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再び三たび流行する病気と健康の用語集
 

ふってわく健康法・健康用品

森林浴

本誌1984年版収録。以下、

「日光浴、海水浴ということばがあるなら、すがすがしい森の大気を一杯に浴びる『森林浴』があってもいいのではないか」ということで、昭和57(1982)年春、秋川智英林野庁長官が編み出したことば。マスコミに受けて、58年5月ごろから、ちょっとしたブームになっているが、特別な健康法があるわけではない。緑うっそうとした山奥の新鮮な空気を胸一杯吸って歩けば、だれでも健康的な気分になるが、もう一つ『フィトンチッド』と呼ばれる芳香性物質が樹木から発散し、これが人体に健康的に作用することがわかった。今から50年以上も昔に、ソ連・レニングラード大学のB・Pトーキン博士が「植物がキズつくと、自らを守るため、周囲の微生物などを殺す物質を出す」という現象に気づき、名づけたもので、フィトンとは「植物」、チッドとは「殺す」という意味。わが国に昔からある桜もち、柏もちなど植物のもつ減菌作用を知らずに利用していたものかもしれない。フィトンチッドは微生物には有毒でも、人体にはプラスに作用し、ちょっとした疲労やカゼは森にこもればすぐ治ってしまうということで、ヨーロッパでは森林療法が盛んである。さらに自律神経の働きを活発にして、頭の回転をよくする働きもあるとか。林野庁は57年7月から「森林浴運動」を提唱し、全国にある92カ所の国有自然休養林と167カ所の自然観察教育林を開放している。

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西田式健康法

本誌1987年版収録。以下、

「月見草でやせた」「水をだせばみるみるやせる」「インド秘食でやせる」など、京大医学部卒の西田博医学博士が提唱した健康法を本来いうのだが、真新しい健康法があるわけではない。むしろ健康法そのものよりも、無許可医薬品「電解カルシウム」など、厚生省の製造許可を受けない医薬品や健康食品、化粧品などを製造して売りまくったグループを総称して「西田式健康法」ということが多い。前記の著書は、これらの商品を販売するための1つの手段にすぎず、いわゆるバイブル商法といわれるもので、これらの本の末尾に紹介された店に行けば「電解カルシウム」などを購入できる仕組みになっていた。折りからの健康食品ブームに乗って、同グループの売上げは100億円を超えるとみられている。厚生省は電解カルシウムを売りまくっていた全国の薬局・薬店1411店に対して、昭和61年6月、行政処分の方針を決めた。

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塩ぬり健康法

本誌1995年版収録。以下、

1994(平成6)年初め、一部の女性誌やテレビが、塩で全身をマッサージする痩身法を紹介したのをきっかけに、爆発的に流行した。塩を塗り込むだけで肌あれ、しみ、しわが消え、肥満した部分が治ってやせる、さらには腰痛、便秘、アトピーまで治るということで、野菜スープ、ヨーグルトきのこに次いで天然塩がブームになった。塩そのものを直接、肌に塗り込むだけでなく、全身用シャンプー、基礎化粧品、入浴剤など、塩を配合した商品が続々と登場し、さらには蜂蜜、卵白、小豆、日本酒、牛乳などの食品を配合した美容用品も出現している。塩の主成分である塩化ナトリウムは、化粧品に配合するに当たって特別の制約はないため、効能もかなりオーバーな表現が多い。塩で肌がツルツルになるように感じるのは、マッサージによって血行がよくなり、一時的に引き締まったように感じるだけのこと。乱用すると肌を傷めて、黒ずんでしまうこともある。効果は心理的なものだけのようだ。

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健康機器ブーム

本誌1979年版収録。以下、

健康保持、体力づくりへの関心が強くなった時代を反映して健康機器が売れる。赤外線や紫外線を使った治療器、背骨を正しくする安眠夜具、美容のためのべルトマッサージ器、ペダルをふむ運動用固定自転車、室内ランニング台、室内懸垂など狭い家の中でスペースをとらず、忙しいサラリーマンや主婦がごく簡単に体力づくりができる機器がうけている。栄養のとりすぎで腹の出っぱり気味の人が多く、運動不足という自覚があることが健康機器ブームの源らしい。

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磁気治療器

本誌1984年版収録。以下、

磁石を用いて磁気の作用により血液の循環をよくしてコリを治す医療用具。昭和36(1961)年、薬事法施行令の改正のさい、正式に厚生省の審査を経て製品化されることになった。厚生省の認可したものは、その年度別に認可番号がつけてある。当初は指輪、腕輪、腰帯、マットレスなどが中心だったが、昭和40年代に磁気ネックレスが登場するに及びブームになった。小型で強力な磁力が開発されるにしたがって、製品もいろいろな形になり、50年代後半に入って、ピップエレキバンに代表される貼布式の磁気プラスターが出現し、磁気製品は第2成長期を迎えている。磁力の強さは、厚生省の基準によると500ガウス以上。強ければいいというものではなく、市場に出回っているものは、だいたい1500ガウス止まりである。

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健康肌着

本誌1986年版収録。以下、

明確な定義があるわけではないが、昭和31(1956)年に帝人が開発の化学繊維「テビロン」を素材にした、独自の編み方をした肌着をいうことが多い。テビロンは開発当初から、その保温力と透湿性が評価されていたが、ナイロンやアクリルに押されて伸び悩み、最近の健康ブームによって、その特性が改めて注目されるようになった。当初は医療用サポーターに用いられる程度であったが58年から独自の編み方を導入した「健康肌着」が売り出され、ゴルフなどの屋外スポーツ用の肌着として好評である。

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おしり清浄剤

本誌1987年版収録。以下、

痔をわずらっている人が、トイレットペーパーで患部をふくさい、紙にスプレーで一吹きして痛みをやわらげようというもの。スプレー容器に入っており、主成分はオイル。治療薬ではないが、紙の表面のざらつきがなくなり、痛みがやわらぐため、患部を清潔にすることができる。昭和60年夏以降、同種の製品が相次いで登場しており、温水洗浄便座と並んで人気商品になりそう。1回当たり10円程度ですむ経済性も魅力である。

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イアー・ウイスパー  ear whisper

本誌1991年版収録。以下、

アメリカ製の耳栓の商品名。1985(昭和60)年からわが国でも発売され、ことに最近は爆発的に売れるヒット商品になっている。1ケース300円〜500円で、これが年間300万ケースも売れるという。弾性発泡ポリマーでできた粘土状のものを指で細長くこねて耳に差し込むと、30秒ぐらいで膨らんで耳の穴をぴったり塞ぐようになる。人間の会話は聞き取れるが、騒音ことに機械音や金属音など不快な音を遮る効果が大きい。NASAでも採用しているというが、同種の耳栓が次々と登場している。楽器の練習、電車内のヘッドホンステレオ、拡声器の呼びかけ、犬猫の鳴き声など、街の騒音は一向に減らない。過密化をたどる都市生活の中で、今や耳栓は現代人の必需品になってしまった感じ。それと、外部とのコミュニケーションを断とうとする現代人気質も大きく影響しているようだ。

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