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ことばの列島スケッチ
執筆者 くぼたえみ

ことばの列島スケッチ

東日本大震災

菅直人首相は4月1日午後、今回の震災を「東日本大震災」と呼ぶことに決まったことを明らかにした。

地震の正式名称は気象庁の命名による「東北地方太平洋沖地震」。一方で報道では、NHKが「東北関東大震災」、毎日新聞は「東北沖大震災」、共同通信などは「東日本大震災」という呼称を使っていた。

大規模な被害を出した地震は過去の例にならって「大震災」とされ、1995年の阪神・淡路大震災の際は、1月17日の地震発生から1週間後にほぼ「阪神大震災」で統一された。

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命あることを喜ぼう

東北地方太平洋沖地震にて壊滅的被害をうけた岩手県陸前高田市。その地域で被災した中学生たちが「ガンバロー高田 命あることを喜ぼう」と大きな紙に書いて壁に貼り、避難所の多くの人々を勇気づけた。この中学生たちは、家を失ったり、家族が行方不明の状態であったりと自ら被災者であるにも関わらず、「怖い悲しいという気持ちは自分だけじゃない」と気丈に対応。地震発生から4日経った15日、避難所の皆に希望をもってもらいたいという思いから、前方よく見える場所に貼ったのだという。

この様子がTVニュースで流れると、ネット上で多くの反響をよび、被災者以外の人たちへも勇気と希望を与えた。

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てんでんこ

「てんでんこ」とは「てんでばらばら」を指し、「命てんでんこ」といえば、三陸地方で伝承される「自分の命は自分で守れ」という意味に。津波が来たら親や兄弟に構わずにとにかく逃げろと、津波の怖さや避難する難しさを伝える言葉が「津波てんでんこ」。

「命てんでんこ」の重要さや津波体験を伝える語り部・田畑ヨシ氏(86歳/岩手県宮古市田老町)は2011年東日本大震災により3度目の津波被害経験者となる。

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地震酔い

地震ではないのに、めまいやふらつきなどを感じて気分が悪くなる症状のこと。車酔いや船酔いと同様、視覚情報と平衡感覚とのズレが原因。余震が続くストレスも一因となる。日本赤十字九州国際看護大学長の喜多悦子氏によると、改善には「リラックスすること」が大切で、伸びをする、深呼吸、他人に触れてもらう手当て(手を握る、擦り合う、首をもむなど)が有効的だという。

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テレビを消して深呼吸しよう

東日本大震災の映像が繰り返されるテレビを少し消して深呼吸し、心の平静を取り戻そうと呼びかけた言葉。震災直後から、各テレビ局は地震や津波の同じ映像を繰り返し流し、被災者以外へも不安や恐怖心、悲痛をあおった。「冷静な生活に戻る」ことこそ、被災者への支援につながるというメッセージを込め、震災5日目あたりから、個人ブログ、ツイッターなどで目立つ言葉。

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命の燃料

「燃料は被災者の命を救う」という意味をもつ言葉。東日本大震による被災地では暖房用の灯油や自家発電に使う軽油の不足が深刻化。被災地への物資運送や、原発事故による避難時のガソリン不足も浮上。燃料不足最大の原因は、震災による東北・関東6カ所の製油所の操業停止。関東地区の過剰不安から買い占めが増加したことも拍車をかけた。

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RTお願い

「RTお願い」とは、東日本大震災の情報提供や、物資や医療関連品の提供などを呼びかける際、ネット上で多用された言葉。RTとは、Retweet(リツイート)の略。他人のツイート(短文投稿)を自分のアカウントで再投稿することを指す。自分をフォローしているユーザーに伝えたい場合にも使われ、情報を一度に拡散したいときに有効。

「フォロー多い方、RTお願いします」、「よろしければRTお願いできますか?」など書き方は様々。

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届け、みんなの元気玉!!

