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「2003年日本新語・流行語大賞」からみる〈流行り〉のキーワード
 

SARS(トップ10)

受賞者:該当者なし 

重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome)。38度を超す高熱、咳や呼吸困難などを主症状とし、肺炎による死亡例も少なくない感染症。原因は、SARSウイルスとよばれ、感冒などを起こすコロナ・ウイルスの変種によるものである可能性が高いとされる。潜伏期関は2〜7日で、死亡率は10%前後と高い。2003年2月下旬、ベトナム、香港などで患者が発生、さらに台湾、カナダ、ヨーロッパなど世界各地に広がり、「謎の新型肺炎」としておそれられた。後日、02年11月にすでに中国・広東省で大流行があったことが判明。ここから全世界に広がったことが確認された。情報提供に積極的でなかった中国衛生当局は国際的な批判を浴びた。WHO(世界保健機関)が03年3月12日に原因不明の肺炎が流行しているという警告を発してから100日の時点で患者数(可能性例含む)の累計は8465人、死者は801人に上った。

狂牛病

2001年 トップテン入賞

受賞者:一瀬邦夫(ペッパーフードサービス代表)

1986年にイギリスで発生が確認された狂牛病(牛海綿状脳症 BSE)が、ついに日本に上陸した。BSEは体内たんぱく質プリオンが異常型に変わり、脳がスポンジ状になって、起立不能に陥り、2週間〜半年で死に至る病気。潜伏期間は2〜8年。国民の牛肉離れが進むなか、ペッパーフードサービスでは店頭に「お願い 助けて下さい」の張り紙をしてお客に訴え話題となった。

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新感染症  New epidenic diseases

本誌1997年版

世界保健機関(WHO)は1996年の報告書で、1975〜95年の20年間に、エイズ、エボラ出血熱、O-157、狂牛病等約30種類の新感染症が出現したと指摘している。従来、コレラや天然痘等人類を襲って大量の死者を出してきた感染症は、抗生物質やワクチンの発達で、70年代には終焉したといわれてきたが、なぜ近年新感染症が激発してきたか、についていくつかの解釈がある。一つは、世界的な人口増加と開発進展で、これまで人界との接触度の低かったウイルスや細菌が新たな病気をもたらすケースで、エイズやエボラ出血熱がそれに当たる。第二は交通通信の発達で、局地的な病気が世界にひろがるケース。第三に、抗生物質等の抗体との接触で、細菌自体が環境への適応性を高め、進化したケースで、O-157はその例とみられる。第四に、検査技術の発達もある。だが、これらと同時に大量生産システムの下で病気がひろがりやすい狂牛病やO-157、また近年、世界的に貧困人口が増大し、感染症に脆弱な社会層がひろがっているエイズの例のように、社会的原因もかなりの程度影響していると見るべきだろう。

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コレラ

本誌1978年版

コレラ菌による激烈な消化管系の伝染病。嘔吐下痢がつづき、脱水状態となって死亡するが、予防接種がかなり有効。抗生物質ではテトラサイクリンが効く。東南アジアの熱帯、亜熱帯地域に常時患者がおり、日本では戦争の歴史と関係があり、明治35年の1万2000人、大正9年の4900人、昭和21年の1200人の患者発生があったが以後ゼロがつづいた。38年1人、39年2人は飛行機による海外からの患者であったがその後まだゼロがつづいたところ、52年6〜7月に和歌山県下に75人の患者、保菌者(内1人死亡)、東京に3人の保菌者が、さらに8月に入って和歌山県下に真性患者1人が発生し、パニック状態になった。ASEAN地域への旅行者激増の時代に改めて警戒を要する外来伝染病である。

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天然痘ウイルス

本誌1997年版

古代エジプトの時代から大流行を繰り返してきた、古典的伝染病の原因ウイルス。1980年、世界保健機関(WHO)が天然痘の撲滅宣言を出して以来、医学研究用として、アメリカとロシアの研究施設だけには同ウイルスが保管されていたが、96年5月、WHOは99年6月末にこの地球上に残る最後の天然痘ウイルスを処分する方針を採択した。これまで10数年にわたって、この残存ウイルスの処分をめぐる議論が繰り返されてきた。なお、ウイルス自体は処分するが、50万人分のワクチンと、ワクチンを製造するための弱毒化されたウイルスは保存される。

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非A非B型肝炎  non A non B hepatitis

本誌1991年版

A型でもB型でもない肝炎ウイルスによって起きる肝炎。ウイルス性肝炎はA型、B型についてはすでにウイルスが発見され、予防や治療法もほぼ確立している。ところが、A型でもB型でもないウイルスが何種類かあって、それが肝硬変や肝がんに移行しやすい、治りにくい肝炎の原因になっている。

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エボラ出血熱

本誌1994年版

ラッサ熱などと同様のウイルス性の風土病と見られ、エイズとそっくりの感染経路をもつ。症状はエイズの数倍も激しく、体の至るところから出血して、1〜3週間で70%以上が死亡する。ほとんどアフリカのザイール、スーダンの2カ国だけで発生していたが、1992(平成4)年、わが国でもザイール旅行者が帰国後に発症して死亡したことから、指定伝染病として緊急指定された。

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人食いバクテリア・劇症溶連菌感染症

本誌1995年版

1994(平成6)年5月ごろ、人の筋肉や血管などを急激に侵し、しばしば命まで奪う細菌感染症として、イギリスのマスコミなどでセンセーショナルに報道したため、わが国でも大騒ぎになったが、これはA群溶連菌(溶血性連鎖球菌)による感染症の劇症タイプのもの。この細菌はごくありふれたもので、かつては、猩紅熱やリューマチ熱などの原因として知られていたが、80年代に入ってから、高熱が出て筋肉に激痛が起きる劇症型の発生が相次いだ。1時間に2.5センチのペースで患者の筋肉組織や脂肪を“食べる”(広範な壊死が生じる)症状が起こり、24時間以内に死亡することもある。厚生省の調査によると、わが国でも86(昭和61)年以来約40人が感染、うち約30人が死亡しているもので、別にバカ騒ぎする珍しい病気ではない。突然変異で毒性の強い細菌が生まれたのか、患者の免疫系に原因があるのか、まだわかっていない。

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