月刊基礎知識
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森羅万象全てが学ぶ対象ですの用語集

芸術・文化系学問のいろいろ

芸術社会学

1951年版本誌掲載。以下、

芸術のある形式と社会のある形式の間に法則的連繋を設定する科学。

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構造言語学

1967年版本誌掲載。以下、

文学作品を一つの内的関連をもつ構造としてとらえ、作品を成立たせている様々な機能の法則を明らかにして、その上で、文学批評を行う、新しい文学評論の方法。フランスの文学者ソーシュールやヤコブソン、さらに、昭和41年5月に来日したロラン・バルトらが「文学評論を科学的に」という旗印とともに、この立場をとっている。

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美学

1972年版本誌掲載。以下、

自然芸術における美の本質、原理を解明する学問。文芸、美術、音楽芸術緒部門を抱合し、その基礎をなす。プラトン、アリストテレス以来美を解明する理論はいくつか表されたが、「美学」として哲学体系の一部門に位置付けられたのは,18世紀ドイツの哲学者A・Gバウムガルテンによってである。(Astheticsを美学と訳したのは哲学者井上哲次郎である。)彼は「美学は感性的認識の学である」と定義し、合理主義の美学を述べた。カントは芸術を認識と道徳との仲介者たらしめ、美学を哲学体系の中心的位置に押し出した。これをうけたシラーやあるいはヘーゲルも、美の理想とその形式をも論じ一方、ヘルバルトやツィンマーマンらは、美の原理を純粋な形式関係に認める実在論的美学をといた。19世紀後半には、科学的美学のおこり、近代心理学の方法をもって美と個人の美意識が分析され、原理が抽出されるにいたった。他方フランスやソ連では社会学的美学が起こり、社会現象として芸術を観察しようとした。また、芸術の具体的事実や客観的法則を研究しようという芸術学も主張され,美学に新しい刺激を与えた。20世紀になると、美学は新しい哲学的方向をとる。ニコライ・ハルトマンの美学は最近における唯一の体系とされ、独自の存在論的立場に立ち、対象の方面から美の構造を解明している。そして今日では、フランスとアメリカが美学について活発な研究を行っている。

美学が論ずる美には、<1>客体そのものの性質や関係としてとらえる対象美学、我々自身の意識態度や印象としてとらえる作用(効果)美学、一種の価値や理念、本体として考察する価値美学などの別があり、いずれかに重点がおかれる。<2>美には自然美と芸術美とがあり、どちらに重きを置くかが問題となる。近代の美学はヘーゲル以来、芸術美を研究対象とするものが多いが、最近では、美学は美的存在の全領域を包含すべきものとする考え方もある。しかし、実際には、美が最も明確な形で現れる芸術が、その中心対象となることが多い。<3>従来の美学はだいたい美的享受或は観察をテーマとし、芸術創作が付属視ないしは度外視されていた。いわば享受美学にウェートがあり、創作美学は従となっているが、両者根本的同一性においてとらえられるべきとされる。

美学の方法は、哲学的方法と科学的方法とに大別できる。多様な美的現象は統一的な価値原理によって支配され、規範の見地から美的価値の成立の基礎や条件を考えようとするものが哲学的方法で、単なる経験科学の立場を超えて、哲学にその方法的基礎を求めている。これに対して、美的現象は常に現実的に依存するから、これを心理学や社会学の見地から、経験的実証的に研究しようとするものが科学的方法で、他の諸科学の応用部門であるとされる。しかし今日では、哲学的思索と科学的観察との間には緊密な関係があり、二つの方法を統合しようとする方向にある。

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演劇学

1977年版本誌掲載。以下、

元来はドイツ語のTheaterwissenschaftの訳語。19世紀末から20世紀初頭にかけて、当時のドイツでは、一般美術学が文芸学、音楽学、美術学その他に細分化されたことにより、美学とは別に美術学が提唱され、この名のもとに演劇学が起こった。演劇の学問的研究はそれ以前から存在したが、伝統的な演劇研究は対象を主として戯曲に限定し、従って文学研究に従属する傾向があったのに対して、演劇学は演劇をそれ自身独立した自立的な一般芸術とみなし、研究対象を戯曲に限定せず、演出、演技、装置、照明、音楽その他、舞台的諸要素にまで拡大し、演劇研究を文学研究から解放し、独立させようとしたのみならず、ドイツ演劇学においては演劇研究を文学研究と対立せしめようとする傾向すら顕著である。日本においてはドイツに倣って演劇の学問的研究を演劇学と呼ぶことが多いが、イギリスやフランスにおいては、これに類する名で呼ぶことはあまりない。早大、明大、日大などの私立大学には早くから演劇学専修が存在するが、国立大学としては大阪大に昭和51年度から始めて演劇学講座が開設された。

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文体学  stylologoe 仏

1988年版本誌掲載。以下、

作家の伝記や作品の成立事情などをことこまかにたどる実証主義的な文学研究に対し、作品(テクスト)そのものの文体(形式)を分析することにより、作品全体の構造、あるいは作品自身でさえ意識していないかもしれない内部構造を解き明かしていこうとする手法をいう。フランス文学研究者の篠沢秀夫は「作品は作品として読む」、「作品そのものから、じかに読みとることなら、フランス人よりよく見透せる部分さえあるのではないか」と言い、文体学によるテクスト(作品)の読みの優位性を説く。1970年代日本で注目され始めた文体学は、60年代の後半フランスに興った構造主義批評に負うところが大きい。今日ますます大きな影響力を持ちつつあるこうした研究動向(構造分析)が作品の持つ可能性をどこまで開示するか、しばらく時間をかけて見る必要がありそうである。

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