月刊基礎知識
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危機管理はマニュアルから
―― マニュアル世代とはどの世代か
 

官製マニュアル

いじめの手引書

本誌1985年版収録。以下、

文部省は、昭和59年4月、生徒指導上の手引書として「児童の友人関係をめぐる指導上の諸問題」を刊行した。これは、陰湿な形でのいじめが学校現場に広がっている実態をふまえ、その克服方法を探ったもので、いじめを放置しておくと、被害児も加害児も人間形成の上で大きなゆがみが生ずる。したがって、いじめをなくすことが必要だが、そのためには、いじめの事実関係を正確につかみ、加害児と被害児の性格や環境を理解しながら、傍観をしている子を含めて、集団の中で指導していくことが望ましいとしている。そして、小学校段階で、教師が積極的な指導に乗出せば、いじめは十分に克服できると指摘している。

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登校拒否の手引き

本誌1985年版収録。以下、

school refusal。文部省は昭和59年4月、登校拒否児についての対応策をまとめた手引書「生徒の健全育成をめぐる諸問題---登校拒否問題を中心に」を発表した。登校を拒否する児童・生徒は全国的に増加しており、文部省の調査でも、1年間に50日以上欠席した学校嫌いの中学生は、57年度の場合、2万人を数える。これは、中学生1000人に対し、3.6人の割合となる。

手引書によると登校拒否を早期に発見するポイントは、学校内では、<1>保健室で休むことが多い、<2>理由のはっきりしない欠席が目立つ、<8>友人が少ない、<4>学習意欲に乏しい、<6>学校がつまらないという、などが目安となる。また、家庭では、<1>気分が悪いということが多い、<2>朝になると、学校へ行きたくないという、<8>朝の身支度に時間をとる、<4>家の中にとじこもり、外出をしない、<6>夜遅くまで起きている、などが兆候となる。そして、早期発見に努め、全教師が協力し、家庭との連携を強めながら対策を講じれば、登校拒否は克服できるとしている。しかし、教師の中に、精神医学や臨床心理学の素養を持つ者が少ないだけに、この手引きを具体化するのにかなりの時間がかかると予想されている。

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家庭教育手引書

本誌1986年版収録。以下、

文部省が「現代の家庭教育--乳幼児編」を作成して、400円で売り出している。その中でとくに注目されるのは、家庭教育における父親の役割を強調しており、とくに共働き家庭においては、家事や育児は夫婦の共同の仕事と考えている点である。内容は「乳幼児の成長発達の理解」「親の留意点・配慮事項」「地域社会と子供の成長発達」の3章から成り立っており、母子相互作用をも強調しているし、スキンシップの重要性も指摘している。文部省が家庭教育に口を出した点に批判もあるが、家庭教育の危機を考えるならば当を得ているという意見が多い。

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性教育指導の手引(幼稚園)

本誌1986年版収録。以下、

性教育は、幼児期から始める必要があり、それは第一に、性器がいかに清潔であり、大切な身体の部分であるかを教えることであり、第二には、愛情を基盤とした男性と女性の存在を互いに大切にし合う教育をすることである。ところが、親たちの中には、性器に対して不潔感をもっていたり、性を卑猥のものと考えている者が少なくない。こうした誤った考え方を是正するためには、幼児をもつ親たちに対して、性を正しく理解し、意識を変革させるための手引書を与えることが必要である。しかし、全国的に見ると、手引書を作っている都道府県や市町村は極めて少ない。

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しつけの手引書

本誌1987年版収録。以下、

文部省は、昭和60年1月に、小・中学生の道徳指導資料として「基本的生活習慣の指導」を作成した。同資料が「望ましいしつけの工夫」を副題としていることから明らかなように、洗面や歯みがきの習慣や整理整頓、物や金銭を大切にするなど、しつけの指導を目指している。同書は、「個人的な生活習慣は家庭で、社会生活に関するものは学校で指導する方が適している」と、学校と家庭との役割分化をふまえている。しかし、家庭でのしつけは、いわば、親の権限内のことで、国の干渉はなじまないと考えられてきただけに、手引書の作成の事情は分かるにしても、国が私生活に立入る点に危惧の念を抱く向きも少なくない。

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都市復興マニュアル

本誌1998年版収録。以下、

阪神・淡路大震災を教訓に、東京都は大地震が発生した場合の復興の手順や方法を定めた都市復興マニュアルを全国に先がけて定めた。関東大震災級(M7.9程度)の地震を想定し、被災から6カ月間を5段階に分けて復興の手順を示している。5年から10年で復興が終了するように、シミュレーションを事前に行うことも盛り込まれている。

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家庭教育手帳/家庭教育ノート

本誌2000年版収録。以下、

家庭教育手帳は、文部省(男女共同参画学習課)が作成した、乳幼児期の家庭教育についての説明や各都道府県ごとの関連機関の連絡先、簡単な子どもの成長記録記入欄からなるA6サイズの小冊子。ポケット付きのカバーが添えられ、地域ごとの利用への配慮がされている。妊産婦・乳幼児を持つ親に母子健康手帳の交付時、健診時等に配布される。家庭教育ノートは、小・中学生を持つ親に学校を通じて配布される同様の小冊子。市販もされている。「親子の絆を深め、心豊かな子どもを育てていくことを応援する」(手帳)ためのものであり、「それぞれの家庭で考えていただきたいことをまとめた」(ノート)ものであるとされる。やや説教調にも見受けられるが、このような冊子が必要だとされるほど、家庭教育についての自信喪失がみられるということでもある。関連して、家庭教育ビデオも作成されている。また、例えば奈良県では、中国語に翻訳した手帳を作成・配布しているが、このような試みは地域の実情に即したことで重要であり、関係職員等の創意工夫が注目される。

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