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そろそろ秋…透明度と涼しさをテーマの基準と単位
著者 白鳥 敬

透明度と涼しさをテーマの基準と単位

ろうそく1本の明るさで生活できるか

8月も末になると、そろそろ暑さも和らぎ、秋の気配がただよってくる。秋といえば、なにか明かりが恋しくなる季節でもある。たまにはキャンドル(ろうそく)に灯をともし、ロマンチックな雰囲気を味わってみるのもいいが、その明るさは、いったいどれくらいだろうか。明るさの単位には「カンデラ(光度、記号:Cd)」、「ルクス(照度、記号:lx)」、「ルーメン(光束、記号:lm)」、それと「輝度」という単位がある。ろうそくでいうと、炎の明るさがカンデラ、周囲を照らしている光の量がルーメン、炎の単位面積あたりの明るさが輝度、光を浴びいてるテーブルの明るさがルクス。カンデラの語源は樹脂ろうそくを意味するラテン語の「カンデーラ(candela)」。かなり小さいろうそく1本の明るさがだいたい1カンデラ。

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満月の明るさで本は読めるか

仲秋の十五夜(今年は9/21日)には、おだんごを供えて満月の夜を楽しもう。ところで、満月の夜は懐中電灯を持たずとも、十分に歩けるが、いったいどれくらいの明るさなのだろうか。満月の夜の明るさは、0.2ルクスといわれている。これは、月が南の地平線から高い角度に出ているときの明るさで、低い位置に月がある場合は、もう少し暗い。夏の月は、あまり高く上らず、天頂より南の地平線に近い位置を移動する。それに対して冬の月は、天頂近くにまで高く上り煌々と輝く。0.2ルクスとは、1m離れた位置での0.2カンデラの明るさ。つまり満月の夜は、消えかけた小さなろうそくの灯りくらいの明るさなのだが、実際はもっと明るいように感ずる。薄暗い場所に目が慣れると、瞳孔が開くことができる最大値(7mm)まで開くからだろう。しかし、本を読むには厳しいかもしれない。

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星明かりで影ができるか?

月のない夜の明るさはどれくらいだろうか。晴天の夜で、0.0003ルクス。このうち、20%は星灯りによるもの。残りの80%は大気が放つ夜光。現実には、地上の街灯りなどが反射・散乱して日本の夜空は、空気のきれいな山奥にでもいかない限り、かなり明るい。星明かりは、1等星が100万分の1ルクス。光の強さは距離の2乗に反比例するから、1等星は1カンデラのろうそくを1000m離れたところで見た明るさということになる。6等星は1等星の100分の1の明るさだから、同じ明るさのろうそくを10km先から見た明るさ。人間の目で見ることができるもっとも暗い星は6等星だから、人間はかなり暗い灯りを認識することができるということだ。さて天文研究家によると、最大でマイナス4.3等級にもなる金星の光では、物体の影を作ることができるそうだ。そう考えると星灯りは想像以上に明るい。

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もっとも透明度の高い湖はどこ?

秋の空気は澄みきっていて遠くの山がくっきり見える日が多く、ハイキングに絶好の季節。では、ハイキングコースにうってつけの、透明度の高い湖はどこか。1位は摩周湖(北海道)25.5m、2位は然別湖(北海道)19.5m、3位は倶多楽湖(北海道)19.0m、4位は支笏湖(北海道)18.0m。北海道以外の湖沼では、栃木県の中禅寺湖が13.5mで7位、青森県の十和田湖が12.5mで10位。(国土交通省の資料より)数値については、調査時期により若干の相違があるようだ。秋田県の田沢湖は38mの透明度を記録したこともあるという。ところで、透明度とは? これは、30cm四方の白い板を沈め、それが見えなくなる深さのこと。25mの水深にあるものがはっきりと見える、ということではない。

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透明度を理論的限界値まで実現したものは?

