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新学習指導要領で勉強しなくなった課目と単位
知らないとこんなとき困るかな?
著者 白鳥 敬

新学習指導要領で勉強しなくなった課目と単位

円周率は3?(小学校の課程で内容変更)

これまで小学校では、円周率(π)は3.14と教えてきましたが、新学習指導要領では、3と教えてもよくなりました。3.14以下の数字をごろ合わせでどこまで覚えられるかを競った世代としては、拍子抜けのするような内容ですが、これは、3.14を3に置き換えてしまうという意味ではなく、だいたい3であることがわかればいいということで、3.14という数字も教えていいのだそうです。

「円周率ってどうやって求めるんだっけ?」というのが、多くの大人の偽らざるところだと思います。円周率は、円周の長さ÷直径で、実測によらないで正確な数字を求めるには高度な技が必要になります。

古代エジプトのヒエログリフで記された記録には、円周を実測によって求める方法が記されていますが、生徒が、自分で円周率を求めてみて、それがだいたい3になり、より正確に求めるときはどうすればいいのか、といったことを考えるきっかけになればOKなのでしょう。

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平方根表は消えた…でも(中学の課程から削除)

√2は「一夜一夜に人見頃(1.4121356)」と、語呂合わせで思えたものですが、こんなものを覚えてなんになるんだろうと、子供心に思っていた人も多いことでしょう。

√2を覚えていても、それが仕事に役立つというわけではありません。しかし、数学を学ぶ目的は、思考力を鍛えるところにあります。手順を考え、答えを導き出す過程に意味があります。平方根とはどういうものか理解することがポイントで、答えを出すことではないと。答えは電卓を使えば簡単にでますから。

平方根は、紀元前1700年も前のバビロニア人がすでに使っていたそうです。彼らは筆算で平方根を求め、それを仕事や生活の場で、使いやすいように平方根表にまとめていたといいます。平方根表が現代の電卓にあたると言ってもいいかもしれません。

ところで、平方根を表す√という記号ですが、これは、1525年頃、ドイツ人のクリズトフ・ルドルフが使い始めたとされています。

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2進法は必要ないか?(中学の課程から削除)

コンピュータがこれだけ普及した現在、コンピュータが2進法で動いているということくらいは、知っていたほうがいいかもしれません。

コンピュータが扱うデータのサイズをいうとき、バイトとビットという言葉が使われます。このバイトとビットを混同している人がけっこういるようです。

ハードディスクやメモリの記憶容量を表すときはバイト(byte)を用いますが、通信速度などは、ビット/秒を使います。 バイトは、「メモリ128MB」などのように、MB(メガバイト)とかGB(ギガバイト)という使い方をします。

これに対して、ビット(bit)は、ビット毎秒(bps)など、通信の速度を表す単位として、よく使用されます。「ADSLの最大接続速度は8M」と書いてあれば、8Mbpsのことで、毎秒8メガビットの情報が送れることを表しています。これをバイトに換算すると、1メガバイト/秒になります。

バイトとビットの違いを理解するには、2進法を理解していたほうがいいと思われます。

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天気図が作成できなくても困りはしないが… (中学の課程から削除)

1日3回放送されるNHKラジオ第二放送の「南大東島、西南西の風、風力3、晴れ」などという気象通報を聞きながら、天気図を書いていた時代もありました。しかし、現在は、インターネットを通じて、大型コンピュータが計算した詳細な天気図を見ることができるようになりましたので、自分で天気図を作成する必要がほとんどなくなりました。

インターネットでは、地上天気図や地上予想天気図の他、高層天気図や、渦度、上昇流など、人間の手で短時間に作成するのは不可能と言ってもいい複雑な天気図も見ることができます。

気象庁からは、数多くの数値計算による天気図が出ていますが、それぞれどんな天気図かを示す記号がついています。

・ASAS

--- ASはSurface Analysis(地上解析)、次のASはAsia(アジア)。もっともポピュラーな地上天気図。

・AUPQ35

--- AはAnalysis、UはUpper-air、PQは北太平洋。3は350ヘクトパスカル(hPa)の高度、5は500ヘクトパスカルの高度。この他、いろんな天気図を、国際気象海洋(株)のホームページ(http://www.imoc.co.jp/)などで見ることができます。

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質量と重さの違い(高校の課程に移行)

中学校では、これまで「質量」と「重さ」について教えてきましたが、これが高校の課目に移行しました。

「質量」というのは、その物質が本質的に備えている量のことで、宇宙空間へ行こうが、月に行こうが同じです。「重量」は、物体が重力によって引っ張られる時に物体に働く力の大きさのことです。ですから、重量で表すと、月では地球上で60kgだったものが、10kgになります。地球上でも場所によって重力(正確には重力加速度)が違います。日本列島の北端の北海道と南端の九州でも1000分の1くらいの違いがあります。

現在、世界的な単位系として使われているSIでは、物体の質量は定義されていますが、重量についてはありません。一般に重さの単位として使っているキログラム(kg)は、質量の単位であって、その大きさは「国際キログラム原器」の質量に等しいと定義されています。

最近の電気製品のカタログなどを見ると、大半が、製品の重さのところに、「質量100グラム」などと「質量」という言葉を使うようになってきています。

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直流/交流の違いを知っている人は少ないかも(高校の課程に移行)

