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ニュースの岸辺に現代用語
執筆者 木村伝兵衛

ニュースの岸辺に現代用語

高温注意情報

6月10日、気象庁は最高気温が35℃以上の猛暑日が予想される場合、事前に注意を呼びかける「高温注意情報」を7月中旬から新設すると発表した。

2011年の6〜8月の平均気温は、西日本を中心に平年並みか平年以上になることが予想されているうえ、福島第一原子力発電所事故の影響を受け、全国各地で電力不足となっている。節電で冷房が控えられ、熱中症になる人が増える可能性があるとして、注意を促すものである。ただし、35℃に達する日が少ない青森県と宮城県については最高気温が33℃以上の予報時に発表するとし、猛暑日になりにくい北海道と、電力不足が見込まれていない沖縄県は対象から外される。

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世界農業遺産

6月11日、伝統的な農業や生物多様性を持つ地域を守るため、国連の機関が認定している「世界農業遺産」に石川県の能登半島と新潟県の佐渡市が登録された。国内初というだけではなく、先進国としても初の登録でもある。

能登半島は伝統的な棚田が、佐渡市はトキと共に生きるための農薬を減らした農業などが評価された。

世界農業遺産、正式名は「世界重要農業資産システム(GIAHS)」。2002年に食糧農業機関(FAO)が始めたプロジェクトで、世界遺産にも登録されているフィリピン・ルソン島北部の棚田や、中国雲南省のハニ族の棚田、ペルー・アンデスに伝わるジャガイモ灌漑農法など8地域が認定を受けている。

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IMF専務理事

6月28日、国際通貨基金(IMF)の理事会で、次期専務理事にフランスのクリスティーヌ・ラガルド財務相が選出された。

女性がIMFのトップに就任するのは初めてで、緊迫するギリシャの財政危機などの課題に取り組むこととなる。IMFは、ドミニク・ストロスカーン前専務理事が女性への暴行容疑で起訴され、5月に辞任したため、後任の専務理事の選出を進めていた。次期専務理事には、ラガルド氏のほか、メキシコの中央銀行のカルステンス総裁が立候補していたが、ラガルド氏が欧州出身であること、中国などの主要新興国から支持を得たこと、IMFへの最大の出資国である米国が支持を表明したことなどが就任決定を後押ししたとされている。任期は7月5日から5年間。

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コンピュータ・ウィルス作成罪

6月17日「コンピュータ・ウイルス作成罪」(正式には、不正指令電磁的記録作成罪)の新設を含む刑法などの改正案が可決、成立した。

7月中旬から適用される。これまでは、犯罪目的のウイルス作成や提供などを直接取り締まる法律がなかったが、近年、コンピュータ・ウイルスによる攻撃やコンピュータ・ネットワークを悪用した犯罪といったサイバー犯罪が増加しているため、法案が国会に提出されていた。今回の改正で、正当な理由がないのに、無断で他人のコンピュータで実行させる目的でコンピュータ・ウイルスを作成、提供した場合には3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。また、同様の目的でウイルスを取得または保管した場合には、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。

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復興基本法

東日本震災から3カ月以上を要して、ようやく東日本大震災の復興の基本理念や枠組みを定めた復興基本法が6月20日に民主、自民、公明3党などの賛成多数により可決、成立した。復興基本法には「復興庁」の設置や「復興債」の発行、「復興特区制度」を設けることなどが盛り込まれている。24日に施行され、27日には松本龍環境相兼防災担当相が復興大臣に、原発担当相には細野豪志首相補佐官が任命された。松本氏が兼務していた環境相は江田五月法相が兼務する。また、20日の本会議では、内閣に復興対策本部を設置すること、被災地に現地対策本部を設置することも承認された。

7月3日、松本興担当大臣は、岩手、宮城両県の知事と会談。その際に、「知恵を出さないやつは助けない」などの発言に、被災地や野党側から批判が強まったため、5日に引責辞任。6月24日の就任からわずか9日でのスピード辞任となった。

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日本の原発導入

日本では、その被爆経験にもかかわらず原発の導入は早く、導入後の開発、増設も急ピッチで進んできた。

これには、被爆国としての経験が裏表で関わっている。

一つは対外的な要因で、敗戦国としてアメリカの完全な管理下に置かれたために、軍事転用や核拡散の不安が生じる余地がなかったことである。

もう一つは、核兵器によって戦争に負けたとの思いが、潜在核兵器保有国への道を選ぶ強力な動機となり、アメリカも手駒の一つとして日本の実質的な核武装路線を容認したことである。

それが、独占的権益を認める代わりに核開発への協力を電力会社に押し付け、その費用を割高な電力料金に転嫁して国民に負担させる、日本独特の官民共同核開発体制を生み出したのである。

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原発大国

日本独特の官民共同核開発体制によって、原発の開発、原発の建設が推進されていった結果、日本はアメリカ、フランスに次ぐ第3位の原発大国となり、今日では発電容量の50%程度を原発が占める。しかし、一度燃焼を始めると止められない原発の割合を増やしすぎたため、低需要時間帯には電気の過剰生産が起こるような事態まで起きている。また、ウランも輸入に頼る日本では、副産物であるプルトニウムの利用技術の開発を進めてきたが、高性能核弾頭ぐらいしか使い道のないプルトニウムは扱いが難しすぎ、その処理・管理費用も含めると、もはや経済的合理性では説明がつけられなくなっている。そのため、核兵器開発を考えない国々は、プルトニウム利用から次々と撤退しており、日本のプルトニウムへのこだわりは、世界では異常な突出ぶりをみせていた。

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