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初日の出にまつわる数字のお話
著者 白鳥 敬

初日の出にまつわるお話

初日の出がいちばん早く見られる場所は?

お正月になると、この話題がテレビや新聞で話題になります。地球は、西から東に向かって自転していますから、東の方にある場所ほど早く日の出を見ることができます。ただし、地球の自転軸は、公転面に対して23度ほど傾いていますから、日本が冬のときは、南東の方向にある場所が最初に日の出を迎えます。人が住んでるところでは小笠原諸島がいちばん早く、午前6時20分。本州では犬吠埼の午前6時46分。これに対して夏至の頃は北東方向にある場所から日の出を迎えます。季節によって夜が明け始める場所が違うのですね。

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御来光

日本には初日の出を拝む風習があります。御来光を見るために山に登る人も多いようです。高い山の山頂のほうが、早く日の出を迎えますからありがたさもひとしおでしょう。国立天文台によると、標高3776mの富士山山頂の日の出は6時42分。

 本土で最も早い犬吠埼よりも4分早い! せっかく苦労して登山したわりには差は小さいような気もしますね。

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居住者のいないところなら南鳥島がいちばん

日本の領土で最も日の出が早いのは、南鳥島で午前5時57分。この島には気象庁や海上保安庁の職員が数名駐在していますが、彼らがいちばん早く初日の出を拝めることになります。

最東端の北海道納沙布岬は6時49分と富士山山頂の日の出時刻と大差ないですが、西のほうは日の出が遅くなります。鹿児島の佐多岬までいくと7時15分。沖縄の与那国島では7時32分。南国の夜明けは遅いようです。

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地球は丸い

富士山の上で日の出が早いのは、標高が高いので、それだけ遠くまで見通すことができるからです。地球が平らなら、空気さえ澄んでいれば、どこまでも見えるかもしれませんが、地球は丸いので見える距離には限りがあります。

では、どれくらいの距離まで見ることができるのでしょうか。地上の人の目の高さを1.7mとすると、5km先まで見ることができます。それより遠いところは地平線の下に隠れてしまいます。意外と短いものですね。ちなみに、富士山山頂(3776m)からは、なんと220km先まで見えます。

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マストの先端

近づいてくる船はマストの先端から見えてきます。でも、なかなか海のかなたをじっくり見てる暇がないし、また肉眼ではちょっと難しいかもしれません。そこで、計算してみました。

1.7mの高さから、水平線を見ていると、マストの先端は何m先で見えてくるのでしょう。マストの高さは、航海訓練所の帆船「日本丸」の海面から50mの高さを想定してみました。答えは、30kmです。高さがない対象物だと5km先までしか見えないのに、50mの高さがあると、30kmも先から見ることができるのです。ちなみに船のマストが高いのは信号旗を相手に見えやすくするためとか、無線アンテナを高いところにつけて電波が遠くまで飛ばすためです。

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山頂にあるもの

富士山山頂には、気象観測用のレーダーが設置されていて、1999年まで稼働していました。現在は解体され、山梨県富士吉田市の富士山レーダードーム館に展示されています。富士山山頂からの見通し距離は220kmですが、雲は上空にありますので、富士山レーダーはその2倍の500km先の雲まで観測することができました。

山の山頂には、気象レーダーを始めとする各種レーダーの他、マイクロウェーブの中継アンテナ、放送アンテなどが設置されています。中継アンテナは、山頂と山頂を結んでいますから、中継基地の数が少なくてすみます。これが地上で2mくらいの高さのアンテナだとしたら、5kmごとに設置しないといけませんが、2000mの高さに設置したアンテナどうしなら、320kmに一個でいいのです。大幅なコストダウンが可能ですね。

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飛行機とスペースシャトルから初日の出を見る

 ジェット旅客機は 10kmほど上空を飛んでいますが、そこからは、358km先まで見ることができます。八丈島の先の青ケ島あたりと同じ時刻に初日の出を拝めることになります。

 もしもスペースシャトルならどうでしょうか。スペースシャトルは350kmほどの高さを飛んでいますから、2141km先まで見えます。東京から南鳥島の少し先までくらいの距離です。こう考えると、スペースシャトルの飛行高度って意外と低いですね。

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静止衛星から日の出を見るとどうなる?

BS放送やCS放送で使われている衛星は3万6000km上空に静止している静止衛星です。この高さから日の出を見るとどうなるでしょうか。3万6千kmという距離は、地球の直径(約1万2740km)の2.8倍くらいの距離です。地球が丸い円に見える高さです。このときの見える距離は、衛星が真上にある場所から左右上下に9046km離れた場所までです。地球の全周が約4万kmですから、ほぼ半球が見通せるということです。

静止衛星から見る日の出は・・・もはや日の出というよりも地球の陰から太陽が現れるという感じでしょうね。

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空気がレンズになる?

このように、高く登れば登るほど遠くを見ることができます。実際は、空気の屈折率を考慮すると、目標物が浮かんで見えるので、さらに1.15倍ほど遠くまで見えます。

といっても、理論的な話であって、実際は、空気中の水蒸気・塵などのせいで透明度が悪くなりますから、とくに地平線ふきんの目標物は、理論通りには見えないでしょう。

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月でテレビを見ることができる?

電波は光よりもずっと波長の長い電磁波です。光の波長は500ナノメートル(1万分の5ミリメートル)前後ですが、テレビ放送のVHF帯の電波の波長は3メートルもあります。中波や短波帯の波長の長い電波は、電離層で反射して遠くまで伝わりますが、VHF帯以上の波長の短い電波が光と同じように伝わります。そのため、高さ1メートルのアンテナから出た電波は4km程先までしか届きません。実際は、空気の屈折率や山などによる反射でもう少し遠くまで届きます。

では、月で地球のテレビ放送を見ることはできるでしょうか。テレビ放送に使われているVHF帯やUHF帯の電波は電離層にじゃまされずに宇宙空間にまで飛んでいきますから、電波が充分に強ければ充分月でもテレビ放送を見ることができます。実際、アポロ月着陸船は、月から映像を送信してきました。

でも、テレビ局から出ている電波は出力が月に届くほどは強くなく、また主に水平方向に電波を出していて、垂直方向にはあまり強い電波が出ていないため、月で地球のテレビ放送を受信するためには、そうとう高感度のパラボラアンテナと受信機が必要になります。

将来、月面基地で、紅白歌合戦を見るためには、地上にも月面にも大きなパラボラアンテナが必要になるでしょう。

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