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トラブルや法律紛争から1年を振り返る用語集
執筆者 山口アイ子

少年たちの2004年

プロバイダ責任制限法

「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」。ネット上の掲示板やホームページなどを使って、他人の実名や顔写真を掲載し、誹謗中傷するなどの人権侵害の横行を抑制するため、2002(平成14)年に制定された法律。法律上は被害者本人(または代理人)から要請を受けるとその掲示板等を管理するプロバイダが原則として内容を削除するというもの。少年事件の加害者など本人が要請することが困難な場合に対応できないため、04年7月、業者団体が「法務省や法務局からの要請にも対応する」という運用ガイドラインを作成。10月には西鉄バスジャック事件(00年)の加害少年の顔写真を掲載したホームページに対し法務局から初の要請が出され、プロバイダが削除を行った。

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少年法の厳罰化

14歳未満の少年についても少年院への送致を可能にするという実質厳罰化の少年法改正案を法制審議会がまとめている。1997(平成9)年、14歳の少年が起こした神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件、2005年1月に加害少年は本退院見込み)を機に、少年法の厳罰化の必要が強く指摘されるようになり、00年、それまで16歳以上とされていた刑事処分の対象年齢が14歳以上に引き下げられた。しかしその後も長崎幼児誘拐事件(03年、犯人は12歳の少年)、佐世保小6女児殺害事件(04年、犯人は11歳の少女)など凶悪犯罪の低年齢化に歯止めはかからず、改正案が検討されているところだ。

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少年の処罰対象

現行の刑法では、14歳未満の少年は処罰対象とされていない。刑法など刑罰法規に違反する行為を行った14歳未満の少年は「触法少年」、生活態度などから見て将来触法少年となる可能性のある少年は「ぐ犯少年」と呼ばれる。触法少年については警察に補導された後、児童相談所に一時保護され、家庭裁判所でその後の処遇を決定(審判)される。通常、審判の内容は保護観察処分(民間の保護司などの指導監督の下で社会復帰をはかる)または児童自立支援施設(入所または通所により生活指導などを行う施設)などへの送致といったことで、主に触法少年の保護・更生が目的。2003(平成15)年の長崎幼児誘拐殺人事件の犯人である12歳の少年(犯行当時)も事件から3か月後に児童自立支援施設への送致が決定した。

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山形マット死事件

1993(平成5)年、山形県新庄市の市立中学校の体育倉庫に、巻いて縦に片付けられていた体操用マットの中で、当時13歳の少年が窒息死しているのが発見された。山形県警は、以前から被害少年に対するいじめを繰り返していたとみられる当時14歳の少年3人、13歳の少年3人、12歳の少年1人を逮捕・補導した。うち2人が少年院に送致されるなど処分を受けたが、少年らは捜査段階での自白をくつがえして事件への関与を否定。被害者の両親が起こした損害賠償請求訴訟では山形地方裁判所が少年らの無実を認定するなど(その後、判決を不服とした両親が控訴。仙台高等裁判所では少年らの事件関与を認め、損害賠償を命令。少年らは高裁の判決を不服として最高裁判所に上告している)、12年を経過した現在でも真相は明らかになっていない。この事件をきっかけに、少年事件の低年齢化、事実認定の難しさ、少年事件の捜査の手続き上の不備などが表面化し、少年法改正の動きが加速した。

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少年審判

罪を犯した少年について家庭裁判所が聞き取りや調査などを行い、今後の処遇を決めていくこと。20歳未満の少年は少年法によって守られており、少年審判は非公開で行われることになっている。しかし、2000(平成12)年に少年法が改正され、殺人など重大な犯罪において事実関係に争いがある場合などには、(1)従来は一人の裁判官が担当していたが、場合によっては複数の裁判官による合議制がとられるようになった(04年の佐世保小6女児殺害事件も3名の裁判官による合議制)、(2)事実の確認が難しい重大事件で、家庭裁判所が必要と認めたときは審判に検察官の出席を認めた、(3)改正前は被害者側への配慮は何もなかったが、要請に応じて意見の聴取、事件の記録の閲覧やコピー、審判の内容(主文)や理由についての通知などが行われるようになった、などの変更がなされている。

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