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戦争は止めましょう!というために知っておきたい単位と基準
著者 白鳥 敬

戦争は止めましょう!というために知っておきたい単位と基準

テロリストが使うかもしれないダーティーボムの怖さを数字でいうと…

アルカイダのテロリストは、ダーティーボム(dirty bomb)と呼ばれる放射能爆弾を計画していたという情報がある。これは、核爆弾のように大規模な破壊を行うものではなく、爆発によって爆弾の中に詰めた放射性物質を撒き散らすものだ。

放射性物質には、セシウム137が使われるという。セシウム137は病院などで放射性治療に使われるほか、原子力発電所でも核分裂の際に生じている。セシウム137を撒き散らすと、金属と結合し、建材や土壌に長くとどまる。半減期は30年だ。つまり、ひとたびダーティーボムを使われると、その都市は何十年にもわたって人の住めない街になってしまうのだ。また、住民はガンを発症し、苦しむことになる。

半減期というのは、放射線を出す原子核の数が半分になり、放射線の強さが半分になるまでの時間のこと。プルトニウム239の半減期は2万4000年、ウラン238の半減期は、なんと45億年。

この他、米軍などが持つ劣化ウラン弾も、ダーティーボムと同様の効果を持つ。劣化ウラン弾とは、原発用の濃縮ウラン製造工程で得られる劣化ウラン(ウラン238)を弾頭にするもので、重いので貫通力に優れるが、爆発の際に放射性物質を撒き散らす。湾岸戦争では、320トンもの劣化ウラン弾が使われたという。

地球環境や人類を破滅に追い込むような武器を使うというのは、あまり賢いことではない。

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爆弾の破壊力はどう表す?

「広島型原爆(12.5キロトン)は、TNT火薬にして1万2500トンの威力を持つ」というようないいかたをする。爆弾は、爆発によって発生する衝撃波で周囲のものを破壊することを目的とした兵器だ。衝撃波(shock wave)とは、ひらたくいえば音速を超えるときに発生するドカーンという音だ。衝撃波は、爆発点を中心として発生し、距離が離れると衝撃ではなく、ただの音波として伝わっていく。この衝撃波が音波に移行する地点までの距離を限界距離という。

TNT火薬10kgが爆発したときの限界距離は7.5m。1000kgのときは33m。

12.5キロトンの広島型原爆では、爆心から半径300-400mの範囲が衝撃波でこっぱ端微塵に吹き飛んだはずだ。広島の原爆は上空580mで爆発しているし、衝撃波のほかに高熱や放射能による被害もあるから、実際の被害は、TNT火薬換算の計算値よりももっと被害は大きいだろう。

なお、TNT火薬の爆速は、毎秒6900m。時速にすると24840km、マッハ20の超音速だ。

なんとも恐ろしいことで、こんなものにお目にかかるのは遠慮させていただきたいものだ。

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核兵器が人間に与えるダメージ

核兵器で怖いのは、放射能だ。放射能と一般にいうが、放射能は放射線を出す能力のことで、怖いものの実体は放射線。放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線、中性子線などがある。アルファ線やベータ線は透過力が弱いが、ガンマ線・X線・中性子線は透過力が強く人体に影響を与える。

被爆量の目安となるのがシーベルト(Sv)という単位。人体に吸収された場合、与える影響が放射線によって異なるので、それぞれに係数が決められている。ガンマ線やX線は係数が1だが、中性子線は20もある。

自然界から浴びる年間被爆量は、2.4ミリシーベルト、胸部レントゲン写真の被爆量は、0.1ミリシーベルト。原発周辺では、0.001-0.05ミリシーベルトだ。人体に影響が出るのは、250ミリシーベルトを超えてからだ。500ミリシーベルトで白血球が減少、3000ミリシーベルトで頭髪が抜け始め、7000ミリシーベルトを全身に浴びると死亡する。1999年の東海村のウラン加工工場における臨界事故では、作業員の一人は17000ミリシーベルトの放射線を浴びて死亡した。

核は、人類が触れてはいけないものだったのだろうか。

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エシュロンの性能はいかほど?

