月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
単位と基準と規格の常識・基礎知識事典
 

『危険とボーダーラインの単位・基準』の特集

最高気温/最低気温 (℃) ―――どこまで人類は生存できる?

日本の今年の7月は、たいへんな猛暑でした。7月24日には、東京練馬で観測史上最高の38.8℃を、静岡県佐久間町ではそれを上回る40.2℃を記録しました。人々はこれを「地球温暖化」や「ヒートアイランド現象」と結びつけて語り、また来年もこれ以上の夏がやってくるのでは…とうんざりもしましたが、この暑さ、観測史をさかのぼるとどうなのでしょう。
日本で気象観測が始まってからの最高気温は、1933年7月25日に山形市で記録した40.8℃が最高と言われています。気象庁以外の観測所では、42.5℃を記録したケースもあります。世界では、1921年7月8日に、イラク南部のバスラで観測された58.8℃が最高とされています。

一方、最低気温の記録は、1902年1月25日、北海道旭川市で観測されたマイナス41.0℃、世界では、南極のロシア基地で観測されたマイナス89.2℃です。
人間は、とりあえず、この最高気温と最低気温の範囲では生き続けていけることが確認されているわけです。

◇ここで、 (http://www.weather-service.co.jp/Public...) 、毎日のアメダス観測地点の最高気温と最低気温を見ることができます。

◇関連『現代用語91-00』
[★「気象観測史上 (はじめての…) 」〔流行語大賞'90〕]
[★異常気象 (unusual weather) 〔1991年版 気象〕]

ページの先頭へ戻る

貯水率/取水制限/給水制限 (%) ―――取水制限、給水制限の基準は?

今年の梅雨は、雨が少なく、渇水が心配されていましたが、関東など一部で取水制限を始めた直後に、台風11号が日本列島を直撃し、なんとか今年の夏は水の心配が解消したのは不幸中の幸いでした。しかし「かなり深刻な状況」「パニック起こるか」とまで報道されていた日照りが、1回きりの台風で解消したというのは、なにか腑に落ちない感じもします。
さて取水制限や給水制限は、ダムの貯水率がある数値以下になった場合などという基準はあるのでしょうか。国土交通省河川局や東京都水道局によると、とくに基準はないそうです。取水制限・給水制限の開始及び停止については、河川管理者と利用者の間で協議が行われ判断されます。
貯水率は、貯水量と有効貯水量の比です。有効貯水量というのは、ダムの底にたまった砂の量 (堆砂量) を総貯水量から差し引いた数値をいいます。取水制限と給水制限の率は、どちらも通常の量より何%少なくするかを言います。給水制限10%なら、10%少なくするということです。

◇国土交通省河川局のホームページはこちら (http://www.mlit.go.jp/river/) 。
◇関連『現代用語91-00』
[★利雪/親雪/克雪〔1996年版 気象〕]

ページの先頭へ戻る

波の高さ (m) ―――波高ってどこからどこまで?

穏やかな海はとてもきれいですが、ひとたび嵐になると、たいへんな災害をもたらします。天気予報では沿岸部の波高が報じられますが、海のそばに住んでいない人にはその数字もなかなか実感としては感じられないものでしょう。

波高とは、平均海面からの高さでしょうか、それとも波のボトムからトップまでの高さでしょうか。答えは、波のボトムとトップの間の垂直距離です。ただ、海の波は一定ではなく大きな波から小さな波まで混在しています。そこで、一定時間に観測された波高のうち大きな方から3分の1を選び、その平均値を波高とします。これを有義波高と言います。 一方、波浪という言葉もありますが、これは、風の力によって引き起こされる海面のうねりの総称で、波高は波浪の一要素です。波浪のエネルギーは非常に大きく、時として、船舶や海浜の建造物に影響を与えます。このため、波浪により重大な災害が予想されるとき、波浪警報が出されます。場所によって違いますが、有義波長1.5m以上で波浪注意報、3m以上で波浪警報が出されます。 (東京湾の場合)

◇次の場所で、波の情報を得ることができます。レジャー情報は「CWW Marine Information (Weather News社) 」 (http://www.wni.co.jp/cww...) 、専門的な情報は「国際気象海洋 (株) (http://www.imoc.co.jp/) 。

ページの先頭へ戻る

一酸化炭素濃度―――微量で人体に影響を与える、その量は?

