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春は新生活が始まる季節――《生活のお手本》のキーパーソンからキーワード
 

山崎えり子

“35年ローンを5年で返した”という伝説をもつ、〈節約〉といえばこの人であるが、その実像には〈節約〉ということばのもつ貧乏くささやケチな感じ、悲壮感がまったくない…そこが人気のワケである。

節約

モノや資源を大切にし、無駄にしないこと。山崎は「節約」をキーワードに料理、収納、買い物、さらには金融機関の上手な使い方まで、生活のあらゆる分野に工夫をこらしている。山崎は結婚直前、婚約者が交通事故で障害を負い、減収したことから節約生活を始める。たとえば自ら野菜を育て、料理はまとめて作ることで夫婦ふたりの食費を週2000円にまで削減。ただしなぜか悲壮感が感じられない。節約することで生活を豊かにする、というポジティブな哲学が無意識にだろうか、はたらいているのだ。

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ローン

loan 貸付け、貸付金の意。ほとんどの人間(とりわけ家庭人)にとって重苦しい響きをもつことば。山崎は結婚後、マンションを購入し、2000万円35年返済のローンを組んだ。だが、年利などを計算して支払い総額が4000万にものぼることを確認、さまざまなアイディアを駆使して生活費を切り詰め、ついに5年強で全額返済し終えた。そのアイディアを綴ったのがベストセラーとなった「節約生活のススメ」で、山崎はこれで一躍名を知られるようになった。

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28時間時計

山崎考案による生活アイディアの一つ。1時間=60分のところを50分と考えて行動すれば、1日が28時間ぶん使える、という発想。みずからの仕事場には実際に28時間時計(もちろん手製)を置いて使っているという。「1日=24時間」という常識にとらわれず、前提そのものを疑ってみるという、山崎流の発想がよくあらわれた例。

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3つのK

山崎流ライフスタイルの基本となる考え方。「健康」「環境」「倹約」の3つ。山崎は小学生のころから喘息に悩まされていたが、モノの少ない生活を送るようになってハウスダストが激減、アレルギーテストを受けたところ陰性になっていた。また、家具が少ないと風の通りを邪魔するものがなく、夏の暑さも自然の風で乗り切れたという。彼女の一つ一つのアイディアをみてみると、3つのKが非常にうまく連動している。そこが「無理のない」感じを与えている。

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エコエコクッキング

山崎が提唱するアイディアの一つ。経済的(エコノミー)かつ環境に配慮した(エコロジー)料理法のこと。たとえば、野菜の切れ端を酢につけこんでドレッシングを作ったり、漬かった野菜の方は小さく刻んでつまみやピクルスの代用品にする。こうすることによって、出費も減らせるし、ゴミの量も大幅に少なくなるという。

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「おやじの味の会」

山崎が不定期に開いている料理教室のようなもの。仕事の都合で一人暮らしをしている知人から料理を教えて欲しいと請われたことがきっかけで発足。メンバーの職業は会社員、公務員、新聞記者などばらばら。キャベツ半分だけを使った煮込みと炒め物、小麦粉と小豆1缶だけを使って1人50円でつくる「ぜんざい風すいとん」など、手間もお金もかけない料理を伝授する。この会のメニューについては「山崎えり子のマイナス・クッキング」(小学館文庫)にくわしい。

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「わたしのお金ノート」

山崎のアイディアによって製作された簡易家計簿(祥伝社刊)。きちんとした家計簿をなかなかつけ続けられなかった経験をもとに、思い切って「基本生活費」「ゆとり費」「不時の出費」などに細目を簡略化。また、通帳から引き落とされる光熱費などはまとめて別枠に記入することで、さらに手間を省く。スケジュール帳、カード利用控え、医療費控えも兼ねた便利な1冊。ただし、最初からきちんと付けられる人には大雑把すぎて不評とか。

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代用

あるものの代わりに、ほかの品を用いて済ませること。山崎の基本姿勢の一つで、わざわざ新しい品物を購入するのではなく、あるものでやりくりして費用も資源も節約しようというスタンス。たとえば、ワインをストックするのに、スリッパラックを倒したもので代用するとか、クッキーの型抜きをラップの芯でおこなったりというように、身近なものが思いがけない方法で再利用されている。

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理科

自然科学に関する学科。山崎のアイディアの基本にはしばしば理科的な裏づけがほどこされている。たとえば、米ぬかを洗剤の代わりに用いることを勧めているが、これは「サポニン成分」が汚れを吸着するためである、と解説している。また、手作りでラジオやスピーカーを作る方法を紹介するなど、科学的なものへの山崎の興味は幅広く、深い。

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ドイツ連邦共和国

Federal Republic of Germany ヨーロッパ中北部にある主要国。首都ベルリン。人口約8202万人(2000年推定)。国の成り立ち、文化のベースとなっているゲルマン人の気質=質実剛健・整理整頓・潔癖・徹底癖によって、私たちは「ドイツ製」「ドイツ家庭夫人の知恵」「マイスターの技」という言葉に好感と憧れをもつ。日本人のめざしたいものと共通する部分が多いのだ。果たして実際も然り。さて山崎は大学卒業後、公務員として福祉関係の業務に従事。仕事で日本とドイツを往復するうち、ドイツ人のシンプルで合理的な生活、モノを大切に使い続ける態度に感銘を受け、これがみずからの生活のヒントになっているという。

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