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変換効率のお話
著者 白鳥 敬

変換効率のお話

永久機関(変換効率100%)

昔から、いろんな試みが行われてきた永久機関ですが、これには二つあって、第1種永久機関は、外部からエネルギーを加えなくても永遠に稼働し続けるもの。これは、熱力学第1法則(エネルギー保存の法則)に反するので存在しません。も一つの第二種永久機関は、加えたエネルギーを損失なく別の形のエネルギーとしてとり出す装置で、これは熱力学第2法則(エントロピー増大の法則)によって、存在が否定されます。第2種永久機関が実現すれば、効率100%のすばらしいシステムの登場となるのですが、残念ながら、すべてのメカニズム・システムは、入力したエネルギーよりとり出せるエネルギーのほうが小さくなります。

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ガソリンエンジン(変換効率16%)

シリンダーの中でガソリンと空気の混合気を爆発させてピストンを動かし、動力を得る最初の実用的な内燃機関は、1883年のダイムラーがつくった4サイクルガソリンエンジンです。その後のガソリンエンジンの進歩はすばらしいものがあります。このガソリンエンジンは、意外と効率が悪いのです。ガソリンエンジンの熱効率は、稼働の仕方で変わりますが、16%から26%程度。残り84%から74%は、エンジン内の摩擦や熱などに化けて逃げていってるのです。少なくとも、熱くなったラジエーター液の熱は何か有効に使えないものだろうか?

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電気モーター(変換効率97%)

巷ではエコカーとして燃料電池自動車が話題になっていますが、リチウムイオンバッテリーなどを電源としてモーターを回す、普通の電気自動車の開発も進められています。このモーターの効率というのが内燃機関と比べ物にならないほど高いのです。モーターの場合は、入力した電圧と電流の積と軸が出す機械的エネルギー(トルクと回転数に係数を掛けたもの)の比になります。電気自動車用のモーターの効率は、永久磁石型同期モーターで95から97%。ラジカセなどに使われている小型の直流モーターでも80%くらいの効率です。

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燃料電池(変換効率80%)

燃料電池自動車の開発が進んでいます。一部はすでに、官庁などで使用されていますが、まだ高価なので、普及し始めるにはまだ10年近くかかるでしょう。燃料電池自動車のいいところは、発電効率が非常によいことです。燃料電池自動車用の個体高分子型燃料電池の発電効率は35%から45%。個体酸化物型ではおよそ60%。排熱を利用して蒸気タービンなどを回して発電すれば総合効率は80%にもなります。

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火力発電(変換効率40%)

現在、電力の主力は原子力と並んで火力発電ですが、火力発電も、発電効率(熱効率)は40%程度です。しかも、送電線で電力を送るときに5%ほど損失します。ですから、家庭に送られる電力は、入力したエネルギーの35%程度です。これではあまりにも無駄が多いですね。コストさえ下がれば、各家庭に小型燃料電池を設置したほうがエネルギーの使用効率はよくなります。

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太陽電池(変換効率19%)

環境に優しい自然エネルギーの代表が太陽電池です。出力電気エネルギーと入力される太陽光エネルギーの比が太陽電池の変換効率。シリコンタイプの太陽電池では、単結晶型で15%から19%、多結晶型が12%から17%、アモルファスタイプが10%から12%。最も高性能な単結晶型の理論的最大値は30%程度と言われている。シリコンタイプの他、高い変換効率の化合物系のガリウムヒ素系太陽電池や、有機色素を使った低コストの色素増感型太陽電池があります。色素増感型の変換効率は7%から8%程度。

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水車(変換効率85%)

水力発電は、ダムに貯めた水を落下させてその勢いで水車を回して発電します。水の位置エネルギーを使用して発電するので、「化石燃料→熱→水蒸気→発電」という過程を通る火力発電より断然効率がよいのです。しかしながら、大規模な工事が必要ですから、それに要するエネルギーや水没する面積の広さを含めてエネルギー効率を計算すると、低くなるでしょう。家の前に小川があれば、水車をつくって、自宅用の電力を起こすのがいちばん効率がいいかもしれません。実際、河川の流れを利用する「ミニ・マイクロ水力発電」が、市町村単位で行われています。

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風車(変換効率60%)

自然エネルギーの一つとして風力発電が静かに普及し始めています。2003年3月現在、日本全国で443台の風力発電システムが稼働しています。風のエネルギーをプロペラの回転に変え、それを増速機で回転を速めて発電機を回して発電します。とり出せるエネルギーは、風の当たる面積(プロペラの回転面積)に比例し、風速の3乗に比例して大きくなります。風のエネルギーと発電できる電力のエネルギーの比が風力発電の効率で、最大で60%程度と言われています。なかなか効率がよいのですが、風が吹いてないと発電できないのと、発電コストが、1kWあたり、LNG火力が6.4円、原子力が5.9円、それに対して風力は10円から24円と割高です。

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プロペラ(変換効率80%)

航空機用のピストンエンジンの熱効率は27%程度。ジェットエンジン(ターボジェット)は、速度によって変わりますが、30%程度。熱効率は、エンジンに供給される燃料が持つ熱エネルギーとエンジンが出力するエネルギーの比です。また、プロペラで推進する飛行機は、エンジンが出す出力をプロペラで推力に変換するときに損失が出ますので、エンジンの出力の75%から80%ほどしか利用できません。これをプロペラ効率といいます。

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蛍(変換効率90%)

電球よりも効率のよい蛍光灯でも変換効率は20%程度。ところが蛍は90%以上の変換効率を持っています。蛍は、ルシフェリンという発光物質がルシフェラーゼという酵素の働きで酸化することによっておこります。変換効率の高い灯は熱を出しません。蛍光灯や白熱灯は点灯していると熱くなります。これは、エネルギーが光と同時に熱にも変換され、逃げていっているからです。これに対して蛍の光は熱を出しません。そのため、冷光と言われます。自然が作り出した絶妙なメカニズムに、人間はまだまだ接近できないようです。

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