9月1日、新宿歌舞伎町の雑居ビルで火災があり、おおぜいの人が亡くなりました。この火災での死因の大半は、一酸化炭素 (CO) 中毒と言われています。建物の内装材などが完全燃焼しない状態でくすぶっているときに大量のCOを発生するからです。 いったいどれくらいの量のCOを体内に取り込めば、中毒症状を起こし、死に至るのでしょうか。

COが体内に入ると、血液中のヘモグロビンと可逆的に結合し血液の酸素運搬能力を低下させます。COとヘモグロビンの結合強度は、COと酸素の結合強度の200倍以上ありますから微量でも人体に大きな影響を与えます。その人体への影響は、空気中の濃度と暴露時間 (COを吸った時間) によって変わります。一般に空気中濃度が100ppmで中毒症状が現れ、1500ppmになると死亡する場合がでてきます。ppmというのは、parts per millionの略で、100万分の1を表しますから、100ppmは、0.01%、1500ppmは、0.15%です。

◇一酸化炭素中毒に関しては、「大牟田労災病院一酸化炭素中毒情報センター」 (http://www.mutugoro.or.jp/~omutaro/CO1...) に詳しい情報があります。

ページの先頭へ戻る

気圧/水圧―――人間は、何気圧まで耐えることができるか?

ハワイ沖で米原潜にぶつけられ沈没したえひめ丸は水深600mの海底にあるため、引き上げ作業が難航しています。人間が潜って作業を行えればいいのですが、人間が潜れる深度には限界があります。

現在のところ、素潜りによる最大深度記録は、1996年にキューバのピピン・フェレーラの水深130mです。圧縮空気を呼吸する潜水では、700mまではいけそうだということです。700mの深度は、水圧が70気圧に海面上の大気の1気圧が加わって71気圧の力がかかっています。

では、逆に気圧の薄い高空ではどうでしょうか。酸素を吸えば、エベレスト山頂 (8848m) でも大丈夫です。しかしさらに高空では、気圧が低くなるにつれ水の沸点が下がり、高度1万8000mあたりを超えると、沸点が40℃以下になりますから、血液が蒸発して死んでしまいます。60000フィート (約1万8000m) 以上の高々度でミッションをこなす戦闘機パイロットは、宇宙服のような耐圧服を着て飛行機を操縦しますが、敵弾が一発当たれば、その瞬間天国へ行ってしまいます。

ページの先頭へ戻る

騒音限界 (dB A) ―――音声として認識できるのは、何デシベルまで?

日本の街は、騒々しすぎると思いませんか。そこで、騒音と人間の生理に関する話題を一つ。

人間の耳は、周波数にして20Hz〜20000Hz、音圧にして20μPa (マイクロパスカル) 〜20Paの音を聞くことができます。最小可聴音から最大可聴音の音圧は100万倍も違います。そのため、音の大きさを表すとき、対数尺度を用います。また「ウエーバ・フェヒナーの法則」により、音圧が10倍になると2倍の大きさの音として聞こえるので、対数尺度が都合がよいのです。

対数尺度の単位としてB (ベル) が採用されましたが、このままでは、大きすぎるので、10分の1量を表すd (デシ) をつけてdB (デシベル) を使っています。騒音の大きさは、聴覚に基づいて可聴周波数に重み付けを行った音圧レベルを用います。これを「騒音レベル」といい、「dB A」という記号で表します。 ちなみに、人間の最大可聴音は130dBくらいで、それを超えると耳に痛みを感じ、音としては聞こえなくなります。ジェットエンジンの音を間近で聞くと、130dBを超える場合があります。

◇騒音に関する条例は各自治体が作成しています。東京都騒音条例については、ここ (http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/) 。

ページの先頭へ戻る

放送用電波から紫外線まで   有害な電磁波とは? ―――携帯電話の電磁波は人体に影響があるか?

携帯電話などの普及に伴って、電磁波が人体に与える影響について議論されています。電波は目に見えないものなので、だれもが必要以上に心配になりがちですが、電磁波と一口に言っても、波長が数10kmの超長波 (VLF) から1兆分の1m (10pm) (pm:ピコメートル) 前後の紫外線やX線までの広い範囲に渡っており、そのすべてが人体に害を与えるわけではありません。波長の他、電波の強度、照射時間も関係してきます。

波長の短い紫外線 (UV−C:波長280nm-100nm) やX線は、被爆のしかたによっては有害となります。しかし、テレビ放送や携帯電話など日常的に使われているもっと長い波長の電磁波が生体に与える影響については、発熱作用は確認されていますが、それ以外の影響については、ビームを絞って長時間、照射するなどの特殊な方法を使わない限り問題はないのでは、と考えられています。

しかし、別の研究では、遺伝子に影響を与える、などの報告もありますから、注意するにこしたことはないでしょう。このため、総務省では、携帯電話を使用するとき、人体頭部への電波の比吸収率を2W/kg以下とする、電波防護指針 <総務省 (http://www.joho.soumu.go.jp/joho_tsusin.html) > を導入しようとしています。

いずれにしろ、携帯電話での長電話は慎んだほうがよさそうですね。

◇関連『現代用語91-00』
[★電磁波障害〔健康問題 2001年版〕]

ページの先頭へ戻る

放射能―――人体に影響を与える限界は?

