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ちょっとおもしろい定数と法則のお話
著者 白鳥 敬

ちょっとおもしろい定数と法則のお話

ハッブルの法則  Hubble's law

アメリカの天文学者E・P・ハッブル(1889〜1953)は、1929年に「ハッブルの法則」発表しました。銀河のスペクトル線を観測し、遠い銀河ほど赤色のほうにシフトしている(赤方偏位)ことから、遠方の銀河ほど我々から速い速度で遠ざかっていることを発見したのです。現在の、ビッグバンから始まる膨張宇宙論の基礎となっている発見です。1メガパーセク(約326万光年)あたりの後退速度の増加量は75km/(s・Mpc)。これをハッブル定数といいます。NASAのハッブル宇宙望遠鏡は、E・P・ハッブルにちなんで名づけられたものです。

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グロッシュの法則  Grosch's law

1965年にアメリカのH・グロッシュによって提案された法則。「コンピュータの性能は価格の平方根に比例する。」つまり、2倍の性能のコンピュータを求めるのなら1.4倍高いコンピュータを買え、ということです。これは、まだ、メインフレームと呼ばれた大型汎用コンピュータの時代の話で、2倍の性能になっても価格は1.4倍にしかなりませんから高いものを買ったほうがおとくですよ、というセールストークの裏付けになったもの。後のこの法則は論駁され、現在は顧みられることがない。現在のパソコンは、価格が2倍になっても性能が4倍になっている例は少ないのではないでしょうか。

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ムーアの法則  Moore’s Law

半導体に集積されるトランジスタの数は18か月で2倍になる、という法則。インテル社の共同設立者のひとりであるG・ムーアが1965年に発表しました。1975年には、「18か月」を「18か月から24か月」に変更しています。現在まで、ほぼこれに近い感じで集積度があがってきましたが、半導体の配線間隔には物理的な限界があり、2010年代には限界に達すると言われています。

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オクターブの法則  law of octaves

原子を原子番号順に並べると、同じ性質をもつものが周期的に出てくるという性質(周期律)があります。これを周期表としてまとめたのが、ロシアのD・I・メンデレーエフで、1869年このとことです。それより何年か前に、イギリスのニューランズは、原子を原子量の順に配列すると8個めごとに同じ性質を持つ原子が現れることを見つけています。これを音楽の音階に似ているのでオクターブの法則と名づけました。科学史のひとコマではありますが、なかなか粋なネーミングです。

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ガウゼの法則  Gause's axiom

1934年に、旧ソ連のガウゼが実験によって実証した生物学の原理の一つ。食物や生息域が同じような生物は同じエリアでともに生存するのは難しいという考えかた。競争的排除原則とも呼ばれる。ガウゼの実験は、ゾウリムシと酵母菌を使った実験だったので、それ、人間などの高等生物にまで敷衍するのは難しいが、なんか、感覚的にはわかりやすい原則です。

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パーキンソンの法則  Parkinson's law

イギリスの社会学者パーキンソンが1957年に唱えたもの。第1法則は、「仕事を完成させるためには使うことができる時間をめいっぱい使うものだ」。第2法則は、「公務員の数は仕事の量に関係なく5〜7%の割合で増え続ける」というもの。

第2法則の根拠についてパーキンソンは、「公務員は自分の部下を増やすことを望み、ライバルを増やしたがらない」「公務員はお互いのためによけいな仕事をつくりだす」と言っています。当時のイギリス海軍などの状況を調べて編み出した法則だということですが、現在の日本にも十分当てはまっていると思われます。

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パーキンソンの法則(コンピュータ版ほか)  Parkinson's law

パーキンソンの法則の第1法則から派生して、「コンピュータのメモリーやハードディスクは、その容量いっぱいまで使われてしまうものだ」という法則もあります。確かに、これは頷けるものがあります。

また、パーキンソンの法則には、「入った金は同じだけ出る」「拡大は複雑さを招き、複雑さは組織を腐敗させる」といった、日本の官僚組織や周辺の関連特殊法人等を連想させてしまうものもあります。

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リボの法則  Ribo's law

フランスの心理学者セオドール=デュオ(1839〜1916)が唱えた、記憶に関する法則。記憶は時間の経過とともに忘却率が増大するというエビングハウスの忘却曲線は有名ですが、リボの法則は、新しい記憶ほど忘れられ、古い記憶は保持されるというもの。確かに、老人になって記憶力が落ちてくると、つい最近のことはすぐに忘れるのに、昔のことはよく覚えているということはよくあることです。

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リッコーの法則   Ricco's law

人間の感覚に関する法則。視覚がある物体を識別できるためには、コントラスト比がある閾値を超えないと識別できないというもの。視覚だけでなく皮膚感覚など、刺激する2点の間隔をすこしずつ縮めていくと、どこかで1点としか感じなくなります。

人間の感覚がすばらしくデリケートで高感度ですが、限界もあるということです。しかし、この限界があるからこそ、普通に快適に生きておれるのでしょう。もしも、皮膚で1マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)を識別できたら、目に見えないような埃がついただけでも、ちくちくするかもしれません。うまくできているものです。

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ボーデの法則  Bode's law

最初に言っておきますが、これは経験則による法則で科学的根拠はありません。1772年にドイツの天文学者ボーデが発表した法則。発案したのは、ドイツの数学者ティティウス。地球と太陽の間の平均距離を10とし、4+3×2^nの式を使って、nを水星は−∞、金星を0、地球を1、火星を2、小惑星を3、木星を4、土星を5、天王星を6として計算すると、それぞれの惑星の太陽からの平均距離の近似値が出るというもの。

後に、ボーデの法則が予見した距離に、天王星や小惑星が発見されました。しかし、海王星や冥王星は、まったくこの法則に該当しません。経験則で、しかも宇宙の話ですからそんなものです。ただし、同じ経験則でも日常生活に関わる経験則はけっこう合ってるものですが・・・。

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