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波と振動に関する単位と数値
著者 白鳥 敬

波と振動に関する単位と数値

1/fゆらぎ

扇風機やエアコンに「1/f(エフ分の1)ゆらぎ」を売りにしているものがあります。自然の風に近い風を送ってくれるそうです。1/fのfは周波数(frequency)のことで、1/fでゆらぐということは、波の強さ(振幅)と周波数が反比例の関係にあるということです。自然界にあるゆらぎは、いくつもの規則正しい波(正弦波)が組み合わさってできています。このとき、周波数の低い波ほど振幅が大きい関係にあると、1/fゆらぎになります。

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1/fゆらぎが快適なのは

なぜ、1/fゆらぎが快適なのかはよくわかっていませんが、人間の脈や神経伝達など、一見規則正しく見える生体のリズムが、ある程度のゆらぎをもっているため、これが快感を引き起こすのではないかといわれています。たとえば、道路脇に等間隔で規則正しく電柱が立っている道を歩くよりも、間隔が少しばかりランダムだったほうが、人間は快適に感じるといます。ガラス張りの超高層ビルのオフィスで働くよりも、昔ながらの木造の建物で働くほうが、快適に仕事ができるかもしれません。

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1/fとフラクタル

海岸線を拡大していくと、どこまでも同じような形をした海岸線が出てくる。このような図形をフラクタル(自己相似形)いいます。図形だけでなく、波も1/fの場合にフラクタルな波形になっています。波形を拡大していくと、1/fの波形の一部は全体の波形の相似形になっていて、同じ波形が後から後から入れ子構造になって現れてくるのです。

自然はすべて、ゆらぎを含んだ構造になっていて、そういった環境で発生し進化した人類は、自然のゆらぎの中で暮らすのがもっともふさわしいのでしょう。

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波数  wavenumber

SI単位に、波数という単位があります。メートルの−1乗(m−1)、つまり、波長をメートルで表したときの逆数になります。CGS単位系では、センチメートルの−1乗(cm−1)を用い、これをカイザーという単位で表していましたが、現在は、SI単位に移行しているので、カイザーは、あまり使われることはありません。

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振動数  Hz

1秒に1回、振動することを1ヘルツ(Hz)と言います。HzはSI単位の一つです。ヘルツは、家庭に来ている交流電源や電波、最近は、パソコンのクロック周波数などでよく聞く単位です。自然界の最も波長の長い、つまり振動数の小さな波は、後で述べる波長が数100kmにおよぶ大気循環の波でしょうか。最も波長が短い、つまり振動数の高い波は、波長が10ピコメートル(pm)以下のガンマ線。なお以前は、振動数の単位としてサイクル毎秒(c/s)が使われていましたが、現在はヘルツを使います。

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メーターバンド  mb

短波ラジオ放送は、現在、あまり聞かれなくなってきました。ラジオもデジタル放送にかわりつつあり、ネットを使ったラジオ放送も登場しています。そんなわけで、いまは知ってる人は少ないかもしれませんが、短波帯のラジオ放送に使われている周波数帯は、国際電気通信条約で決められています。これをメーターバンドといます。120メーターバンド(2300〜2495kHz)から11メーターバンド(25600〜26100kHz)まで14個のメーターバンドがあります。120とか11というのは、その周波数帯の波長から名づけられています。

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シンチレーション  scintillation

夜空の星がきらきら瞬いている様子をさす言葉です。星の光が大気の層を通過して地上まで達するときに、大気の密度のゆらぎによって屈折率が変化するため、きらきらと瞬いて見えます。密度のゆらぎは、温度の変化でもありますから、上空のジェット気流の強いところでは、瞬きも大きくなります。この星の瞬きも1/fゆらぎであるといわれています。

 

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アントニアディ尺度  Antoniadi scale

シンチレーションと同様の言葉に、大気の乱れや透明度などから星像の見え具合の程度を示すシーイングという言葉があります。このシーイングの尺度をアントニアディ尺度といいます。ギリシャの天文学者で火星観測で有名なE・M・アントニアディ(1870-1944)が決めたものです。アントニアディ尺度は、望遠鏡で見た星像の見え具合によってI〜Vまであります。

I:小刻みなゆらぎすらなく完璧

II:数秒静穏で時々わずかにゆらぐ

III:大きな大気のゆらぎで星像がにじむ

IV:常に星像がゆらぐ

V:非常に悪い、惑星のスケッチをとることは難しい

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風の息/ガスト  gust

草原に寝そべって、1/fゆらぎで体を包み込んでくれる「そよ風」は心地いいものですが、強い風になると、ゆらぎを楽しむどころではなくなってきます。風速5m/sを超えるような強い風には、たいてい風の息があります。これをガストといいます。強くなったり弱くなったりする風は、飛行機泣かせです。そのため、平均風速を5m/sを上回るガストがあるときは、管制官はパイロットに知らせます。また、ガストがあるときは、風向も変動していることが多いものです。風向変動幅が60度以上180度未満の場合は、ウインド・バリアブルという言葉の後に、何度から何度までの間で変動しているかを教えてくれます。

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惑星波の波数

中緯度付近の対流圏上層部には、卓越する大きな空気のうねりがあります。これをプラネタリー波または惑星波、ロスビー波などといいます。波長は、経度にして50〜120度くらい。この波の波数は3〜7くらいです。この波の振幅や波数の変化の度合いで地上の気候が変化します。

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カルマン渦

北西の季節風が強く、大気中に湿度がまだ十分に残っている11月頃、富士山などの孤立峰の風下側に、雲が列を作ることがあります。この雲の列をよく見ると、いくつもの渦が連なっているように見えることがあります。これがカルマン渦です。空気の流れの中に、物体を置くとその後ろで、左右に分かれていた気流がぶつかり、気流が左右に震動して渦を作り出します。雲の姿を見ていると、上空の空気のゆらぎが見てとれるのです。

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