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ニュースの収穫と現代用語
執筆者 木村伝兵衛

ニュースの収穫と現代用語

ISS宇宙飛行士

7月25日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、米航空宇宙局(NASA)などで訓練を終えた、元航空自衛隊パイロットの油井亀美也さん(41)、元全日空パイロットの大西卓哉さん(35)、元海上自衛隊医師の金井宣茂さん(34)の3人を、正式に国際宇宙ステーション(ISS)搭乗宇宙飛行士として認定した。3人が認定されたことにより、宇宙機構に所属する現役の飛行士は計9人となった。3人は2009年に宇宙飛行士候補者に選出されており、油井さんと大西さんは同年4月から、金井さんは同年9月から訓練を受けてきた。今後は、ISSに搭乗する飛行士として訓練を続け、早ければ2015年以降に宇宙に飛び立つ。

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iPS細胞から受精

8月5日の米科学誌セル電子版に、京都大学の斎藤通紀教授らの研究グループが、マウスのiPS細胞(人口多能性幹細胞)とES細胞(胚性幹細胞)のそれぞれの万能細胞から精子をつくり出し、卵子と体外受精させてマウスを誕生させることに成功したと掲載された。国が2010年5月に策定した指針では、ヒトのiPS細胞などから精子や卵子を作ることは認められているが、受精させて受精卵を作ることは禁止されている。

一方で、精子は体外で大量につくれることが可能となったため、精子ができるしくみを調べることが容易になり、不妊の原因解明などにつながると期待されている。

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和牛オーナー商法

「和牛オーナー」商法で知られる安愚楽牧場が8月9日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請、同日に財産保全命令を受けた。負債総額は約619億円。

安愚楽牧場は1981年に設立され、「繁殖牛のオーナー」として預託オーナー制度を展開。オーナー数は7万人にのぼるとみられている。会員から出資を募り、生まれた子牛の売却益を配当金とする方式で資金調達してきた。しかし、口蹄疫の問題に加え、肉牛に放射性セシウムが検出されたことで、東京食肉市場の市場価格が下落、風評被害もあり経営に行き詰まった。7月の配当金も支払われておらず、出資者からは出資金返還を求める声があがっている。細野豪志原発事故担当相は、同牧場の資金繰り悪化について、福島第一原発事故の賠償対象になり得るとの認識を示しており、今後の動向が注視されている。

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日本国債格下げ

米国の大手格付け会社、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月24日、日本国債の格付けを1段階引き下げたと発表した。格下げの理由として、多額の財政赤字や政府債務の増加や、社会保障や税制改革に向けた取り組みが具体性に欠け、首相が頻繁に交代する政治の不安定さを指摘されている。

今回の引き下げで、日本は21段階のうち上から3番目に当たる「Aa2」から1段階下の「Aa3」となり、中国などと並びG7の中では最低となった。同社による日本国債の格下げは約9年3カ月ぶり。日本国債については1月27日に、米スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)が、「AA」から「AA−(マイナス)」に1段階引き下げている。

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デフォルト  default

8月2日、米連邦政府の債務上限を引き上げる法案が成立した。債務上限を現行の14兆2900億ドルから2兆1000億ドル引き上げるとともに、今後10年間で米政府の財政赤字を最大2兆5000億ドル削減することが盛り込まれている。8月2日までという引き上げ期限を目前に、ぎりぎりのタイミングで債務不履行(デフォルト)という最悪の事態は回避されることになった。

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カダフィ政権崩壊

8月23日、リビアの反体制派が首都トリポリに進攻し、カダフィ大佐の政権中枢施設を制圧。事実上カダフィ政権は崩壊した。

既に、反体制派組織「国民評議会」は首都トリポリに拠点を移し、複数の省庁が首都に事務所を開設した。また、リビア再建策を話し合う「支援国会合」が9月1日にパリで開催された。新政権への移行をスムーズに進めるための財源確保や治安維持にどこまで効果的な支援策が打ち出せるかが焦点だが、同日にはカダフィ大佐がシリアのテレビ局などから音声メッセージで徹底抗戦を呼びかけるなどもしており、不安定な状況は続く。

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ブラックホール

8月25日、ブラックホールに星が吸い込まれていく様子をとらえることに世界で初めて成功したとの宇宙航空研究開発機構(JAXA)などによる論文が、英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載された。銀河の中心にあるブラックホールに恒星が近づき吸い込まれていくと、ブラックホールの中心部から高速のガスが吹き出る「ジェット」と呼ばれる現象が起きる。

今回観測されたのは、地球から39億光年離れた銀河の中心から突然出てきたX線で、これまで星が吸い込まれた後のX線をとらえた例はあったが、ブラックホールが星を吸い込んで急激にX線を出す様子をとらえたのは初めてとされている。ブラックホールの半径は5000万キロメートル前後と想定されており、これは地球から太陽までの距離のおよそ3分の1に相当する。ジェットからのX線はその後、100日以上かけてゆっくり弱くなっていった。

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野田新内閣

9月2日、野田佳彦新内閣が発足した。官房長官には藤村修衆議院議員、外務相に玄葉光一郎衆議院議員が就任。財務相には安住淳衆議院議員が抜擢された。また、小沢グループからは2人が入閣。民主党代表選の決選投票で野田首相を支持した。鹿野道彦衆議院議員を農林水産相に再任するなど、各グループから入閣する人事を行い、党内のバランスを考慮した布陣となった。代表選を戦った海江田万里前経済産業相、馬淵澄夫元国土交通相の入閣はなかった。前原誠司元外務相は党政調会長に就任している。10名が初入閣、再任は鹿野道彦農林水産相、細野豪志原発担当・環境相、平野達男復興担当相、自見庄三郎金融・郵政改革相の4名。岡田克也前幹事長は官房長官への就任要請を固辞し、閣僚への起用は見送られた。

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ロシア大統領選

ロシアのプーチン首相は2011年9月24日、モスクワで開かれた政権与党「統一ロシア」の党大会で、12年3月の大統領選挙に出馬する意向を表明した。他の党には有力な候補者がいないため、プーチン首相が大統領に復帰することとなるであろう。現在のメドベージェフ大統領は退任後、首相に就任する意向を示しており、2人が先頭に立つ「双頭体制」は今後も続いていくことになる。ロシア大統領の任期は4年だが、2008年の憲法改正で6年に延長された。大統領は国民による選挙で選ばれるが、08年に大統領を退いたあとも事実上の最高実力者であり続けたプーチン首相が支持率でほかの政治家を大きく引き離しており、12年3月の大統領選挙は信任投票となる見通しだ。

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キンドル・ファイア

米アマゾン・ドットコムは9月28日、タブレット型多機能端末「キンドル・ファイア」の販売を米国内で11月15日に開始すると発表した。日本での発売時期は未定。価格は199ドルで、米アップルの「iPad」よりも約6割も安く設定している。同社のキンドルは2007年11月に米国で第1世代が販売開始され、2011年9月28日には第4世代が発売された。

キンドル・ファイアは従来のテキスト表示を中心とした仕様から、フルタッチパネル式のカラー液晶ディスプレイとなる点が特徴。米調査会社のアイサプライは、「キンドル・ファイア」の推定原価は209.63ドルになるとの調査結果を明らかにしている。販売するごとに損失が出る計算だが、新たな端末を展開することで、多様な商品やサービスを自前の端末で販売することが可能になる。さらに、同社の商品やサービスの購入を促して売上の拡大を見込んでおり、そこで損失をカバーしていくと見られる。

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