月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
ドミノなお話の用語集
 

自殺の連鎖

群発自殺

連鎖反応による自殺、集団自殺、自殺名所での自殺の三つを群発自殺という。アイドルの自殺に影響されて、多くのファンが自殺をしたり、いじめ自殺報道が大きく取り上げられた後に流行のように中高生の自殺が増加する現象もそのひとつ。

「群発自殺 流行を防ぎ、模倣を止める」などの著書のある精神科医で防衛医大医学研究センター(埼玉県所沢市)の高橋祥友(よしとも)教授は「個人的に知っている人が相談を受ければ自殺を止めようとするが、自殺願望を持った人ばかりが集まれば、逆に願望が強まる。一連の自殺は負の情報まで簡単に共有できるネットならではの現象だ。自殺志願者の相談を受ける組織を紹介するなど、どうすれば救えるかをマスコミは伝えるべきだ。また、悩みを相談できるような自殺予防サイトが増えるのが好ましい」と訴える。

ページの先頭へ 戻る

岡田有希子自殺事件

1987年版本誌掲載。以下、

人気絶頂の18歳のアイドル歌手、岡田有希子が4月8日、事務所のある東京・四谷の7階建ビル屋上から投身自殺した。華やかに笑いながらテレビで歌をうたっていたアイドル歌手が、ふいに自殺してしまったというので、ショックをうけた少年少女が多く、連鎖反応のように自殺が目立った。この4月、全国で自殺した少年少女は約40人。マスコミは、「岡田有希子現象」と名づけて騒いだが、過去にも似た現象として、明治36年の一高生、藤村操の華厳滝投身自殺事件とか、昭和8年の実践女学校専門部学生、真許三枝子の三原山投身事件などがある。ともに、一種の「ウエルテル現象」がおこって投身自殺が流行するが、たとえば“三原山行き”などは、改めて調べてみると岡田有希子の比ではない。真許三枝子が三原山で投身自殺したのは、昭和8年1月9日だが、この年だけで、なんと男804人、女140人、計944人もの若い人々が、同じように三原山の噴火口に身を投げて死んでいる。若い人々の自殺そのものの数はもっと多い。こう見てくるとマスコミで騒いだような「岡田有希子現象」は雲散霧消してしまう感じがする。テレビの影響力は、旧来の活字メディアより迅速、且つ、強力であるが、かつてマクルーハンが言ったように、人々をクールにさせてしまうような一面があるのだろう。

ページの先頭へ 戻る

hide自殺事件

1998年に人気ロックバンドX-JAPANのメンバーhide(本名・松本秀人)が自殺すると、ドアノブにタオルをかけて首を吊るという同じ方法で14歳の少女が自殺を図ったのをはじめ、3人が後追い自殺し、メンバーによる後追い自殺防止の緊急記者会見まで行われた。98年度の公立小中高生の自殺者は前年度に比べ44.4%増加し、岡田有希子の後追い自殺が増えた86年以降、最も多い自殺者数となった。

ページの先頭へ 戻る

「ネット自殺」連鎖事件

2004年版本誌掲載

インターネットで知り合った、見ず知らずの人たちが、誘い合って集団自殺を図るネット心中が、まさに流行現象。ネット自殺報道に、ネットに心中相手を求める書込みも増え、自殺願望の強いもの同士がインターネットで結び合う。そして負のエネルギーを一挙に高めて、事務的に悲壮感もなく死んでいく。自殺の手段として心中の相手を求め合う。2003(平成15)年にはいってすでに12件(未遂2件)、30人が死亡(6月15日現在)。2月11日に埼玉県入間市のアパートの一室で、男性(26)のよびかけで24歳と22歳の女性2名が加わり、3人で自殺したのを発端に、3月には三重、山梨、徳島、4月には千葉、佐賀、5月には群馬、宮城、京都と連続して発生。アパートや車の中で練炭や七輪を焚き、一酸化炭素中毒で死亡するのが典型。ほとんどが20〜30代。埼玉のケースで男性は、インターネットの掲示板で「心中相手」を募集。「年齢は問いません。やっぱり独りだと寂しいですからね」と。亡くなった3人はいずれも失業中だった。

インターネットには「自殺」を扱ったホームページが多数あり、「予防」情報よりも自殺方法を解説するホームページのほうが圧倒的に多い。事件後、「心中相手の募集禁止」をうちだすサイトが多いが、募集は増えている。なお、ネット自殺は02年10月、東京都練馬区ですでに起きている。

ページの先頭へ 戻る

韓国のネット自殺の連鎖

お隣の国、韓国の自殺率は2004年のOECD(経済協力開発機構)加盟29カ国中4位(日本は3位)で、過去10年の増加率は加入国のなかで最も高かった。韓国では00年末から、インターネット上の「自殺サイト」で知り合った人たちの心中や嘱託殺人が相次ぎ、問題になっていたが、世論の批判や警察庁の「サイバー捜査隊」により自殺サイトは一時閉鎖させられた。しかし02年には、代わりに増えた「自殺防止サイト」に集った人同士で、30代の男性1人と女子高生2人が飛び降り自殺、男性3人が排ガス自殺、男性2人が服毒自殺などネット自殺のニュースは続き、チャットで知り合った女性に母親の殺害を依頼された男子高校生が実際に殺害におよび、逮捕されるというショッキングな事件まで発生した。

ページの先頭へ 戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS