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人の心と体の法則
執筆者 白鳥 敬

人の心と体の法則

海軍航空隊の法則

昭和19年の「飛行学生兵術講義案」という霞ヶ浦航空隊の教官がまとめた資料があります(『海軍航空教範』光人社刊)。たいへん興味深いので引用させていただきます。当時は、極秘資料だったようです。そこには、航空学生は、「有形的要素・・・・機力」「無形的要素・・・・術力、精神力」が肝要であるとして、公式のようなものが書いてあります。式自体は意味がよくわからないのですが、気迫のようなものが伝わってきますので、引用しておきます。機力とは飛行機のことを言っているようです。

 FdMASXF {M^m v^n v = A.S (F=戦闘力、A=術力、S=精神力、m、nは指数)

精神力まで公式にするとは!

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因果法則  Law of causality

原因と結果の関係に関する法則。因果律ともいう。Aという事象はBという事象を引き起こすような関係。仏教では因果応報といい、前世で行った悪事が現世の不幸を招いているという意味で使われています。

人間にとっては、原因と結果は時間軸に沿って感じ取られます。「手にもったりんごから指を離したらりんごは地面に落ちる。」という具合に。もしも、因果律が乱れたら? 人間は混乱して日常生活など送れなくなってしまうでしょう。

ただ、電子や光子といった粒子の振る舞いを研究する量子力学の世界では、観測によって粒子の状態を確定できないので因果律が成り立たちません。人間の心は、量子の世界を想像できても、体は因果律に縛られて、原因から結果へと一方向にしか時間が流れていかないというわけです。

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ゲシュタルト法則  Gestalt`s rule

ゲシュタルト心理学は20世紀の初頭にドイツで生まれた学派。その頃、主流だった要素還元主義の心理学を批判し、要素が集まった総体として認知されるべきと考えました。ゲシュタルトというのは、ドイツ語で全体性を持った構造のことをいいます。

たとえば、木の葉の間から木漏れ日が漏れてくるようなところで、木の葉の群れの中に、人の顔のような形が見えることがあります。このように要素の組み合わせで全体が構造化される性質をゲシュタルトの法則といいます。

そういえば、子供の頃は、天井板の木目の中に人の顔や動物の姿を探して遊んだものです。

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アレンの法則  Allen's Rule

1877年にJ.A.アレンが提唱した法則。恒温動物は寒い地方に住むものほど体表面積が狭く、温暖な地方に住んでいる同じ種の動物に比べて、耳・首・肢など短いという法則。寒い地方では、体表面積を小さくしてできるだけ体温が逃げるのを防ぐためと言われている。ウサギやキツネの耳などがこの法則に当てはまるとされていますが例外も多いという。

確かに、ネコは、夏は思いっきり伸びて寝ているが、冬が丸まって寝ているし、もしかして首が短くてずんぐりした体型の人のルーツは寒い地方なのだろうか。

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コープの法則  Cope`s rule

アメリカの生物学者E.D.コープによって1880年に提唱された法則。同じ系統の生物は、比較的小さな体から進化して、一定の限界まで大きくなるというもの。

理由は、はっきとはわかっていませんが、大きな生物は小さな生物を補食するため、大きな生物が生き残るのではないかと言われています。恐竜などは確かに巨大になりましたが、大きさにも限界があるでしょう。地球の重力に打ち勝って巨大な体を動かすには、大きなエネルギーが必要ですから、重力の大きさでおおむねその惑星に住む生物の最大の大きさが決まってくるでしょう。結局、エネルギー効率がもっともいい生物が生き残るのではないでしょうか。人類が高等文明を発達させたのは、地球上で活動するにはもっとも適した大きさだったからかもしれません。

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体表面積の法則  Body surface area`s rule

動物の基礎代謝は体重よりも体の表面積に比例して大きくなるという法則。1888年に、M.ルーブナーが提唱しました。幼児などへの薬の投与量は体重ではなく体表面積で決められるそうです。体表面積の測定には時間がかかるので、体重と身長から、体表面積を求める公式がつくられています。

体表面積(平方cm) = [体重(kg)]^0.425 X [身長(cm)]^0.725 X 72.46

これを高比良の式といい、日本人の成人男子に合わせた公式です。この式によると、筆者の体表面積は、約1.85平方メートルでした。

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全か無かの法則  All-or-none law

「全か無か」というより「あるか無しか」といったほうがふさわしいような気がしますが、生物の神経細胞は、ある強さ(閾値)に達するまでは活動せず、それを超えると活動するという法則です。生物の体は、まさに0か1かのデジタル方式で動いているというわけです。デジタルが積み重なってアナログで考えているなんて、人間は不思議な生き物です。

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最終収穫量一定の法則

植栽の密度と単位面積当りの収穫量の関係を示す法則。収穫量を上げるには、単位面積あたりたくさんの植物を植えればいいような気がしますが、実際はある密度までは収穫量が増大しますが、それ以上になると増加しません。密生すると葉が重なりあい、十分に太陽光が当りませんし、地中から吸い上げる養分の奪い合いになるからです。

人間も、満員電車のように、単位面積あたり、あまり詰め込まれると不快ですが、生物はみな同じなんですね。

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七情の法則

漢方薬の配合理論に関する法則。ある薬とある薬をまぜるとよく効くとか、逆に毒になるといった法則をまとめてあります。その七つとは、「単行(たんこう)」「相須(そうす)」「相使(そうし)」「相畏(そうい)」「相殺(そうさい)」「相悪(そうお)」「相反(そうはん)」です。「相須」は相乗効果が出ること、「相反」は毒性や副作用を生ずることをいうそうです。

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練習の法則  law of exercise

アメリカの心理学者E.ソーンダイクが編み出した教育心理学に関する法則。何度も繰り返して練習すると、神経系の結合が強まり、より確実にできるようになるというもの。自転車の運転などが好例。最初はうまく走れなくても、何度も練習しているうちに走れるようになります。

物事はなんでもそうです。やはり地道に努力を続けることでいつか目標を達成することができるのでしょう。

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