるとした。そして、今後、継続して食品健康影響評価を行うことや発がん性のリスクについての詳細な検討などの課題が残っていることを指摘し、この所見は「緊急取りまとめ」であるとした。

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放射性セシウム汚染牛

[消費者問題]のジャンルから消えた用語。

福島原発事故後、(2011年)7月になり、放射性セシウムに汚染された稲わらを飼料にした牛の肉から規制値を超える放射性セシウムが検出された。汚染が疑われると、福島県(7月19日から)、宮城県(7月28日から)、岩手県(8月1日から)、栃木県(8月2日から)でも出荷制限が行われた。宮城県から出荷された汚染の疑いのある牛は約2000頭。全都道府県に出荷され、すでに消費されたものもあった。各県とも全頭検査のうえ、出荷することで出荷再開をすることにし、検査態勢のできた処理場から出荷し始めている。

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桜葬

[お葬式]のジャンルから消えた用語。

樹木葬の一形態。墓地内の桜の木の周囲に複数の遺骨を埋蔵するものを桜葬(さくらそう)という。2005年に市民団体エンディングセンターが東京都町田市の墓地内に設けたのが最初。都市型樹木葬の先駆。

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タスポ  taspo

[健康問題]のジャンルから消えた用語。

未成年の喫煙対策として2008年7月に導入された、たばこ自販機用成人識別ICカード。成人にのみ発行され、ICチップに成人を証明する情報を入れる。タスポがないと自販機ではたばこを買えない。

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発酵食品  fermented food

[健康問題]のジャンルから消えた用語。

酵母・カビ・細菌など微生物の働きを利用して作られた食品の総称。味噌、醤油、酒類が代表的。発酵菌の分解作用によって、元の素材にはなかった新しい栄養成分が作られる。その多彩な健康機能が注目されている。

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性別適合手術(SRS)  Sex Reassignment Surgery

[性]のジャンルから消えた用語。

戸籍の変更などの法的整備や診断基準の確立など、性同一性障害(GID)の治療や社会的な受け入れが進んできた。GIDの診療は精神科2カ所での診断と、婦人科、泌尿器科、形成外科など各科の協力が必要。チーム体制があるのは、ナグモクリニック東京、岡山大学など数カ所にすぎず、国内で手術をした人は全体の2割弱。対応できる施設が少なく数年待ちであること、保険診療外であるため渡航費用を含めてもタイなど海外のほうが安いことから。

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胎内記憶  intrauterine memory

[性]のジャンルから消えた用語。

2〜3歳の子どもに聞くと、胎内のことや出生時のことを語ることがあり、これを胎内記憶と呼ぶ。子どもは3歳くらいまでに脳神経系が発達し完成するが、発達途上の胎児に胎内での記憶がどのように起こるのかはわかっていない。胎内記憶を研究している池川明医師によると、精子だった記憶や、前世記憶、中間生記憶(受精する前の記憶)を語る場合もあるという。われわれ大人には信じ難いが、胎内記憶があるとするなら、母体への配慮だけでなく、胎児の尊厳が保たれるように出生の現場を配慮する必要があるだろう。

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皮膚がん/メラノーマ  skin cancer/melanoma

[がん治療]のジャンルから消えた用語。

皮膚にできる悪性腫瘍は、大きくメラノーマ(悪性黒色腫)と、非メラノーマに分かれる。前者は小さな病変でも転移していることが多く、非常に悪性である。治療の基本は、患部の周辺を十分に含めた皮膚切除。転移の徴候がなければ、リンパ節郭清の必要はない。

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エンハンスメント  enhancement

[生命倫理]のジャンルから消えた用語。

従来、病気の治療のために用いられてきた医療技術を転用し、健康な身体や精神の機能を向上させるために用いること。増進的介入ともいう。例えば、筋ジストロフィー患者のために研究されている遺伝子操作による筋力増強技術が、スポーツ選手の筋力強化に利用されたり、低身長の治療に用いられるホルモン薬が、健常人の身長をより高くするために用いられたりすることが考えられる。エンハンスメントを社会的に許容した場合に、人間観の変質、優生学的な差別が生じるという懸念が強い一方で、こうした使用は人間の可能性を増大させるものであり、これを禁じる確たる論拠はないとする論者もいる。

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