エシュロン(Echelon)とは、アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランドの5カ国で構成される世界的な盗聴組織。世界中の電話・ファックス・無線通信のほか、インターネットの電子メールなど、全世界で行われている通信の90%以上、一日約30億件の通信を自動的に傍受して、キーワードを使ってリアルタイム検索しているという。

しかし、このSFのようなシステムは、計画どおりに機能しているのだろうか。傍受した30億件がすべて電子メールだと仮定して、電子メール1本あたりの平均データ量を5キロバイトとすると、総データ量は約15テラバイト。ちなみにインターネットの検索エンジンGoogleは、16億件以上のURLのインデックスを1秒以下で検索できるから、15テラバイト程度のデータから目指す情報を探し出すのは、別に難しいことではない。

しかし実際は、ノイズ(不要な情報)が多すぎるし、音声認識は現在のところ決して完璧ではないから、運がよくない限り有用な情報は得られないだろう。アメリカ政府が、N.Y.テロを事前に確実に予測できなかったのは、エシュロンのような傍受システムに頼りすぎたことが原因とも言われている。やはり、スパイは、命をかけて現場に潜入しなければねぇ。

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暗号強度の単位

見えない戦争の一つが、通信にかけられる暗号だ。外務省の外電など、重要な国家の連絡はすべて暗号化されて送られる。暗号がかけられれば、敵方はそれを解こうとする。この暗号をめぐる戦いは、昔からずっと続いている。

現在は、インターネットの時代になり、国家だけでなく一般企業や個人までが暗号をかけて通信を行うようになってきている。「いや、おれはそんな面倒なものを使ったことがない」という人もいるかもしれないが、たいていの人は知らないうちに使っているはずだ。インターネット・エクスプローラーなどを使ってホームページを見てるとき、ときどき、右下か左下に、鍵のアイコンが表示されていることがある。このとき、暗号化されたデータで通信しているのだ。

このときの暗号化の強度を、128ビットとか64ビットという形で表している。インターネット・エクスプローラーのバージョン情報を見てみると、そこに「暗号強度128ビット」などと書いてあるはずだ。

これは、インターネットで使用しているSSLなどの公開鍵暗号方式で暗号化する鍵の長さを表すもので、長いものほど暗号強度が高い。

鍵の長さがnビットなら、2のn乗個の鍵がつくれる。56ビット長の鍵の数は、2の56乗、128ビットでは2の128乗個となり、鍵の長さが長いほど解読されにくい。

 最新版のインターネット・エクスプローラーは、128ビットの暗号強度を持っている。しかし、「絶対安心か?」と言われるとそうでもないのだが…

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赤外線暗視カメラは夜間作戦に必須

米軍のアフガニスタン攻撃で、夜間の攻撃の模様がテレビで放送された。モノクロ画面で解像度はあまりよくないものの、昼間と同じように、建物が映し出されている。これは、赤外線を用いた暗視カメラによる映像だ。

赤外線は、可視光でもっとも波長の長い赤色の光(波長770ナノメートル[nm])よりも長い波長の電磁波をいう。770ナノメートルを昔風の単位で言うと、7700オングストローム(Å)。Åは国際単位系(SI)には属していないが、分光学で使用されている単位である。

長い波長の光は大気中での散乱が少ないので遠くまで届く。また、赤外線は目には見えないが、物体からは赤外線が出ているのでこれに感光させて夜間でも撮影することができる。さらに、赤外線ライトを当てて赤外線に感光するフィルムやCCDカメラを使えば、真っ暗闇でも撮影することができる。軍の夜間作戦には暗視カメラや暗視ゴーグルが欠かせない装備だ。

われわれ一般人も、赤外線を活用することができる。CCDカメラの一部には、赤外線の波長に高い感度を持つものがあるので、デジカメによっては、懐中電灯に写真用の赤外線フィルターを着けて対象物に照射することで、暗闇でも鮮明な写真が撮れる。使用目的を誤らなければ、楽しい写真を撮ることができるだろう。

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レーダーの電波はどれくらい強力か?

現代の戦争で欠かせないのがレーダーだ。レーダーは、アンテナから波長の短い電磁波を出し、対象物に当たって反射してくる電波を捉えて、距離・方位・移動速度などを知る装置。強力な電磁波を出すため、人体への影響があり、アンテナの至近距離の危険な地域は、立ち入りが禁止されている。アメリカでレーダーが普及し始めた頃、レーダー係の兵隊は、頭の中でレーダーの音が聞こえたという。これをマイクロ波聴覚効果という。このような状態に長時間いることは危険である。

ところで、電磁波の人体への影響については、SAR値(組織質量あたりの比エネルギー吸収率)が定められている。単位は、W/kg。1MHz-10GHzまでの電磁波が対象だ。これによると、SARが4W/kgを超えると人体に影響があるとされている。

気象レーダーや航空路監視用のレーダーは、山の上にあるので、SAR値から言っても人体に影響はない。軍用のレーダーは最大出力が1MW(メガワット)と大きいが、こちらも、人里離れたところにあるのでまず心配はいらない。

注意しなければならないのは、戦闘機などに搭載されている火器管制用レーダーだ。これはアンテナの開口面積が小さく出力が大きいため、ビームを絞った電波が出るので近くに人間がいると危険だと言われている。もちろん、自衛隊では、人に影響が出ないように運用しているからまったく心配はない。

最近は、携帯電話にもこのSAR値が示されている。携帯電話の場合は、局所SAR値が使われ、これは総務省の「電波防護指針」で2w/kg以下と定められているが、各社の携帯電話は、0.5-1W/kg程度だ。

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不審船の速度は?

