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世代交代のキーパーソンからキーワード
 

歌舞伎

2001年の十代目三津五郎襲名から始まり、最近の歌舞伎界は襲名ラッシュと言われている。役者に次々に名跡を継がせ、その度に襲名披露公演をするというサイクルが生まれているが、これが今後の歌舞伎界にとってプラスになるかどうか、疑問視する声は多い。襲名披露は歌舞伎興行を盛り上げるための大切なシステムなので、“乱発”による飽和状態にさせないことが重要ではなかろうか。

襲名

親の名や由緒のある芸名などを継承すること。「襲」の字に「かさねる」という意味があり、代を重ね、名を名乗るため襲名という。江戸時代の商家でさかんにおこなわれたが、歌舞伎が裕福な町人たちの支援を受けていたため、襲名や屋号(片岡仁左衛門の松島屋、松本幸四郎の高麗屋など)の習慣で影響を受けた。

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片岡仁左衛門

十五代目。屋号は松島屋。1944年、大阪生まれ。父は十三代目仁左衛門。1949年、大阪・中座にて本名の片岡孝夫で初舞台。「女殺油地獄」の与兵衛が出世芸となり、坂東玉三郎との孝玉コンビで幅広い人気を博す。テレビや映画、「ハムレット」などの舞台でも活躍。93年に一年間病気休演したが克服、94年1月に舞台復帰。1998年1・2月よりの襲名披露公演で、十五代目片岡仁左衛門を襲名。

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坂東三津五郎

十代目。屋号は大和屋。1956年生、東京出身。本名・守田寿(ひさし)。父は九代目三津五郎。1歳2ヶ月にて明治座で初御目見得、1962年、歌舞伎座にて初舞台を踏み、五代目坂東八十助を襲名。以来、歌舞伎のみならず、映画・テレビや外部の舞台作品にも出演。芸術選奨文部大臣新人賞や真山青果賞などを受賞。2度の離婚など私生活が注目をあつめた時期も。2001年1月、十代目三津五郎を襲名、2005年までつづく襲名ラッシュの先陣を切った。

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尾上松緑

四代目。屋号は音羽屋。1975年生、東京出身。本名・藤間嵐。父は初代辰之助(40歳で急逝。三世松緑を追贈)。1981年、二代目尾上左近を名乗り、初舞台。87年の父の急逝以後は、名優とたたえられた祖父・二世松緑(人間国宝)の薫陶を受ける。91年、二代目辰之助を襲名。「走れメロス」など、歌舞伎以外の舞台でも活躍。市川新之助、尾上菊之助とともに、「新・三之助」と称された。2002年5月、四代目松緑を襲名。日本舞踊の藤間流家元・藤間勘右衞門でもある。

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市川新之助

七代目。屋号は成田屋。1977年生、東京出身。本名・堀越孝俊。父は十二代目団十郎。1983年、歌舞伎座にて「源氏物語」の春宮役で初お目見得。85年には新之助を襲名。辰之助、菊之助の3人で、それぞれの父にならって新・三之助とよばれる。翻訳劇の舞台やCM、テレビなどでも活躍。2003年のNHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」に主演し、視聴率的には苦戦したものの、お茶の間にも知名度が広がった。2004年5月からの公演で十一代目海老蔵を襲名する。

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中村勘九郎

五代目。屋号は中村屋。1955年生、東京出身。本名・波野哲明。父は十七代目勘三郎。1959年、初舞台。NHK大河ドラマなど、テレビ出演にも精力的だが、かたわらコクーン歌舞伎、平成中村座や野田秀樹の新作歌舞伎など、従来の枠にとどまらない歌舞伎を模索している。2005年、十八代目勘三郎を襲名する。

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中村鴈治郎

三代目。屋号は成駒屋。1931年、京都生まれ。本名・林宏太郎。父は二代目鴈治郎。妻は扇千景。1941年、大阪・角座にて二代目中村扇雀を襲名し初舞台。1990年、歌舞伎座にて三代目中村鴈治郎を襲名した。上方歌舞伎のリーダーで、立役・女方を問わず柔らかみと色気、華のある芸を得意とする。「曾根崎心中」のお初などが代表作。94年、人間国宝。2003年10月には文化功労者に。2005年、四代目坂田藤十郎を襲名。藤十郎の復活はじつに230年ぶり。

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勧進元

なにかの催しなどを発起し、世話をする人。とくに芝居などの興行に関して用いられる。襲名は興行を仕切る勧進元が決定する。現在は松竹株式会社、とりわけ会長の永山武臣(1925年生、京大卒、文化功労者)に決定権がある。ゆえに襲名披露の口上で、役者はまっさきに永山の名を出して謝意を述べるのが習い。

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奥役

江戸時代、興行主に直属して、楽屋内のいっさいを取り仕切った仕事。現在はプロデューサーや松竹の重役がこれに当たり、襲名の根回しなどもおこなう。襲名は実力、人気などを総合的に判断して決めるが、先代の遺族や後援者、他の歌舞伎役者から合意を得るべく根回しするのが奥役のつとめ。序列・しきたりにうるさい世界のことゆえ、襲名披露発表後にクレームが出ると、興行自体に支障が出る。調整には細心の注意が必要で、少なくとも1年以上はかかるという。

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