一定の電圧で一方向に流れる電流が直流(記号:DC)、一定の周期で流れの方向が変わる電流を交流(記号:AC)と言います。交流は伝送損失が少ないので、大電力の送電に使われます。また発電機も交流式のほうが単純なので、発電所でおこした電気は交流で送られます。

しかし、一般家庭やオフィスでは発電所から送られてきた交流電流を、ACアダプターや電気機器内の電源回路で直流に変換して使用しています。テレビもコンピュータもラジカセも携帯電話も、すべて直流で動いているのです。飛行機に搭載している発電機(オルタネータ)も交流発電機ですが、交流をダイオードで整流し直流に変換して電子機器に送っています。直流は、扱いやすく、またインバーターで直流をもう一度交流に戻してやれば、効率のよい制御ができます。蓄電池に電力を蓄積できるのも直流です。

交流電流がきているコンセントに、直流で動く電子機器を無理やり差し込む、なんて、信じられない行動ですが、実際にやって、電子機器を壊してしまう人も現実にいるのですね。

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比熱の知識があれば助かるかもしれないことも…(高校の課程に移行)

比熱は、1グラム(g)の物質に1カロリー(cal)の熱を与えて温度を1℃高めるのに必要な熱量のこと。 比熱が大きいと、暖まりにくく冷めにくい、比熱が小さいと暖まりやすく冷めやすいということは、中学生の頃に習いましたが、指導要領の改訂で中学では教えなくなるそうです。

高校では物理や化学を選択しない生徒もでてくるので、比熱の知識を持たないまま社会に出る人間が増えてくるということにもなります。比熱の知識がなくてもそんなに困ることはないのかもしれませんが、やはりあるとないでは大違いです。

たとえば、水の比熱が1に対して、石は0.2くらいという知識があれば、石のほうが水より5倍速く暖かくなるということが理解できます。この違いによっておこる気象現象、たとえば、ヒートロー(熱性低気圧)による都市型の豪雨とか、海風陸風の吹きかたなど、知っていれば、なにかクリティカルな状況に追い込まれたとき、命が助かる可能性が若干上がるでしょう。

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電力量---ブレーカーが落ちるとき(高校の課程に移行)

電力(W、ワット)は、電流(A、アンペア)と電圧(V、ボルト)の積で表されます。W=V・A。

電力量について、これまでは中学の時に習いましたが、これからは高校の科目になるそうです。ワット・アンペア・ボルトがどのような関係にあるかは必須知識だと思うのですが。

たとえば、100ボルト・20アンペアの電力がきている家庭で、どの電気製品とどの電気製品を同時に使えば、容量をオーバーするのか、といったことも簡単に計算できます。

この家の使用可能電力量は、100(V)×20(A)で2000(W)ですから、最大消費電力200ワットのパソコン本体と消費電力が100ワットのディスプレイを使用すると、残りは1700ワット。さらに、エアコンをつけてプラス1100ワット消費、続いて台所の電気コンロでお湯を沸かせば、プラス1000ワット。これで、400ワットオーバーになり、見事にブレーカーが落ちます。

ブレーカーがあるから大丈夫というのではなく、なぜブレーカーが落ちるのかという知識のほうが必要だと思うのですが。

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フロンによるオゾン層破壊のしくみは難しすぎる(高校の必修課程から削除)

CO2による温暖化と並んで最も重要な環境破壊アイテムである、フロンガスによるオゾン層の破壊については、仕組みが難しすぎるということで、高校の必修課程から削除されました。

成層圏まで到達したフロンに紫外線が当たると、フロン分子(CFCl3)から塩素原子(Cl)が飛び出し、この塩素原子がオゾン(O3)により還元と酸化を繰り返しながら、オゾン層を破壊していく。こういったオゾン層破壊のメカニズムを説明して、オゾン層の厚さは通常どのくらいで、オゾンホールはなぜ極地方で多く発生しているかとか、オゾン層の厚さはどいうやって計るのか、などという知識につなげていけば面白いはずなのですが。

ちなみに、オゾン層の厚さはドブソン・ユニット(記号:DU)という単位で表されます。これは、大気中のオゾンを0℃、1気圧にしたとき、どれだけの厚さになるかを表した数値で、cmで表したオゾンの厚さを1000倍した数値がドブソン・ユニットです。日本付近では通常、250DUから450DU。220DUを下回る部分をオゾンホールといいます。

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Excel で統計を勉強するようになった(高校の課程に追加)

パソコンでは表計算ソフトは、ワープロソフトと並んで欠かせないものになっています。表計算ソフトの代表格であるMicrosoftExcelは、表に数値を入れていくだけで、さまざまな切り口でデータを分析し、それをグラフとしてビジュアルに表現することができます。一部のデータを変更して、それがどのような結果になるかといったシミュレーションを行うこともできます。

たとえば、多変量解析などの複雑な処理は、表計算ソフトが登場するまでは、たいへんな作業でした。

表計算ソフトの用途は、経理・営業、学校、社会調査、科学実験のデータ解析まで、データの集計・解析が必要なあらゆる分野で活用できます。ですから、高校で教えることはいいことだと思います。それどころか、基本的なことは中学あたりで教えたほうがいいかもしれません。

統計や確率は、複雑になりすぎた現代社会を解析し理解するために、欠かせないものになりつつありますから。

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