―― もっとも速い船は?

日本近海に出没していたいわゆる不審船(北朝鮮のものと判明)は、みかけは漁船に見えるものの、35ノット(時速65km)以上の速度が出る高速船だった。そこで海上保安庁では、これに対抗するために、40ノット(時速74km)以上の速度が出る特殊警備艇を、海上自衛隊は45ノット(時速83km)の高速ミサイル艦を急遽建造した。どちらも、海水を噴射して走行するウオータージェット方式のエンジンを搭載している。

時速65kmと時速83kmの争いというのは、自動車で時速100Km走行を日頃から体験している私たちからみれば、大したことのないレベルに見えるかもしれないが、それは大違い。水上の速度感覚は陸上とはかなり異なる。ましてやこの種の艇は静水面ではなく、波の高い洋上を走る。参考までに他の舟艇のだいたいの速度を示すと、通常よく使われる速力は16〜20ノット。原子力船むつが17ノット、駆逐艦で30〜33ノット。救難艇、内水面のパトロールボートなど急を要する艇で30ノット以上出すのもある程度。

ちなみにノット(kt)は、ヤード・ポンド法の速度の単位で、1ノット=1時間に1マイル走る速さ。マイルには、陸マイル(mil)と海マイル(海里:nm)の2つがある。もちろんノットの場合は、海マイル(1nm=1.852km)の方を使う。だけど、陸を走る車の速度は、陸マイル(1mil=1.609km)。ただしアメリカの話。

 距離や速度について、単に「何マイル離れてる」とか「速度は何マイル」などというが、使われている状況に応じて、陸マイルと海マイルを区別してkmに換算しないと、おかしなことになってしまう。

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空に渋滞はあるか

日本の空は、航空機の往来が極めて多い。とくに首都圏、中部、関西では、国際空港もあるので、交通量は非常に多い。また、民間機のほか、自衛隊機や米軍機がたくさん飛んでいる。うっかりしてるとニアミスが発生し、最悪の事態にもなりかねないので、いろんなルールをつくって、空の渋滞の解消につとめている。

一つが、飛行高度。針路360度から179度のどれかの針路で飛ぶ飛行機は奇数高度、180度から359度までの範囲で飛ぶ飛行機は偶数高度で飛ぶことが決められている(針路とは:北の方角を0度として、時計回りに東90度、南180度、西270度)。たとえば針路90度で東に向かっている飛行機は、5000フィート、270度で西に向かっている飛行機は、6000フィートという具合だ(1フィート[ft]=0.3048m)。

また、ジェット旅客機は航空路と呼ばれる決められたルートを飛行するが、同じルートで2機が同じ方向に飛んでいる場合は、最低でも、その飛行速度で3分間または5マイル(nm)の間隔をとることになっている。(この数値は、飛行速度やその他の条件によって変わる)。また、他機との横の間隔は、レーダーで管制している場合、最低3マイルだ。

ただし、パイロットが自分の目で外を見て、自分の判断で飛ぶ有視界飛行の場合は、両機のパイロットが危険な距離と思わなければ、ぎりぎりまで接近することができる。

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滑走路の強度はどれくらい?

ジャンボ旅客機が離陸するときは、400トン近い重さだ。この重さを滑走路は支えなくてはならない。また、着陸するときは、286トンくらいだが、着陸の場合はドスンと滑走路に脚を着けるので、滑走路面に大きな力がかかる。

そこで滑走路は、運航する航空機の重量に十分耐えるだけの強度が持つようにつくられている。滑走路の強度は、ACN-PCN法という方法で表示される。ACN(Aircraft Classification Number)というのは、飛行機が、標準とされた強度の滑走路面に及ぼす影響を数値で表したもの。PCN(Pavement Classification Number)は滑走路面の強度を数値で表したものだ。ACNの数値は、飛行機の種類ごとに決まっていて、その数値がPCNの数値よりも強い滑走路で離着陸することができる。

なお、小型機用の滑走路では、AUW(全備重量)、SIWL(片車輪重量)で何kgまでという方式で強度を定めている。

しかし、ジャンボ機が離着陸するような強固な滑走路も、地盤沈下には勝てないようで、海を埋め立ててつくった飛行場は、どこも苦労しているようだ。

ちなみに強度が問われるのは滑走路だけではない。首都高速は「戦車の走行に耐える強度」といわれるが、すべての道路・橋梁がこの基準でつくられているわけではない。万が一の事態に、自衛隊の主力戦車・90式が50tの巨体を時速70kmで走らせれば、街中の道路がシッチャカメッチャカ…かもしれない。

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