○○工学のいろいろ

◆教育工学　　educational technology

教育学者、工学者、自然化学者、社会科学者等の協力により、工学の原理と技術を教育に応用しながら、アメリカで急速に開発されている教育技術・教育理論。すでにわが国にもプログラム学習、ティーチング・マシンなどでその成果の一部が導入されている。現在、アメリカでは機械器具類の大胆な教育面への利用によって、むしろ機械器具類に合わせて授業方法、クラス編成校舎の構まで変えていく動きが出てきているが、それは教育工学の発展一側面を示している。他方、基礎科学としての自然科学と工業技術の関連に注目し、教育を行動科学や社会科学によって基礎付け、教育方法から教育制度に至るまで再検討しようとする新たな方法論が注目を浴びているが、これも教育を一種の工学と考える教育工学理論の発展のほかの側面を示しており、教育工学のこの二つの側面は不可分に結びついている。

◆社会工学

科学技術と人文・社会科学との接点を研究する分野。東京工業大学では、学問研究の歪みを是正するため、1962年度にこの講座を設けたが、67年度から「社会工学科」を新設する。科学、技術、社会、人間に関する知識を総合した研究、教育を行うことにより都市計画、公害定開発国援助といった綜合的判断を必要とする緊急課題を、正確に研究するものと期待されている。

◆管理工学

最も広義には、数学的、統計学的方法による管理の研究と技術の総称であるが、一般には、IE（industrial engineering）OR(operation research)電子計算機を中核にした、SE（system sngineering）の三つを包括するものとして管理工学の名を用いる。その他、管理工学に相当する名称としては、経営工学、経営科学、計量経営学などがある。

◆政治工学

政治を機能にしておいてメカニズムとして実証的に観察する立場から、コンピュータ、世論調査など科学的技術を用いて政治現象を把握する場合には、人間の生物的・心理的要素を捨象して機械的にみる傾向を帯びてくる。政治社会を一つの目標を持ったメカニズムの体系としてとらえることは社会科学よりは工学の立場に接近させることになる。現代社会の技術革新と結びついた政治体系論は政治工学という発想につながるものがある。しかし、生きた人間の社会関係は特定の目標と機能をあらかじめ設定されて作られた機会のメカニズムとは異なっている。政治工学の発想は人間社会のヒューマニズムを無視するおそれがあって、生き生きとした人間社会の思想の創意を抹殺することにならざるお得ない。

◆福祉工学

機械文明が発達し、人間が機械に支配されるという悲劇が深刻化、機械文明の再出発がさけばれているなかで、科学技術は人間の福祉のためにいかにあるべきかを追求するのが福祉工学である。

◆感性工学

人間は、感覚器官を使って外界から絶え間なく情報を取り込んでいる。それらは、知の世界と情意の世界を形成する糧となっている。感性とは、知と情意とが混然一体となった、つまり「見たい、知りたい」と「好き、楽しい」とが融合した複雑かつ未分化な外界認識の世界である。この感性を製品開発のなかに組み込むことを求める動きが、ハードの時代からソフトの時代へとシフトしてくるにつれて強くなってきている。

◆数理ファイナンス／金融工学　　mathematical finance / financial engineering

2003年版本誌掲載。以下、

数理ファイナンスとはファイナンスの諸問題に数学的アプローチを適用して研究する学問であり、金融工学とは数理ファイナンスの理論をコンピュータを用いて実用化を図る分野である。なかでも華々しい成果をあげたのはデリバティブ評価である。

デリバティブを評価するＢＳモデルでは証券の価格変動をブラウン運動で記述し、裁定機会がないことを要請し、さらに確率過程論のマルチンゲール理論と結び付けることによりデリバティブの理論価格が導き出される。理論価格は偏微分方程式の解としてあたえられる。ヨーロピアン・オプションを除いて、その解は求められないためコンピュータによる計算を行う。