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ドミノなお話の用語集
 

政治の連鎖

ドミノ理論  Domino Theory

1966年版本誌掲載。以下、

将棋倒しの理論というのに近い。ドミノ遊技ではサイの目の同点を、となり合わせに、早く並べおわるのが勝ちであるから、一地域が仮りに赤化すれば、その隣接地域も赤化の危険性が多くなると主張するもの。最近東南アジアの紛争で、南ベトナムが共産勢力の手に落ちれば、タイ、カンボジアその他の諸国も共産化するおそれが多いという説明を、このドミノ理論という言葉で形容する。

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逆ドミノ理論

1969年版本誌掲載。以下、

ドミノ理論に対する理論。中共の文化大革命で、中共が近隣諸国に強硬な外交政策を展開してから、それまで中共とは関係のよかったビルマやインドネシアが中共から離反する傾向を見せたことなどがこれである。

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新ドミノ理論

1976年版本誌掲載。以下、

ベトナム戦争の末期、1975年春に、北ベトナムと解放戦線の攻勢に対し、アメリカ内にチュー政権に緊急援助を与えるべきだという議論があった。その論拠は、5万6000人のアメリカ兵の生命と1500億ドルを注ぎ込んだ南ベトナムの援助を中止し、友邦を放棄するならば、世界各地の他の友邦・与国を危険にさらす。南ベトナムが倒れることは、アメリカの信頼まで将棋倒しになるので対外防衛会議の遂行に全力を尽さねばならないというもの。この議論は新ドミノ理論と呼ばれ、これに対する批判者は新孤立主義者といわれた。

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中米ドミノ理論

1983年版本誌掲載。以下、

レーガン政権の対中米・カリブ政策の前提をなす「理論」。キューバ革命(1959年)に端を発し、ニカラグァでも79年に革命側が勝利。両国の軍事援助によってエル・サルバドルに左翼政権が樹立されれば、革命はグァテマラ、ホンジュラスにも波及し、パナマ運河をも巻込んで、「合衆国にとって死活的重要性をもつ戦略的通商的大動脈」を共産主義勢力によって断切られてしまうことになるというのである。

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民主化のドミノ現象

1991年版本誌掲載。以下、

将棋のコマ(あるいは西洋かるたの札)のひとつが倒れると、次々に他のコマを倒していくように、ある国またはある地域が民主化すると次々に波及して、他の国または地域が民主化していく現象のこと。1973年にギリシャ、74年のポルトガルなど南欧の民主化が始まってから、南米諸国、ついでアジアへと波及し、いくつかの国で独裁政権や軍事政権が倒されていった。さらに、ソ連のペレストロイカに始まって、ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、東ドイツ、ルーマニア、ブルガリアへと次々に民主化の波に洗われている。

ソ連・東欧での「民主化のドミノ現象」は、西欧や日本の左翼や社会主義政党にも影響をおよぼし、党名のあり方を問うまでになっている。ソ連のペレストロイカを基点として、共産党↓社会党↓社会民主党という「イデオロギーの玉突き現象」も世界的規模で展開している。「民主化のドミノ現象」も、「イデオロギーの玉突き現象」も、急速に進む経済面での相互依存関係や情報化のうねりが背後に存在する。アメリカのアイゼンハワー政権時代から、南ベトナムの共産主義化が東南アジア諸国に波及し、次々に共産主義化してしまうとの「共産主義化のドミノ現象」理論がいわれたが、今日では反対の現象が起きている。

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逆ドミノ現象

1991年版本誌掲載。以下、

ドミノとは将棋の駒のこと。ベトナム戦争当時、アメリカ政府はもし南ベトナムが共産化すれば、全東南アジア諸国が将棋倒しのように共産化する恐れがあると主張し、自らのベトナム戦争政策を正当化した。カンボジア、ラオスが共産化したことを除けば、この見通しは当たらなかったが東欧ではポーランドが非共産化した後、ハンガリー、東ドイツ、チェコスロバキア、ブルガリア、ルーマニアと将棋倒しのように非共産化現象が起こった。その衝撃はもともとソ連圏には属していないユーゴスラビアやアルバニアにも及ぼうとしている。その原因は、東欧諸国の共産党政権がソ連の軍事力によって支えられていたために、ソ連がブレジネフ・ドクトリンを放棄したことが明らかになったときに、次々と共産党政権が崩壊したことにあるが、同時に共産主義のイデオロギーが風化してソ連圏外でも支持を失っていたことにある。

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中東「核ドミノ」論

1999年版本誌掲載。以下、

1998年5月のインドとパキスタンの核実験を契機に、中東への核兵器拡散が強く懸念されている。パキスタンは以前から他のイスラム教国の経済援助を得て「イスラムの核」開発に取り組んでいるとの疑念をもたれていた。また、湾岸戦争前にイラクが核兵器開発に取り組んでいたことが国連特別委員会(UNSCOM)の調査で明らかになっている。このためパキスタンの保有をきっかけにイランなど中東における核兵器開発競争が一気に顕在化する危険が高いというのが「核ドミノ」論である。とくに「事実上の核保有国」といわれ、100から200発の核弾頭を有していると見られるイスラエルの核拡散防止条約(NPT)不加盟が問題視されている。しかし、アメリカはイスラエルの核問題については沈黙を守っており、イスラム諸国やアラブ諸国はアメリカの姿勢を「二重基準(ダブルスタンダード)」と批判している。

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軍拡ドミノ

2000年版本誌掲載。以下、

インドが中国に続いて1974(昭和49)年に核実験をし、80年にミサイル開発に着手、それをパキスタンが追うといった将棋倒し的核拡散。パキスタンが、1999年4月14日、新型中距離弾道ミサイル・ガウリ IIの発射実験に踏み切り、核とミサイル開発でインドに譲らないという姿勢を示した。

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農畜産物自由化ドミノ理論

1984年版本誌掲載。以下、

日米貿易摩擦の焦点は牛肉、オレンジの自由化について、アメリカの完全自由化要求に対して、どこまで日本側が譲歩できるかにある。この点について、農業関係者、自民党農林族の間にドミノ理論についての共通認識があるという。それは、万一、牛肉、オレンジを輸入自由化すれば、アメリカが次に迫ってくるのは米であり、米に火がつけば農村はパニックになるという波及効果である。また、選挙を控えた農林族にとって、農畜産物の自由化は自民党の大票田である農村の票を減らすという危機感でもある。

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