人気漫画「ドラゴンボール」の作者・鳥山明氏が制作した応援動画のこと。動画サイト・YouTubeにて世界中に配信。

「元気玉」とは主人公・孫悟空の得意技で、仲間から少しずつパワーをもらってできる強力な玉のこと。視聴者のエールを元気玉に詰め込んで「届け、みんなの元気玉!!」と被災地に向けて発射(=届ける)。動画の再生で得た収益は義援金として全額寄付される。

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過剰自粛

被災地以外の地域において「節電」対策に過剰反応を示す現象。関東だけでなく、関西地域にまで過剰自粛が広がると、経済停滞が起こりうると日本銀行大阪支店の早川英男氏は警告。関西学院大学災害復興制度研究所の山中茂樹教授は「計画停電で企業活動もままならない東京を関西が支えるしかない。関西が元気でなくては」と語る。

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津波太郎

つなみたろう。津波被害の多い町・岩手県宮古市田老町のことを揶揄した言葉。東日本大震災により壊滅的な被害を受けた町の一つ。田老町は1934年から1978年にかけて高さ10mもの堤防(田老万里の長城)を築き、「災害の町」から「防災の町」へと変貌を遂げたことでも有名。

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田老万里の長城

津波被害から町を守るため、岩手県宮古市田老町が建設した津波防潮堤の通称。総延長2433m、高さ10m。1611年、1896年、1933年の三陸大津波により壊滅的被害を受けた経験をもとに、1934年から1978年の44年をかけて構築。海外からも注目される堤防。

2011年東日本大震災において想定外の津波が押し寄せ、堤防はおろか地域全体が壊滅的被害に陥った。

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風評被害

根拠のない噂や過剰な報道によって受ける被害のこと。東京電力・福島第1原発事故が原因で放出された「放射性物質(放射性ヨウ素)が一定地域の農産物を汚染」という報道が各メディアで流れると、消費者はその地域以外の農産物にも不安を高め、購買意欲が減少。その傾向が各地で蔓延し、広範囲にわたる農家や企業に悪影響を及ぼす。防ぐべき被害。

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放射性ヨウ素

放射能をもつヨウ素のこと。東京電力・福島第1原発事故により大気中に放出された種類は「放射性ヨウ素131」で、放射能の強さが半減する周期(半減期)は8日。放出発覚後の国の対応は「ただちに健康に影響を及ぼす数値ではない」と強調。一週間後にはホウレンソウ、原乳から放射性ヨウ素を検出。続けて野菜の葉ものを中心に水道水や海水から検出され、被害は拡大化。

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低体温症

体温が36度に満たない35度台の低体温状態が続く症状。震災直後の避難所では暖房機器の不足による寒さで低体温症の被災者が増加。低体温が続くと基礎代謝や免疫力の低下をまねき、アレルギーや生活習慣病など多くの病気を誘発。体温が35度以下になるとガン細胞が発生しやすいともいわれている。

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夜驚症

やきょうしょう。夜中、急に起き上がって泣いたり悲鳴をあげたりと恐怖や不安感を示す症状。震災後も続く余震の恐怖や、震災映像などが原因で心が不安定な子どもたちが各地で増加。

筑波大学大学院・徳田克己教授(子供支援学)によると「悲惨な映像を極力見せない。見る際は「ママ(パパ)がいるから大丈夫」と声かけ」「枕元に子供の宝物を置いて安心させる」などが大切だという。

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フクシマ50

欧米メディアから生まれた言葉で、福島第一原発事故の復旧作業にあたる作業員50人のことを指す。作業員は東京電力のほか、東電工業、東電環境エンジニアリングといった子会社、原子炉を製造した東芝、日立製作所などメーカーの社員たち。米ABCテレビでは「福島の英雄50人、自発的に多大な危険を冒して残った原発作業員」と報道。オバマ米大統領は「日本の作業員らの英雄的な努力」とたたえた。

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IAEA  International Atomic Energy Agency

国際原子力機関。原子力の平和利用促進および軍事目的への転用防止を目的として設立された。情報配布、安全基準の設定や条約作成などの幅広い活動や、軍事目的への転用の可能性を検証する「保障措置」を任務とする。天野之弥が事務局長を務める。

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東北をナメるな!

仙台市出身のお笑いコンビ・サンドウィッチマンの伊達みきお氏(ツッコミ担当)がブログ上に書いた言葉。伊達氏はボケ担当の富澤たけし氏と共に、宮城・気仙沼市でロケ中に被災。富澤氏は「胸が痛い……」と悲痛な思いを綴り、一方伊達氏は必ず東北は復興するという強い気持ちを込めて「東北をナメるな!」と自分、そして日本全体を奮い立たせるような言葉を綴った。

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ランニング募金

ランナーが走った距離に応じて一定額を募金する震災支援活動のこと。小出義雄氏が代表を務める佐倉アスリート倶楽部のコーチ兼トレーナー・阿部康志氏らが東京都内に募金の事務局を開設。「被災者のために走る」と目的を掲げ、阿部氏は「1キロにつき10円」を募金すると設定。各自で距離と金額を設定して募金活動に参加可能。

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