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日本の政治が語れる常識・知識事典
その政治家がどういうヒトかわかる事典
執筆   斎藤信義 (ジャーナリスト)

その政治家のバックにあるもの

都市部選出議員

東京圏、大阪圏など大都市の選挙区から選出された議員。最近では都道府県の県庁所在地を選挙区とする議員も含まれる。有権者の政治意識は高く、地縁・血縁などにも無関係で“無党派層”が多い。そのため、地元への利益誘導に血道をあげることなく、大胆な「改革」を提唱する議員が生まれてきた。その反面、後援会組織が弱く選挙基盤の脆弱な議員が多いため、大衆人気に迎合することのみに熱心になり、スケールの大きさがないという指摘もある。

◇関連『現代用語91-00』
〜変わる「無党派」の位置付け〜
[★無党派層〔1991年版 政党関係〕]
[★無党派層〔2000年版 政党〕]

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農村部出身議員

農村や地方小都市を選挙区にする議員。地縁や血縁、土木・建築業界を中心とする強固な後援会組織を持つのが特徴。公共投資など中央から資金を引き出す能力が高いほど選挙には強く地盤も安定し、当選回数を重ねる。政府の要職につき、さらに地元に“貢献”するという仕組み。歴代総理はすべて農村議員。後援会中心なので世襲制を生みやすく、ダイナミックな変革を嫌い、内向き、地元べったりというマイナス面も目立つ。

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後援会

選挙の実働部隊として政治家を支える組織。思想・信条的よりも実利で結び付いた後援会のほうが選挙では頼りになるというのが実状。とくに農村議員の場合は、土木・建築業界の経営者が後援会を仕切ることが多く、地場産業、農協、商業関係者ら利益共有者が後援会の中枢を占める。ただ最近は、利益還元ではないボランティア型の後援会組織に支えられた都市部議員も生まれている。

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女性

現在では以前の「主婦連」「婦人有権者同盟」のような、単独で議員を生み出すパワーある女性組織はない。しかし女性組織の数は増え、その潜在的パワーは高く、議員には女性組織の推薦は魅力的である。女性組織の傾向としては、生活重視、環境問題、老人問題、反戦などに関心を持つ議員を推薦する。純粋な女性組織ではないが、各地にある「生活生協」組織は能力・行動力の点から、政治に大きな影響力を与える可能性が高い。生協組織も政治にも前向きに取り組むようになってきたので、今後の動向には注目が必要。環境問題・食品の安全性に関心のない議員は絶対に推薦されない。

◇関連『現代用語91-00』
[★女性議員の活躍〔1991年版 女性/男性問題〕]

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大蔵族

予算配分権限を持つ大蔵省 (現財務省) の応援団なので、族議員のなかでも花形的存在。銀行・証券会社など大蔵行政に関係するあらゆる業界団体と太いパイプができるので、安定した献金ルートが確立できる利点がある。その意味では、歴代の自民党実力者はすべて大蔵族といえる。小泉首相は大蔵族で、そのため銀行の“天敵”郵便局の無力化を狙って「郵政三事業民営化」を言っているとは、「郵政族」の陰口である。

◇関連『現代用語91-00』
[★郵政3事業〔流行語大賞'97〕]

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建設族

予算配分が多い土木・建築関係の公共投資を扱う建設省 (現国土交通省) の省益擁護団体なので、郵政族などと並び「小泉改革」反対勢力と見られている。建設族になると建設省に影響力を保持できるので、議員は地元に公共事業を引っ張ってくるのに有利となる。さらに、土木会社の差配まで行うこともできるし、土木・建築会社から利益の“還元”を受ける者も多い。

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国防族

多額の防衛予算が絡むので、船舶・飛行機・情報・通信など、防衛庁関連の大企業と太いパイプができる。その意味では、他の族議員と同様に利権集団であることは間違いない。同時に、軍備増強などを主張して“タカ派”色を鮮明に打ち出す、イデオロギー的性格の強い族議員集団となっている。国の安全保障政策に深い係わりを持っていることが特徴。

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圧力団体

“昔陸軍、今総評”と言われたのは1950〜60年代のこと。労働団体の総評 (主流派は連合を形成) は政府の決定を覆すほどの大きな影響力を誇っていた。現在は医師会・遺族会・各種宗教団体などが一定の影響力を持っているが、高年齢化や組織力の低下により、選挙では役に立たないという現実的な理由により急速に力を失っている。

◇関連『現代用語91-00』〜橋本元首相は日本遺族会の会長〜
[★橋本自民党新総裁 (Ryutaro Hashimoto as New President of LDP) 〔1996年版 政党〕]

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創価学会

公明党の“母体”とも言うべき宗教団体だが、選挙区での自民党協力を行うことにより政府への最大の“圧力団体”となっている。最大の理由は選挙での実績である。衆議院選挙区で10万票程度が当選ラインになった場合、創価学会は一選挙区で平均2万5000〜3万票を固定層として保持している。敵から味方になれば5〜6万票の差がつくわけで、自民党にとっては禁断の果実との指摘もある。

◇関連『現代用語91-00』
[★政界再編と宗教界〔1995年版 現代宗教〕]
[★新進党結成 (New Frontier Party) 〔1996年版 日本政治〕]
[★公明 (Koumei) 〔1996年版 政党〕]
[★創価学会の自民党候補支持〔1997年版 日本政治〕]
[★旧公明党勢力〔1999年版 政党〕]
[★公明党〔2000年版 政党〕]

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立正佼正会

会員数は公称500万人を超す創価学会に次ぐ大新宗教団体で、創価学会には強いライバル心を持っている。選挙運動でも創価学会への対抗心剥き出しで、公明党の対立候補への強力な選挙協力運動を展開していた。しかし近年、政治への係わりを選挙運動を含めてすべて中止したため、政治の場面での影響力を失った。ただし、潜在的な力はあるので、反公明党の候補者には力強い存在になっている。

◇関連『現代用語91-00』
[★政界再編と宗教界〔1995年版 現代宗教〕]

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ブレーンってどのような人

政治家が力をつけ、党や政府の要職につくようになると、政策や提言をする必要がある。これと思う人物 (学者・財界人・評論家・言論人など) を自分の勉強会や政府・官庁の諮問会議委員などに招いて、意見を聞くと同時に、その人物の資質を観察する。その中で選抜した人物を上級な諮問会議委員などに昇格させ、さらに深く観察する。それらに合格したものがブレーンとなるわけだが、なりたがらない有識者もいるし、反対に自薦でブレーンになりたがる人物も多いので玉石混交となっている。次々と政治家を渡り歩く“ブレーン”もいるので、米国式のブレーンは日本には存在しないという指摘もある。

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