もっとも透明度が高い物質はなんだろう。空気か水かそれとも…。空気は水蒸気や塵などの不純物を含んでいなければ、大気圏をつらぬいて宇宙を見ることもできるので、可視光に関しては透明度が優れている。水は、普通4m程度で光の強さが半分になってしまう。レンズなどに使われる光学ガラスでも5mでほぼ半分の強さになる。物質の中でもっとも透明度が高いもののひとつは光ファイバーに使用される石英ガラスだ。15kmでようやく光の強度が半分になる。これは光を伝えるときの損失が小さいから。光ファイバーをとおしたときの光の損失は、1kmあたり0.2デシベル(dB)。これは石英ガラスの理論限界値に近い。現在は、これを上回る透明度を持つ(低損失の)光ファイバーも実用化されている。

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世界初の光ファイバーの損失は99%

光や電波の損失を表す単位は、デシベル(dB)。対数を用いた単位なので少しわかりいくい。そこで、簡単にイメージをつかめるように、デシベルが具体的に何%くらいの損失になるのかを記しておこう。石英ガラスを使用した光ファイバーの理論的限界値が1kmあたり0.2デシベルと前項で書いたが、これは、これは約4.5%の損失ということになる。1970年に米コーニング社が初めて光ファイバーの実用化の糸口を見つけ出したときの損失は1kmあたり20デシベルだった。これは、99%の損失を意味している。99%も光を損失すると、ほとんど何も見えないに等しいような気もするが、これが最初の光ファイバー。

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宇宙は透明?不透明? いったいどこまで見えるのか

米NASAのハッブル宇宙望遠鏡は、100億光年以上も彼方の世界を見せてくれた。大気の揺らぎや散乱や吸収の影響のない真空の宇宙空間の透明度は抜群ということだ。星間物質が密集しているところや暗黒星雲の無いところなら、ほとんど無限といってもいい透明度を持つ。宇宙の彼方はいったいどこまで見ることができるのだろうか。ハッブル宇宙望遠鏡を使えば、どこまでも見えそうなものだが、実際は、宇宙は膨張を続けており、遠方ほど速い速度で遠ざかっている。そのため、光の速度を超えて遠ざかっている星雲の姿は地球からは絶対に見ることができない。宇宙の年齢については諸説があるが、120億年から140億年くらいではないかといわれている。もしビッグバン理論が正しければ、140億光年より遠くには何も存在しないことになる。宇宙の透明度がいくら上がっても宇宙の果ては見えてこないということだ。

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高原はなぜ涼しい――100m上がると何℃温度が下がる?

夏でも高原にいくと涼しい。軽井沢や那須が避暑地に選ばれるわけだ。ところで、なぜ、高原は涼しいのだろうか。高度が上がるにしたがって気圧が低くなる。気圧が低くなると空気が膨張し、気温が下がるというわでだ。高度が上がるにつれて気温が下がる割合を気温の減率と言う。この値は1000mにつき6.5℃。(この値は、平均値なので、実際は異なることもある。)標高1000mの高原では、地上気温が30℃のときに23.5℃ということになる。2000mの高地では、17℃と寒いくらいの気温になってしまう。標高3776mの富士山山頂では、地上より24℃以上も低い6℃となり、凍えそうな気温になってしまう。だから高原や山にでかけるときは、服を余分に持っていくよう心がけたほうがよい。

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体感温度――湿度と風と…

風速が1m/秒強くなると体感温度が1℃下がるといわれる。これはどのようにして求めるのだろうか。体感温度に影響を与えるのは風速の他、湿度と日射量とこれらの変化の早さだ。変化が緩やかだと人間は影響を感じにくい。体感温度(T)は次のリンケの公式で求めることができる。

T = t - 4 √v (t:実際の気温 ℃、v:風速 m/秒)

気温が20℃、風速9m/秒なら、体感温度は8℃。

気温が氷点下のときは、体感温度はこの式以上に下がる。

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虫の音と騒音――デシベルA

秋といえば、虫の音。涼しさをいっそう引き立ててくれる虫の音だが、時によってはかなり大きな音で聞こえる。実際どれくらいの音で虫は鳴いているのだろうか。騒音の大きさを示す単位にデシベル(dB)がある。虫の音の大きさは20〜40デシベルくらい。小鳥の鳴き声が40デシベルくらい。音にはいろんな周波数が含まれているため、人間の聴覚にあわせた重み付けを行っており、この音のレベルをデシベルAと言う。音の強さが10倍になると人間の耳にはほぼ2倍の音に聞こえるから、10デシベル大きな騒音は2倍の大きさで聞こえるということだ。人間が音として聞くことができる大きさは120デシベルくらいまで。これ以上の大きな音は痛みとして感ずる。虫の音はなにかを語りかけているように心を和ませるが、これは日本人の脳の特性らしい。

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