ニュースのヤマから現代用語

◆シリア内戦

2011年3月から始まったシリアでの反政府運動に対して政府軍は弾圧を続け、多数の一般市民が犠牲になっている。

シリアでは1971年以降、大統領一族と軍部による独裁体制が続いており、バッシャール・アル・アサド大統領は2000年7月に就任し、07年5月の国民投票で再任された。アサド大統領は12年6月26日、シリアは内戦状態にあると宣言、泥沼化の状態が続いている。

また、6月22日にはシリア政府軍がトルコ軍機を撃墜、トルコ軍がシリア国境付近に集結し緊張する事態となっている。6月30日に、国連とアラブ連盟の合同特使を務めるアナン前国連事務総長の呼び掛けで、安全保障理事会常任理事国や周辺国が話し合う連絡グループ会議が初めてジュネーブの国連欧州本部で開かれ、関係各国はシリア主導の政権移行を目指すことで合意したと発表した。

◆ポスト・ムバラク政権

「アラブの春」で権力の座を追われたホスニ・ムバラク前大統領は、デモ隊殺害に関与した罪で2012年6月2日に終身刑判決を受けた。その後、前大統領は脳卒中などを起こし、危篤状態と伝えられた。

ムバラク政権が11年2月に崩壊して以来初のエジプト大統領選挙の決戦投票は12年6月17日行われ、イスラム主義組織ムスリム同胞団が推す自由公正党のムハンマド・モルシ氏が勝利宣言した。しかし、前政権の元首相アフマド・シャフィク氏陣営はモルシ氏の勝利宣言を拒否、勝利を主張した。両候補の陣営から違反行為などをめぐる申し立てが出たことから、選挙管理委員会が6月21日に予定していた公式の結果発表を延期したことで、双方の間の緊張が高まった。24日に選挙管理委員会からモルシ氏の勝利が発表されたが、混乱が懸念される。

◆原子力規制委員会

民主、自民、公明の3党は2012年6月15日、「原子力規制委員会」設置法案を衆議院に提出、賛成多数で可決した。参議院の審議を経て国会で成立、9月までに発足する。新組織は、現行の経済産業省の原子力安全・保安院、内閣府の原子力安全委員会、文部科学省の放射線モニタリング部門などに分かれている組織を一元化する。原子力規制委員会は、国家行政組織法第3条に基づいて設置される独立性の高い「三条委員会」とし、専門家の委員5人で構成する。5人は国会の同意を経て任命され、緊急時の技術的・専門的な判断は首相の指示よりも優先される。事務局として原子力規制庁が新設される。

◆AKB48総選挙

第4回AKB選抜総選挙が2012年6月6日に日本武道館で行われた。選挙で27枚目のシングル曲を歌う16人をファン投票で決めるというもので、大島優子が2位の渡辺麻友に3万票以上の差をつける10万8837票を獲得して1位となった。3位は柏木由紀だった。

ビデオリサーチによると、開票イベントを生中継した番組の平均視聴率は関東地区で18.7％となり、社会的な関心の高さがうかがえる。一方で、この総選挙の熱狂ぶりに違和感を覚えている人も多くいる。

◆野田再改造内閣

2012年6月4日、野田再改造内閣が発足した。参議院で問責決議を受けた前田武志国土交通相の後任には羽田裕一郎参院国会対策委員長、田中直紀防衛相の後任には民間から森本敏拓殖大大学院教授を起用した。防衛担当閣僚に民間人が選ばれたのは初のことである。

他に鹿野道彦農相、小川敏夫法相、自見庄三郎金融・郵政担当相の3閣僚も交代した。自民党が求めていた問責閣僚の交代を決断したことで、政府は自民党との消費税増税を巡る修正協議を開始、今国会会期内での採決を目指す（通常国会の会期末は6月21日）。しかし、修正協議は難航が予想されている。

