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日本の政治が語れる常識・知識事典
政治家がどこを向いているかわかる事典
執筆   斎藤信義 (ジャーナリスト)

イズム

保守/革新

70年代までは、保守は自民党、革新は社会党・共産党という図式で見ることができた。保守=現状を維持する勢力、革新=変革を望む勢力という地図である。ところが80年代、90年代になると、誰の目にも政治の停滞・硬直化が明らかになってくる。これにいち早く対応したのが自民党で、「改革」の旗印を高く掲げることによって、革新の語感は色あせていった。また、革新=社会主義という安易なイメージに寄りかかっていた革新勢力は、ソ連など社会主義政権の崩壊があったにもかかわらず、新たな革新イメージを創出することができず、革新という言葉から逃避していった。そのため、革新という言葉は今では、保守勢力の専売特許のようになっている。

◇関連『現代用語91-00』
[★三極構造 (triangle structure conception) 〔1993年版 政党関係〕]

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改革派/守旧派

90年代「政治改革」の目玉として小選挙区制度導入を計るときに、小選挙区制度賛成派を改革派、反対派を守旧派と定義したことから始まった言葉。マスコミなどの論調も改革派=正義、守旧派=悪という図式であった。これにより、改革派は自民党内の小選挙区賛成派、守旧派は社会党・共産党ということになり、従来の保守/革新という図式は意味をもたなくなった。またこの図式により、自民党内の小選挙区反対派も沈黙を強いられることとなる。今では内容を吟味せずに図式化するスローガン政治の言葉として、あまり好まれなくなっている。

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タカ派/ハト派

簡単に、タカ派=改憲派、ハト派=護憲派という色分けは今でも可能だが、今日的にはタカ派=海外派兵積極派、ハト派=海外派兵慎重派・否定派という分け方もできる。また、法的な根拠を整えてから海外派兵するべきという者をハト派、迅速な海外派兵を主張する者をタカ派という論調や色分けが自民党内にはある。これだと、ある部分ではハト派、ある部分ではタカ派ということもあるが、将来的にはさらに多くの要素が組み込まれるだろう。ただ政界では、ハト派、タカ派の色分けをする思考は残っており、死語となってはいないようである。

◇関連『現代用語91-00』
[★加藤紘一 (かとう こういち) 〔1994年版 人物ファイル〕]
[★橋本龍太郎 (はしもとりゅうたろう) 〔1996年版 この一年の人名〕]

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国際派/民族派

戦後の共産党で、国際共産主義の総本山コミンテルンの指令に忠実な派を国際派、日本独自の闘争を模索する派を民族派といった。また最近まで、銀行内で国際業務を行う者を国際派、国内企業との取引のみ従事している者を民族派といったが、政界においてはそのような明確な色分けはない。とくにグロバリゼーションが唱えられる今日的現状では、すべての政治家は国際通であることを喧伝している。その点では、日本精神の復権を唱える右派政治家も同様である。ただし、土木業界などのドメステイック企業と関係が深い政治家を民族派議員と陰口をきくことはあるようである。

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旧保守/新保守

既得権益に囚われず、金権・腐敗の打倒を掲げ日本新党を旗揚げした細川護熙に一部マスコミは「新保守」「リベラル保守」と定義付けようとしたが、当の細川がこのような定義付けに興味を示さなかったので定着しなかった。後に、新進党を分裂させた小沢一郎が自由党を結成して自民党と連立した時、自民党右派の中曽根康弘、亀井静香らは小沢を復党させて「新保守」の旗揚げを計った。中曽根らの思惑は、タカ派的な保守を「新保守」と位置付けていたのだが、小沢は話に乗らず、この構想は瓦解した。つまり新保守とは、イメージだけで、内実はどうとでもとれる実体のない言葉になっているため、現在ではほとんど使用されていない。

◇関連『現代用語91-00』
[★旧渡辺派 (former Watanabe faction) 〔1996年版 政党〕]
[★民主党〔1997年版 政党〕]
[★新保守主義 (neo conservatism) 〔1991年版 アメリカ問題〕]

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右翼/左翼

70年代までは右翼=保守反動主義、左翼=社会主義勢力という図式が生きていたが、社会主義国家群の瓦解により、自らを左翼と位置付ける政党は共産党だけになっている。つまり、社会全体が右にスイングした結果、かって右翼と呼ばれていた保守勢力も“右翼”でなくなったことになる。同様に、社会主義的価値観が“消滅”した現在では、左派/右派という呼び方も死語に近くなっている。

◇関連『現代用語91-00』
[★右翼運動 (right‐wing movement) 〔1991年版 政治理論〕]
[★新右翼〔1993年版 学生・青年・大衆運動〕]
[★新左翼セクト〔1995年版 学生・青年・大衆運動〕]
[★新左翼の闘争と戦術〔1995年版 学生・青年・大衆運動〕]
[★新左翼の理論〔1995年版 学生・青年・大衆運動〕]

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市民派

市民派とは、以前は社会党内の労組出身でない議員が好んで使っ言葉で、労組に依存しない党創りを提唱する意味合いがあった。やがて、無党派層を結集して選挙戦を戦う都市出身議員も使うようになる。自民党、とくに後援会組織がしっかりしている農村議員はこの言葉に露骨な反感を示す傾向があるが、若い都市選出議員は抵抗なくこの言葉を使うようである。後援会組織が確立していない、都市型議員の用語として定着している。

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ファッショ/アカ

ファシズム的傾向のある者・思考をファッショ、共産主義信奉者をアカと反対勢力が侮蔑の意味を込めて呼んだ用語。後には、保守主義的傾向のある者をファッショ、社会民主主義的、反権力的な思考をする者をアカと呼ぶようになる。ファッショとは左翼が好んで使う用語だったが、左翼勢力の衰退によりほとんど聞かれなくなった。アカという用語はあまり品がよくないので、少なくても公の場で使われることはなくなっている。

◇関連『現代用語91-00』
[★ファシズム (fascism) 〔1991年版 政治理論〕]

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…主義

共産主義、マルクス主義というように、イデオロギィーを重視する場合に使った用語。マルクス主義の衰退によりイデオロギィー的争いが少なくなった結果、現在ではあまり政治の場では使われなくなった。経済学の用語である資本主義、市場原理主義、社会主義などは現在でもよく使われている。

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反動/進歩

マルクス主義歴史観から生まれた用語で、おもに左翼的な人々が使った言葉。人類は差別・支配・搾取などがある社会から、徐々に解放に向かって進歩していくという考えから、革命を指向する人々を“進歩勢力”、保守的傾向のある人々を“反動勢力”と位置付けた。ただし70年代に入ると、公害問題の発生などを含め、進歩=善という考え方に疑問を持つ人々が多くなり、社会主義者でも自らを進歩勢力という人は少なくなってきた。そして社会主義が衰退した現在では、ほとんど死語になっている。

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護憲/改憲

今日の政局でもっとも純粋に政治的スタンスを明らかにするのが、護憲・改憲に対する意志表示になっている。ある意味では政治家にとって、究極の政治的理念の発露となるかもしれない。明確な護憲派は社会民主党・共産党の両党だけで、あとは民主党の旧社会党の人々、自民党の護憲派がいるが、国会議員全体では改憲派は4分の3を占めている。昨今の国際政治状況からして、近いうちに憲法問題は最大の政治的課題となることは間違いない。

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