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勝敗の彼岸、来年はがんばろう、あきらめずにがんばろうの用語集
 

格差と分配

勝敗、優劣というのは“格差”をうむ。それは是正されるべきものなのかどうか。

格差現象

本誌1976年版収録。以下、

二重構造を基本的な特徴とするわが国の経済から必然的に生ずる企業規模別の格差。大企業から中小・零細企業と、企業の規模が小さくなるほど、経営内容も、給与その他の労働条件も、急傾斜で悪くなる。

たとえば、賃金格差(wage disparity)で見れば、従業員500人以上の大規模の企業の賃金を100とすれば、従業員100人から400人の中規模企業では、その76.2、従業員5人以上のところでは64.9である。このように企業の規模に応じて急角度に悪化するので、二重構造を傾斜構造と呼ぶこともある。格差には、賃金のほか、いくつかの現象がある。生産性格差(productivity-disparity, disparity in productivity)とは、企業の規模により、従業員一人当りが作り出す価値の大きさが異なる現象をさし、わが国では大企業と零細企業では6対1の割合になっている。

このような格差が生じる一因は資本集約度格差で、これは、従業員一人当りが使用する資本の額で測る。これによると、最低の零細企業は大企業に対して10分の1という開きを見せている。したがってまた、大企業と中小・零細企業では、大きな技術格差(disparity in technique, technical-disparity)が存在する。わが国の経済発展は、大企業を中心にし、そこに資本が集中するようになっているため、経済発展とともに以上のような格差がしだいに拡大し、それが二重構造を強めてきた。二重構造の頂点と底辺の間には、系列化などを通じる支配と従属の関係が横たわっている。

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賃金格差

本誌1957年版収録。以下、

労働者に支給される賃金に開きがあることをいう。賃金格差を個人的に見れば、職業、年齢、性別、学歴、勤続年限等によつて異り、地域、産業、業種、企業規模等によつて違つている。国際的にも賃金格差は存在するが、最近、国内的には中小企業と大企業の賃金格差、陽の当る産業と当らぬ産業の賃金格差や、同一企業でも職階給などに原因する上下差のいちじるしい増大などが問題とされている。

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労働分配率〔1964〕

本誌1964年版初出。以下、

生産性向上の労働者側への分配比率。賃金論議に当たり、労使間で常に論争の焦点になる。労働組合側は「生産性の向上に比較して労働者への分け前が少ない」と主張し、使用者側は「これ以上大幅の賃上げをするとコスト・インフレになる」と反論する。

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労働分配率〔1970〕

本誌1970年版収録。以下、

lobor's relative share。一国の経済、特定の産業、または企業について、その作り出した所得ないし付加価値のなかにおける賃金、俸給の割合。その計算方法としては国民所得のなかに占める賃金、俸給の割合を求める方法と、特定の産業または企業の生産額のなかから、原料費と設備・機械など減価償却費など物的なコストを差し引いて、付加価値を算出し、そのなかに占める賃金、俸給の割合を求める方法とがある。日本の労働分配率は国際的にみると低く、経済成長の下で低下する傾向にある。

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労働分配率〔1978〕

本誌1978年版収録。以下、

labor share。国の経済、特定の産業、または企業について、その作り出した所得ないし付加価値のなかにおける賃金の割合をいう。国の経済単位でみる場合には国民所得のなかに占める賃金の割合を、特定の産業または企業単位でみる場合にはそれぞれの生産額のなかから、原料費と設備、機械などの減価償却費など物的なコストを差引いて、付加価値を算出し、その中に占める賃金の割合を出す。一般に労働者への分配率が高ければ、それだけ労働者の生活は豊かになり、生活水準は上昇するが、産業ないし企業にとってはそれだけコスト要因が高くなる。昭和40年代前半では主要企業の労働分配率は比較的安定し、40〜45%にとどまっていたが、後半には上昇に転じ、特に49年下期には50%を超え、その改善が問題となっている。

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労働分配率〔1981〕

本誌1981年版収録。以下、

labor share。国の経済、特定の産業、または企業について、その作り出した所得ないし付加価値のなかにおける賃金の割合をいう。国の経済単位でみる場合には国民所得のなかに占める賃金の割合を、特定の産業または企業単位でみる場合にはそれぞれの生産額のなかから、原料費と設備、機械などの減価償却費など物的なコストを差引いて、付加価値を算出し、その中に占める賃金の割合を出す。一般に労働者への分配率が高ければ、それだけ労働者の生活は豊かになり、生活水準は上昇するが、産業ないし企業にとってはそれだけコスト要因が高くなる。昭和40年代前半では主要企業の労働分配率は比較釣安定し、40〜45%にとどまっていたが、後半には上昇に転じ、特に49年下期には50%を超え、50年度上期には58.9%に達したのち下降し、54年度は46.4%となっている。

