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結婚事情の今昔を知るための用語集
 

結婚をめぐる法律や制度

結婚退職制

1978年版本誌掲載。以下、

女子は結婚したら自動的に退職させる企業の制度を結婚退職制、同じく子供を出産したら退職させるものを出産退職制と呼ぶ。労働省昭和51年の調べでは、従業員30人以上の企業で結婚、出産退職制があるところが8%となっている。

結婚退職制について、判例は、男女平等の視点からだけでなく婚姻の自由を制約する点で民法90条に定める公序良俗違反行為として無効とし(最初の判例は住友セメント事件東京地裁41・12・20)、出産退職制についても脱法行為と判断(三井造船事件大阪地裁46・12・20)している。

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国際結婚適用法改正試案

1989年版本誌掲載。以下、

国際結婚・離婚や国際養子縁組など外国人が関係した裁判に、どこの国の法律を適用するかを定めた「法令」を見直そうというもの。現行では夫や父親の本国法を適用するとしており、男性中心主義が強い。それを、夫婦間では夫婦の住む国、親子間では子どもの本国(または子どもの住む国)の法律を優先することにしている。今回の改正法が行われると、例えば、協議離婚を認めていない国の国籍を持つ外国人の夫と日本人の妻が日本に住んでいる場合、現行法では夫の本国法に従って裁判離婚しかできなかったのが、日本の法律に従って協議離婚が可能になる。逆に日本人男性が外国人女性と結婚し、海外で生活している場合には、これまでの日本の法律に代わって外国の法律が適用されることもある。

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新婚家庭家賃補助制度

1991年版本誌掲載。以下、

人口の減少と区民の高齢化に悩む東京都台東区が1990(平成2)年10月から月額最高5万円の家賃補助をする制度。対象となるのは、90年度中に結婚または結婚の予定があるカップル。夫婦がいずれも40歳未満で、かつ夫婦の年齢の合計が70歳未満に限る。民間の賃貸住宅に住み、夫婦の年収の合計が、800万円程度までが条件。補助額は家賃が5万円以上6万2500円未満まで月額1万円で、それ以上の場合は、7500円家賃が上昇するごとに5000円上乗せする。抽選で、今後5年間で合計1000組に5年間支給する。

新婚家庭向けの住宅補助では大阪市がマンション購入用の低利融資などを実施しているが、直接家賃を補助するのは全国でも初めてといわれる。

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再婚禁止期間違憲訴訟

1992年版本誌掲載。以下、

1989(平成1)年3月広島県の夫婦が、女性が離婚6カ月後でないと再婚できないことを定めた民法733条は女性差別であり、法の下の平等、婚姻における男女平等などを定めた憲法違反であるとして、国に100万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴。91年1月、判決は「父子関係の確定を容易にするのが立法趣旨で、合理性がないとはいえない」「家族関係の明確化という国家の重要な政策からみて軽視すべきものでなく」と訴えを棄却。高裁も91年11月棄却。民法772条2項は結婚201日以後に生まれた子は現在の夫の子、離婚後300日以内に生まれれば前夫の子と推定している。したがって父親がわからないのは最大100日間で、父親確定のための再婚禁止は100日でよく6カ月の根拠はない。また現代は医学の進歩で妊娠の有無の早期判定、遺伝子鑑定による親子鑑定も容易である。民法733条は明治31年施行の古い規定がそのまま残っている“冷凍”規定。法制審議会では見直し課題にのぼっている。

なお772条の嫡出推定も、母親の意思を無視し、前夫優先の女性差別的なものという批判がある。再婚禁止期間はドイツが10カ月、仏・伊が300日、韓国6カ月などである。

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非嫡出子の差別(婚外子差別)廃止

1993年版本誌掲載。以下、

両親が婚姻届を出している子どもは「嫡出子」、そうでない場合は「非嫡出子」と民法で区別されている。戸籍には、嫡出子は「長男」「長女」と記載されるが、非嫡出子は「男」「女」(住民票では「子」)としか書かれない。

法務省は1980(昭和55)年「民法改正要綱試案」で、差別条項を撤廃することにしていたが、自民党の働きかけや世論調査結果などを理由に、法案化されなかった。しかし事実婚の増加や基本的人権の観点、諸外国での差別撤廃の動きを受け、「婚外子差別と闘う会」(大阪)などが生まれ、出生差別の法改正を求める動きがある。

住民票続柄裁判(東京)など、異議申立てのケースも起きており、「子供の権利条約」では出生差別の禁止がうたわれている。

なお、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1と定めた民法900条4号但書は憲法14条などに違反するという訴えが東京の一女性によっておこされたが、1審、2審で棄却、最高裁に特別抗告の申立てがされている。

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結婚(婚姻)最低年齢

1994年版本誌掲載。以下、

民法731条で規定している婚姻できる年齢は、男は満18歳、女は満16歳である。年齢差のあることに合理的理由はなく、男女不平等という声は、1985(昭和60)年の女性差別撤廃条約批准以来あったが、民法(改正案)見直しの中でも課題になっている。中間報告は、現行法制度支持と、男女とも18歳ただし親権者の同意または家裁の許可を得たときは満16歳でも結婚できる、の両論併記である。18歳説の根拠は、高校進学率が95・9%(92年)という現実や、子どもの権利条約に「子どもは18歳未満」と規定していることなどがある。児童福祉法でも18歳未満を対象としている。一方、18歳未満で結婚する女性は年間約3000人いる。

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婚姻制度等民法改正要綱試案

1995年版本誌掲載。以下、

法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会では、身分法小委員会において婚姻・離婚に関する制度全般や嫡出でない子の相続分に関する制度の見直しの作業を行っているが、これらは国民生活に重大な影響を及ぼすものであるため、関係各界の意見を聞くことが相当であるとされ、法務省民事局参事官室が審議結果の大綱をとりまとめて、「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」を作成し、その説明とともに、1994(平成6)年7月12日、公表した(それらのうち、「夫婦の氏」については「夫婦別氏」、「嫡出でない子の相続分」については「非嫡出子相続分差別合憲決定」)。

法務省は、各界への意見照会の結果をまとめ、95年8月18日に発表した。全国の裁判所、弁護士会、研究者、女性団体、経済団体、個人など782通の意見を分析したところ、夫婦別氏容認が多数を占めた。

法制審議会民法部会は、これらを参考にしながら、同年9月12日、中間報告をまとめた。その中で、夫婦の氏、子の氏の変更、既婚夫婦への適用、離婚訴訟の原因などについて、改革の方向を示した。

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