1999年におこった東海村の核燃料加工会社の臨界事故によって、放射能の恐ろしさを改めて実感させられました。原子力とともに生きている現在の私たちにとって、どれくらいの量を被爆すると「やばい」のか、という目安を知っておいたほうがいいかもしれませんね。

放射線には、アルファ線、ベータ線、X線、ガンマ線、中性子線などがありますが、人体に大きな害を与えるのは、X線、ガンマ線、中性子線です。

放射線の単位には、次のものがあります。人体に当たっている量 (照射線量) の単位クーロン/キログラム (C/kg) 、人体に吸収された量 (吸収線量) の単位グレイ (Gy) 、全身被爆に換算した線量をである実効線量等量の単位シーベルト (Sv) の3つです。
国際放射線防護委員会 (ICRP) は、被爆量の制限を設けており、制限値以下であれば、安全としています。これによると全身については最大50ミリシーベルト、各部位については500ミリシーベルトとなっています。ちなみに、胃のレントゲン検査では4ミリシーベルトの放射線を浴びます。

1000ミリシーベルトを超えると急激に被爆症状が現れ、6000ミリシーベルトに達すると死亡すると言われています。

◇放射線医学総合研究所 (http://www.nirs.go.jp/qa...) に、詳しい情報があります。

ページの先頭へ戻る

自動車の環境基準 (NOx/浮遊粒子状物質) ―――大気汚染の元凶は?

東京都の石原都知事は、テレビなどで、ディーゼル車の排ガスに含まれている真っ黒な浮遊粒子を手にして、東京の空気をきれいにしようと強く訴えていますね。すすのような真っ黒な塊を見せられると、さすがに説得力があります。

大気汚染の原因物質は、もちろんディーゼル車の排ガスだけではありませんが、これを減少させることで、東京の空気はだいぶきれいになるでしょう。

大気汚染物質には、二酸化窒素 (NO2) 、光化学オキシダント (Ox) 、二酸化硫黄 (SO2) 、一酸化炭素 (CO) 、そして、浮遊粒子状物質 (SPM:Suspended Particulate Matter) があります。SMPは、主に粒径10μm以下のものを言います。中でも、2.5μm以下の小さな粒子 (PM2.5) は、呼吸器系疾患、花粉症と関係があり、ディーゼル車の出すDEPは発ガン物質があると言われています。

東京都では、SPMの基準値を1時間値の一日平均値が0.10mg/m3以下で、1時間値が0.20mg/m3としています。

◇東京都環境局 (http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/) の「大気汚染地図情報」で、SPMなどの汚染状況をリアルタイムで見ることができます。

ページの先頭へ戻る

台風の強さ・大きさ―――小型で弱い台風は存在しない?

台風とは、風速が17.2m/s以上に発達した熱帯低気圧のことを言います。この台風には、強さと大きさの単位があります。 大きさの階級は、風速15m/s以上の半径が「500km未満の台風」を「階級名称無し」、「500km以上、800km未満の台風」を「大型」、「800km以上のもの」を「超大型」と呼びます。

強さの階級は、「最大風速17.2m/s以上、32.7m/s未満」を「台風」、「最大風速32.7m/s以上、43.7m/s未満」を「強い台風」、「最大風速43.7m/s以上、54.0m/s未満」を「非常に強い台風」、「最大風速54.0m/s以上」を「猛烈な台風」と言います。
8月14日に発生し、非常に遅い速度で、迷走しながら21日から22日にかけて、紀伊半島・名古屋・東京と通過して大きな被害をもたらした台風11号は、「超大型」の「強い台風」でした。

◇「米海軍空軍合同台風警報センター」 (http://www.npmoc.navy.mil/jtwc.html) で、常に最新の台風予想進路を知ることができます。気象庁の予報と異なる場合があって、おもしろいですよ。

ページの先頭へ戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS