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世の中不信になりそうです

マンション強度偽装事件とその周辺の用語集

姉歯物件(姉歯建築)/非姉歯物件(建築)

2005年11月、姉歯秀次・元1級建築士が、自身の手がけていた建築物の構造計算書を偽装していたことが発覚。姉歯・元建築士が関与し、耐震強度不足が問題とされた物件のことを「姉歯建築」「姉歯物件」とマスコミが呼称。その苗字の珍しさも手伝ってか、次第に「姉歯」という言葉がひとり歩きし、その結果、姉歯氏以外の建築士による偽装建築は「非姉歯(物件)」とよばれるようになった。

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ヒューザー  HUSER

個人向けマンションの建築・販売会社。姉歯・元1級建築士に構造計算書の偽装を指示した疑い。社名の「HUSER」の由来は、HUMAN+USERとされ、同社のウェブサイトによれば“「人間主義・理想追求型事業=ヒューマン+ユーザーカンパニー=ヒューザー」を社名に冠した私たちの企業理念です”とのこと。

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小嶋進(おじま・すすむ)

(株)ヒューザーの代表取締役(2006年2月現在)。1953年宮城県出身、宮城県立古川高校卒。1982年、恒和不動産を設立。その後マンション流通センター、ハウジングセンターへと商号を変更し、それぞれの代表取締役に就任。01年ヒューザーに社名変更。著書は「ヒューザーの100平方メートル超マンション物語」(IN通信社刊)。

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仙北の雄

宮城県古川市にある、小嶋進ヒューザー代表取締役の母校、宮城県立古川高校をさして言われる。1898年に宮城県尋常中学校志田郡立分校として創立。第三中学、古川中学を経て古川高校。1997年に創立100周年を迎えた伝統校。

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「刑事訴追のおそれ」

耐震強度偽装問題の発覚後、ヒューザー社の小嶋進社長が証人喚問で「刑事訴追のおそれ」を理由に答弁拒否を繰り返し、批判を浴びた。一連の耐震強度問題に限らず、証人喚問で問題の核心に迫る質問をされた際、答弁者が婉曲的に答弁を拒否する場合に頻出のフレーズ。証人喚問時には議院証言法により、自己または近親者が刑事責任を問われる事実や、業務上知り得た事実などについて、宣誓や証言、書類の提出を拒否できるとされている。

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構造計算用ソフト/国交省認定ソフト

構造計算用ソフトは、柱の太さや鉄筋の数といった部材の値と、風圧や地震などの「外からかかる力」の値を入力し、建築基準法の基準に合うかどうかを自動計算するソフトで、2005年12月現在106種類のソフトが国交相の認定を受けている。認定ソフトは、基準に合致していれば認定番号等が自動的に印字されることや、認定ソフトで作成した書類の場合、一部提出書類の省略が認められるなどのメリットがあるが、認定ソフトを使用した計算書でなければ申請書類として認められないということではない。ソフトに国交相の認定を与えているのは財団法人「日本建築センター」。

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Super Build/SS2

ユニオンシステム社の構造計算プログラム。国交省認定ソフトのひとつ。一連の耐震強度偽装問題で、姉歯・元建築士が使用していたプログラムとして一部で有名に。同社サイトではデモを閲覧することが可能。

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イーホームズ

建築物の指定確認検査機関。その他、指定性能評価機関、指定住宅性能評価機関などの業務を行う。代表取締役は藤田東吾。1997年創業、「イーホームズ」は99年設立。一連の耐震強度偽装問題では、姉歯・元建築士による構造計算書の偽装を見抜けなかったとして非難された。

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日本ERI

建築物の指定確認検査機関。ERIの名称はEvaluation(評価)、Rating(格付け)、Inspection(検査)に由来する。1999年の創業当初は社名を「日本イーアールアイ」としていた。アルファベット表記になったのは2003年より。一連の耐震強度偽装問題では、イーホームズと同じくその責任を非難された。

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総合経営研究所(総研)

1956年11月、内河経営コンサルタント事務所として創立。71年1月、現在の(株)総合経営研究所に。耐震強度偽装問題では、総研が平成設計を通して姉歯・元建築士に構造計算を依頼、また木村建設への経営指導をしていることなどから、問題全体の黒幕(フィクサー)的役割を果たしていたのではないかとされている。総研は自社のウェブサイトで黒幕説について否定している。

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民間検査機関(指定確認検査機関)

規制緩和の流れのなか1998年に建築基準法が改正され、それまで特定行政庁の建築主事が担当していた建築確認・検査の業務について、民間機関が行うことが可能になった。検査業務を行うためには、顧客獲得を企図して検査を緩くしか行わないおそれもある。一連の強度偽装問題の遠因ともいわれる。

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規制緩和

1996年度版本誌掲載。以下、

規制緩和とは、政府による民間活動に対する様々な公的規制を廃止・緩和すること。政治改革と共にわが国の経済社会の根本的な組み替えの手段として細川内閣によって提起された。一九九三(平成五)年一一月、「経済改革研究会」(平岩外四座長)は、経済的規制については「原則自由・例外規制」、社会的規制については「自己責任」とする方針を打ち出した。規制緩和が求められる背景には、(1)規制・保護を中心とした産業政策が経済のグローバル化に伴う企業活動の自由を阻害していること、(2)また、そうした産業政策が「不公正」として諸外国の強い批判を受けていること、(3)公的規制を媒介とした官僚機構、産業界、政治家との癒着が生じていること、(4)政治家主導の政策決定を阻害していることなどが挙げられる。しかし、規制緩和が失業の増大、産業の空洞化などマイナスの効果も持つことはアメリカが実証済み。規制緩和の具体的内容もさることながら、規制緩和後の社会の全体像を示すことが政治に求められている。

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性善説

中国の思想家、孟子が唱えた「人間が生まれながらに持つ性質は善である」という考え方。姉歯秀次・元1級建築士の偽造構造計算書を見逃したある行政責任者は「偽造はしないという性善説で審査していた」と発言。また、国交省の構造計算認定プログラムについても、同省担当者やソフトメーカーが口を揃えて「性善説を前提に開発(認定)をしていた」。他にも、初のリスニング試験実施でトラブルが頻発した、大学入試センター試験でも責任者が「(トラブルがあったと)手を挙げた受験生は、すべて再テストにすることを決めていた。性善説に立っている」と語るなど、「性善説」を言い訳にする発言が頻発。

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構造計算書(強度計算書)

建築基準法第20条に規定される建造物の強度を示す書類。強度を満たすために必要な鉄筋の量や、柱の太さ等を計算した書類のこと。

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建築基準法第20条

―― 建築物は、自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次に定める基準に適合するものでなければならない(後略)―― と定められている。これに基づいて、建築確認申請の際には構造計算書の提出が義務付けられている。なお、この条項の罰則は同法101条に規定されている。建築基準法は法令データ検索システムから閲覧可能。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO201.html

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建築確認/特定行政庁/建築主事

新たに建築しようとしている建物が、建築基準法などの法令や各種基準に違反していないかどうかを審査すること。この建築確認事務は建築主事という有資格者(その多くは地方公務員)によって行われ、建築主事をおく役所のことを「特定行政庁」という。建築基準法改正(1998年)により、民間委託ができるようになった。

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東横イン

東京を中心に全国で100以上のホテルを展開する、ビジネスホテルチェーン。2010年3月には300店(計画)、2022年3月には1045店(目標)の展開を目論む。1045店の目標はは東横(トー(10)ヨコ(45))から。2006年1月、横浜日本大通り駅日銀前店の不正改造が発覚したことを発端として、条例違反や法律違反の改造工事が次々と露見し問題となった。記者会見における西田憲正社長の発言・態度が物議を醸し、問題化。

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