月刊基礎知識
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危機管理はマニュアルから
―― マニュアル世代とはどの世代か
 

ここ10余年のマニュアル

ねるとん合コン

本誌1993年版収録。以下、

とんねるずが進行役をつとめるテレビ番組「ねるとん紅鯨団」がスタートしたのは1987年10月、その後番組は89年頃から夜11時台という時間帯にも関わらず視聴率20%を超えるお化け番組へと成長した。番組自体のブームはピークを越えておちついたものの、昨年あたりから「ねるとん」の名を借りた合コン、男女交際ツアーが爆発的なブームを呼んでいる。「ねるとん」という、とんねるずを逆さにした彼らの愛称は、いまや合コンを表す呼称にまでなっている。

ねるとん的なイベントのスタイルにはいろいろあるが、その代表的な例は、バスや船をチャーターし男女100名ほどの参加者を集め、ゲームなどをしながら親交を深めて、最後に番組と同じように、〈告白タイム〉を設けてそこでカップルが誕生する−といった内容である。リクルート出版の旅情報誌「じゃらん」では、91年の5月にこういった「ねるとんツアー」の告知特集を組んで以来、大反響を呼び、毎号10ページ、100本近くの関連ツアーを掲載するほどになったという。男女交際のためのサークルは以前から存在はしていたし、また合コン(男女合同コンパ)も70年代の頃より学生や社会人の間で行われていた。「ねるとん」は、その番組のイメージから、どちらかと言えば“暗い人たちの集い”という印象があった交際サークル的な機関を明るく軽いものとした。「ちょっと、ねるとんでもしようか」といった感じで、ふざけ半分の軽い気持ちで、その種のイベントに参加できるようになった、ということだろう。

ただ筆者の学生の時代にも「フィーリングカップル5対5」「パンチDEデート」等の当時の人気番組のスタイルを借りた同種の催しはあった。しかしいまほどの大きな社会現象にまではならなかったのは、やはり若者の恋愛に関する意識が変わってきているのだろう。第三者からお膳立てをされないと、決められたシステムを与えられないと、コミュニケーションがとれない。感情がうち明けられない。といった傾向は強まっているのかも知れない。それは失敗を恐れる、かっこ悪いことに対して執拗に恐怖心を抱いている、といった、つまりマニュアルから外れたことに対して脆弱になっている、ということだ。宗教団体「統一教会」の合同結婚式に参加する心理なども、この「ねるとん」ブームと一致するところがあるように思う。

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「脱マニュアル」というマニュアル

本誌1993年版収録。以下、

マニュアルも“バブルという名のもとに”崩壊した、と言われている。たとえば、どこどこのブランドの服を着て、どこどこのイタリア料理のレストランに行き、どこどこのホテルの夜景の素晴らしいスウィートルームをキープし、3度目のデートならばこういうセリフをはいてなになにの花を贈ればムリめの女は口説きおとせる−といったようなマニュアル・ブックどおりの恋愛パターンはもう古い、といった特集が若者雑誌をにぎわすようになってきた。ルールどおりのありがちなパターンを脱して、自分なりのやり方を考えてみよう、というわけだ。言われるまでもなく、それはあたりまえのことだ。昔から、女にもてる男、仕事のできる奴、ってのは、自分なりのアレンジの仕方というのをわきまえていたわけで…。

麻布のイタリア料理店で食事をし、ベイサイドのホテルを予約し、といった〈トレンド恋愛マニュアル〉に代わるものとして、たとえば「これからは高いイタメシにお金を使わずに、近所の公園でピクニックをしてみよう」とか「クルマを捨てて、陣馬高原にハイキングに出掛けるのも新鮮だ!」とか「アパートの部屋を装飾して、手作り料理でパーティとしゃれこもう」といった類の、地味めの暮らしぶりを提案する向きがある。近所の公園でピクニックしようと、陣馬高原で野草摘みをしようと勝手だが、結局それはメディアに載ってしまった時点で〈マニュアル〉となる。マニュアルの趣向が変わっただけで、脱マニュアルというテーマのマニュアルなのだ。マニュアルを断つには、情報を捨てなくてはならない。この「現代用語の基礎知識」などに載っている情報も、あまりうのみにしてはいけない。

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カタログ小説

1982年版本誌収録。以下、

昭和55年文藝賞を受賞し、芥川賞候補作品ともなった、現役の一橋大生(※田中康夫・現長野県知事)の書いた小説「なんとなく、クリスタル」は、ベストセラーとなって種々の話題を提供し、クリスタル派、クリスタル族の風俗的新語を生み出した。442の註をつけた特異・新奇さをもつ作品。内容は、海外駐在の商社マンの親と離れて、都心のコーポラスに男女だちと“共棲”して暮す女子大生を主人公とし、1匹1000円以上もする車海老を使って“クレーム・クルベッシー”なる料理を作ったり、世界の一流ブランド品を身につけ、外国たばこを吸い、レコードのスタンダード・ナンバー聴き、ディスコへ通い、高級レストランにいくといった、現実には実現不可能だが、空虚な中身を贅沢で華美な包装紙で包んだような若者の風俗・様態が描かれている。有名なブティック、レストラン、一流ブランド商品名などふんだんに盛りこまれているところから、また、揶揄・諷刺を多分にふくめてこの呼称が生れた。