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学費格差判決

本誌1981年版収録。以下、

私立高校の父母たちが国に対し、公立高校との学費差額の支払を損害賠償として求めた訴訟で、昭和55年5月、大阪地裁で判決があった。

訴訟を起こしたのは50年で、当時の約40倍という学費格差は、憲法26条の教育を受ける権利を侵害している。これは国会や内閣が有効な立法や行政措置を怠ってきたためで国は賠償責任があるとしたものである。判決は、「立法、行政措置についての国会、内閣の裁量権の範囲はきわめて広く、現行施策がその範囲を超えて違憲とまではいえない」とした。しかし、同時に、学費格差の現状に対し、「原告らの子女の学費支出に伴う経済的困難及びその心情はこれを察しうる」として、原告に対して理解を示した。

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インフォメーション・ギャップ(情報格差)〔1973〕

本誌1973年版収録。以下、

information gap。情報技術の国際的ギャップの意。数年前からヨーロッパ諸国の間とアメリカとの間の宇宙開発や超音速機などを中心としたテクノロジー・ギャップが問題になり、その原因は両国間のマネジメント・ギャップにあるとみられていた。最近はインフォメーション・ギャップがこれからの国際競争力の格差をつける重要な要因になるという認識が強まってきた。

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インフォメーション・ギャップ(情報格差)〔1987〕

本誌1987年版収録。以下、

information gap。情報技術の国際的ギャップの意。従来から先進国と発展途上国間のインダストリアル・ギャップ(industrial gap)が問題になっていたが、これに加えて情報ギャップ問題が起こってきた。そこで二重のテクノロジー・ギャップ(technology gap)を同時的に解決する方策の重要性が認識されはじめてきた。

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米の品質格差(うまさ格差)

本誌1981年版収録。以下、

昭和54年産米の政府買入れについて、はじめて導入された。うまい米は概して作りにくいので、消費促進と過剰防止のため、買入れ価格に差をつけようという主張もあったが、実際には、米のうまさは品種だけできまらず、栽培方法、乾燥方法等によっても影響されていたので、銘柄奨励金を若干出していたにとどまる。銘柄格差である。54年には過剰問題が深刻の度を増したので、味の科学的研究はともかくとして市場原理にたより、<1>自主流通米の価格が買入れ価格より300円以上高くて自主流通量が出回り量の30%以上の銘柄、<2>価格100円高・自主流通量10%以上の銘柄、およびその他の銘柄のうち、<3>一般の産米、<4>青森県東部などの産米、<5>北海道の産米、の5つに区分し、60kg当りにしてプラス400円、プラス250円、ゼロ、マイナス200円、マイナス600円という品質格差をつけることにした。結局は、損をすることとなる北海道などの米作農家のために緩和措置をとるという「政治加算」がつけくわえられることになったが、市場原理を土台とする品質格差という考え方が政策米価の中に貫徹したことの意味は大きく、今後が注目される。

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所得格差・資産格差

本誌1991年版収録。以下、

円高不況を乗り切ってからの今回の景気拡大過程で、所得と資産の両面で家計の間の格差が拡大してきて、新たな問題を生み出している。

土地資産について、1990年版『経済白書』は、「現在家を持たず、かつ相続も期待できない世帯が3割以上ある」と指摘し、「人生のスタート時点における(潜在的)資産格差が従来よりも拡大し、機会の平等が相当程度浸食されている」という。ただし金融資産については「やや通念と異なるかもしれないが、85年以降格差の拡大は明瞭には見られない」と、『白書』は意外なことも言っている。

所得格差について『白書』は、「従来、所得の不均等度は、不況期に上昇し、好況期に下落するという循環的パターンがみられた」が、「今回の景気上昇局面では、明瞭な格差の縮小は認められない」と認定している。所得のうちの勤労所得の格差について、産業別、企業規模別でみて、賃金も、それにフリンジ・ベネフィットを加えれば、なおさら、拡大傾向にあるとしている。

格差の問題は、その他、法人企業対家計、地域間、男女間、年齢間など、多様な局面をもっている。

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所得再分配政策

本誌1991年版収録。以下、

連合は1991(平成3)年度の政策・制度要求の一つとして「所得再分配」を提唱した。地価や株価の急騰による国民間の資産格差の拡大に対応して大土地保有税の創設、住民税減税と抱き合わせの固定資産税の強化等を含め、弱者に対する所得保障等の総合福祉ビジョンを折り込んでいる。

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世代会計

本誌1996年版収録。以下、

各世代別に、政府に対する支払い(税金の納付、国債の購入、年金の支払い)と政府からの受け取り(補助金の受け取り、国債の利払いの受け取り、年金給付)をそれぞれ分類して、しかもそれをある世代に属している人が一生の間に合計でどれだけ受け取ったり支払ったりしているかを計算して、世代別の損得勘定を確定することを、世代会計という。このような作業は、近年アメリカの有力な財政学者であるコトリコフ(L.J.Kotlikoff)らによって提唱され、最近ではわが国を含めて主要な先進諸国で、数量的な作業が進められている。世代別のトータルな損得勘定が確定すれば、財政制度によって、どのような世代間の再分配が行われているのかが明確になる。