◆金環日食

2012年5月21日、太陽と月と地球が一直線上に並び、太陽の中心部が月に隠れて指輪のように輝く金環日食が観測された。九州地方南部、四国地方南部、近畿地方南部、中部地方南部、関東地方などの広範囲で観測することができた。国立天文台によると、国内で金環日食が観測されたのは1987年の沖縄本島以来で約25年ぶり。次に日本で金環日食が観測できるのは北海道で、2030年6月。今回のように広範囲で観測できたのは、平安時代以来932年ぶりとなる。

◆原発稼動停止

2012年5月5日、国内でただ一つ動いていた原子力発電所である、北海道電力泊原子力発電所3号機が定期検査のために発電を停止した。これで日本国内の原発がすべて止まり、42年ぶりに日本の原発は「ゼロ」になった。政府は今夏の電力対策の策定を急いでいるが、日本は電力不足の懸念を抱えたまま、需要の高まる夏期を迎えようとしている。

電力会社が4月に発表した今夏の見通しでは、2010年並みの猛暑なら関西電力をはじめ、九州電力、北海道電力で不足するとしている。政府は5月中にも節電要請や計画停電、電力使用制限令などの必要性を判断する。

関西電力が最大19.6％の電力不足に陥るという見通しを出したことで、政府は大飯原発3、4号機の再稼働を急ぎ、これに対して5月30日、従来再稼働に慎重だった橋下徹大阪市長らが構成する関西広域連合が一定の理解を示した。

◆『舟を編む』

全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」が2012年4月10日発表された。第9回大賞には三浦しをんの小説『舟を編む』（光文社）が選ばれた。この作品は、辞書編集者の辞書づくりに打ち込む姿や熱い思いを描いている。作者の三浦しをんは1976年、東京生まれ。2000年、『格闘する者に○』でデビュー。以後、『月魚』『秘密の花園』『私が語りはじめた彼は』『むかしのはなし』など、小説作品を次々に発表。06年、『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。他に、『風が強く吹いている』『仏果を得ず』『神去なあなあ日常』など多数。

◆爆弾低気圧

2012年4月3日から5日、日本列島は台風並みの暴風雨に見舞われた。気象庁は異例の記者会見を開き、警戒を呼び掛けた。中心気圧が24時間に24ヘクトパスカル以上下がり急速に発達、熱帯低気圧並みの風雨をもたらす温帯低気圧、これが爆弾低気圧である。

低気圧が日本海で急速に発達し、寒冷前線が西日本から北日本に通過した影響によるもので、新潟県で43.5メートル、山形県で42.3メートルの最大瞬間風速を記録するなどし、全国で4人が亡くなった。

◆『アーティスト』

第84回アカデミー賞の授賞式が2012年2月26日、米国ハリウッドで行われた。フランス映画『アーティスト』が作品賞、監督賞、主演男優賞など5冠に輝いた。『アーティスト』は、スター俳優と新人女優の恋愛を描いた、無声とモノクロの手法で製作されたサイレント映画。サイレント映画が作品賞を受賞するのは第1回アカデミー賞で「つばさ」が受賞して以来、83年ぶりのこと。少年冒険ファンタジー『ヒューゴの不思議な発明』も撮影賞、美術賞など5部門を受賞した。主演女優賞は英国初の女性首相マーガレット・サッチャーの人生を描いた『マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙』のメリル・ストリープが受賞。また、助演男優賞は『人生はビギナーズ』のクリストファー・プラマーが、俳優部門では最高齢となる82歳で受賞した。

◆エルピーダメモリ

DRAM（半導体メモリ）を製造する世界第3位のエルピーダメモリが2012年2月27日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請し、倒産した。負債総額は4480億円で、国内の製造業では過去最大となる。エルピーダメモリは日本電気と日立製作所が設立。03年には三菱電機のDRAM事業が合流、国内唯一のDRAM専業メーカーとなり、04年11月に東証1部へ上場していた。

エルピーダメモリには09年に改正産業活力再生特別措置法により300億円の公的資金が投じられている。企業が破綻した場合、国が補填するしくみとなっており、最大280億円が税金による穴埋めの国民負担となる恐れがある。