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恋愛論ブーム

本誌1992年版収録。以下、

柴門ふみ『恋愛論』、二谷友里恵『愛される理由』などが売れている。吉本ばなな、村上春樹らのやさしさをテーマにした純愛路線の本もベストセラー。松任谷由美の「純愛」を売り物にしたアルバムもブームに一役買った。一方、『デートコース案内』『あなたにぴったりの相手』等のマニュアルブックが恋愛のゲーム化を象徴している。

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『ニセ学生マニュアル』

1987年。浅羽通明(あさば・みちあき)著。当代さまざまな大学の講義にニセ学生として聴講するという設定で、各教授陣と講義内容を簡潔に紹介。続編『逆襲版・ニセ学生マニュアル』(89年)には、サブタイトルとして「ミーハーのための<知>の流行案内」とある。しかし実際の内容は「ミーハー」どころか、知的状況への鮮やかな切り込みになっていて驚かされる。

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マニュアル育児

本誌1993年版収録。以下、

以前から育児書が子育て中の母親を不安にすることが指摘されてきた。その理由は、第一に、平均値を中心とした指導が多くなり、子どもの「個性」を無視する結果になったからである。第二には、病院については知識と経験があっても、育児には経験の少ない小児科医や児童心理学者によって書かれたものが多かったからである。今後は、体験から出発し、個々の子どもに合った、おおらかな育児書の出現が望まれる。それは、小児科医や児童心理学者の説を批判するものであってもよい。

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取材の安全マニュアル

1996年版本誌収録。以下、

1991(平成3)年6月に起きた長崎県雲仙の火砕流事故の教訓から、テレビ・キー局はそれぞれに取材の安全マニュアルを作った。

91年9月、民放で最初に『取材と安全の基準』を作ったテレビ朝日では、「人命第一の原則は報道の世界のみならず、世の中に確立された絶対的な価値観である」と人命優先を説き、「安全のために他社と比較しない」と取材競争にも反省がこめられている。日本テレビがニュース系列NNNとして92年3月に作った『安全な取材・放送活動のために』は、世界各国の新聞社・放送局の基準を参考にしながら、しかし「いざというときに生命を守ってくれるのは、日頃の勉強や事前の調査」としている。

TBSが92年4月に作った『取材の安全のために』も、「どんなに重要な報道であっても、取材者の命に優先するものはない」「危険な取材は強要されてはならない。本人の選択により、不利な扱いをされてはならない」などを決めている。

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ディザスター・プラン

disaster plan。企業が広域災害に対応するために準備している危機管理マニュアル。

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サバイバルマニュアル

survival manual。遭難のとき野山や海上で生き残るための生活案内書。また野草などを食料として自然の中を放浪するための便覧。

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コンプライアンス・ハンドブック

compliance handbook。法令遵守についての手引書。

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クリティカル・パス

critical path。「重大な経路」の意。プロジェクトを進めるうえでネックとなる部分。その分析と管理。とくに病院経営において、入院患者に対する治療・介護をマニュアル化して効率化し、コストダウンをはかること。

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『医者のバイブル』

本誌1996年版収録。以下、

創業300年の歴史を誇る世界最大の医師向け医薬品メーカーであるメルク社(アメリカ)が、100年近くも前に発刊した『メルクマニュアル』がその原典で、世界の標準的な治療方法を解説した本。あらゆる医療分野の病気について、その症状から診断、治療、薬物療法、副作用などが細かく具体的に述べられている。5年に1回ごとに改訂を重ね、9カ国語に翻訳されて、聖書に次いで世界中の多くの人に読まれているという評価を得ている。欧米ではほぼ1世紀にわたって、医療関係者のバイブルとして愛用されてきたものだが、なぜか日本では翻訳されず、まぼろしの本となっていたが、1994(平成6)年末、日本で初めて翻訳出版された。

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ノウ・ホワット

本誌1993年版収録。以下、

従来の「ノウ・ハウ」という解析主導型からトータルシステムに重点を置く総合主導型。現代は本質を問う時代。

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レシピ(recipe)

本誌2000年版収録。以下、

料理の指示書としての機能を持った献立表のこと。料理ごとに使用する食材や調味料などと、それらの分量や調理法、さらには料理の出来上がりの形態や量、盛りつけ方なども記入されている。同じメニューでもこのレシピによって微妙に味が違ってくる。

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フロー・チャート

本誌1960年版初出。以下、

flow chart。工程経路図表とか流れ作業図などといわれているのがこれである。つまり、作業工程の順序を図化したものである。これによって、一つの与えられた目的を達するに必要な段階がすべて図表形式で示される。これは、職務明細書をもとにして作成されるのが普通である。一般には工程分析に使用され、事務分析のみならず生産工程の分析によく用いられる。元来は、生産管理の技法のなかから生まれたものである。最近は、計算機の導入などにより事務の面に多く用いられるようになってきている。

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