また、世代会計はストックベースの指標であり、フローベースの指標である財政赤字よりも、ストック化した経済では財政に関するより有益な指標と考えられている。

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なんとかしろ主義

本誌1973年版収録。以下、

Do Something-ism。ぐあいの悪い、不快な状況に「なんとかしろ」と不平、不満をぶつける立場のことで、「こうしろ」といった特定の方向性を持った提案や代案はもたない。したがってどんな方向性のものであれ、とにかく不安定な状況にケリがつけば満足する。現代人のあせりと不安が生み出した無方向性の情緒反応であるという。アメリカのベトナム政策に対して、数年前からアメリカの大衆心理のなかに、この「なんとかしろ主義」とでもいうべき風潮がめばえてきていると、社会学者は指摘している。

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収穫配分式

本誌1973年版収録。以下、

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の協同農場が毎年12月に里をあげて農作を祝う「村祭り」。朝鮮の農業は社会主義農業の模範といわれ、土地の集団所有は高度の段階に達し、水利化・電化・機械化・化学化の「四化運動」がすすみ、農業生産は飛躍的に発展した。この発展の原動力が里ごとに組織されている協同農場である。収穫配分式は、協同農場の年に一度の最大の祝賀行事であり、農場管理委員会前の広場に全村民が集まり、この一年間の各個人の作業日点数の発表と収穫物現金収入の配分、作業班ごとの褒賞が行なわれる。このあと村人たちによって歌や踊りや芝居が行なわれ、一年のしめくくりと新年への抱負が語られる。

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ソ連の新労働分配原則

本誌1978年版収録。以下、

1977年10月7日に採択されたソ違新憲法13条は、前憲法(1936年制定)の「働かざる者は食うべからず」(12条)とする「国民皆労働」の原則を修正し、「国家は『各人の能力に応じて働き、労働に応じて受け取る』という原則に基づいて、労働と消費量に対する統制を実施する。国家は所得税の額を決定し、課税を免除される賃金の水準を定める」として新しい労働分配原則を打ちたてた。

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世界貧困撲滅年

本誌1996年版収録。以下、

World Year of Eradication of Poverty。

南北格差の拡大、南の世界の急速な工業化に伴い、世界的に貧困人口は確実に増えており、90年代に入って12億、南の人口の4人に1人が貧困状態にあるとみられる。これまで貧困という言葉が聞かれなかった中国でも、93年秋に世界銀行と中国政府の共催で開かれた貧困問題セミナーでは、全国で1億1000万人が貧困状態にあると報告され、内陸の貧困県に援助を向けていく方針が確認された。95年3月にコペンハーゲン市で開かれた社会開発サミットの際には、国連開発計画が「世界貧困時計」を設け、毎日4万人以上が新たに「日当1ドル以下の貧困層」に加わっていく現実を示した。このサミットで世界の首脳たちは96年を「世界貧困撲滅の年」に指定し、96〜2005年の10年間を「貧困撲滅の10年」として貧困緩和をすすめていくことをとり決めた。しかし、貧困には低所得、失業の問題と共に、差別、人権蹂躪、環境破壊等に発する面もあり、国・地域・社会層ごとにきめ細かい対策を立てていく必要がある。

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世界貧困解消の10年

本誌1997年版収録。以下、

World Decade for Eradication of Poverty。

南北格差の拡大、南の世界の急速な工業化に伴い、世界的に貧困人口は確実に増えており、1990年代に入って12億、南の人口の4人に1人が貧困状態にあるとみられる。95年3月にコペンハーゲン市で開かれた国連社会開発サミットで世界の首脳たちは96年を「世界貧困解消の年」に指定し、1996〜2005年の10年間を「貧困解消の10年」として貧困緩和をすすめていくことをとり決めた。96年5月にDACが採択した新援助戦略では、2025年までの貧困人口半減をうち出し、国際開発の重点項目として、貧困問題がクローズアップされてきた。しかし、貧困には低所得、失業の問題と共に、差別、人権蹂躪、環境破壊等に発する面もあり、国・地域・社会層ごとにきめ細かい対策を立てていく必要がある。

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アファーマティブ・アクション

affirmative action。文字どおりの意味は積極的行動。被差別集団が過去における差別の累積により他の集団と比べ著しく不平等な状態に置かれているような場合、格差の急速な是正のためにとられる積極的な優遇措置。政府機関や民間企業に対して一定割合の黒人や女性を雇用するよう義務づけた割当制(quota system)がその主要な方策である。共和党政権はこの対策については、少数派が明らかに差別されている場合のみ発動されるべきで、少数派ゆえに優遇されることは平等をうたった憲法の趣旨に反する、との立場をとった。最近では白人男性中間層を中心にこの制度に不満を持つ人々が増えており、制度を変えようとする動きも活発になっている。

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