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戦後史のお金事典
いまの私たちは“どれだけ窮まっている”のか?
 

財政のお金

財政資金

1948年版本誌収録。以下、

国家所得のうちで国家(地方政府をも含む)の財政維持のために吸収される資金である。国民所得を資金の面からみれば、国民生活を確保するための消費資金、産業の再生産を維持するための産業資金、国家機構維持を目的とする財政資金に大別される。従ってこのうちどれかが多くなれば他を圧迫する。昭和22(1947)年度の国民所得は安本(→別項)推定によると1兆1000億円であり、財政資金は、一般会計、特別会計、地方財政の重複勘定を控除した純計は5057億円であるから、その割合は4割5分にあたる。23年度は国民所得1兆9000億円、財政資金の純総額9479億円であるからその割合が4割9分と増大している。これは国民の消費資金を圧迫することによってわれわれの生活を一段と悪化させ、産業資金に喰い込むことによって再生産を阻害する結果となっている。

★財政資金が産業を強力にバックアップしていることが「官民一体」「日本株式会社」であるとしてアメリカからたたかれ、また財政資金(公共事業)で生活している地方有権者の《均衡ある発展》体質が、都市層からたたかれるのはこれより20年以上後のことである。

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安本

1948年版本誌収録。以下、

経済安定本部。経本とも略称。戦後経済の速やかな復興を図るため昭和21(1946)年8月設置。内閣と同格の地位にあり、物資の生産・配給・消費・金融・物価・労働・輸送等に関する緊急経済政策を立案決定するとともにこれを各省に実施せしめ、それらの事務の総合、調整、監査にあたる。基本的な経済政策は内閣の如何によっては左右されぬ一貫性を持ち得るようにする建前で…。

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イロア資金

1948年版本誌収録。以下、

Economic Rehabilitation in Occupied Area Fund の頭文字を連ねた略語で、占領地域復興費をさす。即ち、米陸軍省が議会に提出要求した東亜諸地域(日本、朝鮮、琉球)に対するイロア資金2億2000万ドルのうち、1億2500万ドルだけが両院協議会で認められたことは耳新しいことである。

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ガリオア資金

1948年版本誌収録。以下、

Government Account for Relief in Occupied Area Fund の頭文字を連ねた略語で、米国陸海軍省予算中の占領地救済策のことである。わが国の食糧、肥料等必需物資がこれによって輸入されており、1948-49年度における同費は日、鮮(★現在の南北朝鮮地域)、オーストリア、ドイツ向け合わせて13億2500万ドルと決定した。そのうち4億3000万ドル程度が日鮮向けになる模様である。

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見返り資金

《1950年版本誌収録。以下、》

本年2月来朝したジョセフ・ドッジ氏の指示により、本年度から本会計年度中に受領を予想されるアメリカ対日援助の総額に相当する円貨の額を見返円資金特別会計予算に組込み、最高司令官の管理の下に日本政府によって使用されることとなった。この資金を見返り資金という。

この制度はマーシャル・プランによってアメリカの援助をうけている諸国では、アメリカと被援助国との双務協定においてすでにCounterpart Fundとして実施されている。同じことが日本にも要求されたわけである。この資金の主な使途は政府負債の償還および『経済再建に直接かつ迅速に寄与する資本投資』にあるとされている。本年の年間資金総額は1400億円であり、8月末現在において貿易特別会計から繰入れられた額は約460億円(4、5月分)で、すでに鉄道、通信両事業に127億円が放出されている。私企業への直接投資の方は、資金コストが案外割高につきかつ借入条件がむずかしいので、予想されたほど申込が多くなく8月末現在で20件数、21億円であるが、未だ許可されたものは1件もない。

この資金を予算に計上することは、その額が不確定であるので--例えば当初の年間額は1750億円と見込まれた--適当であるかどうか、資金放出について復金の二の舞になりはせぬか、又財政および日本産業の最も重要な部分への投資が外国資金に依存することは日本経済自立のみちであるかどうか等種々の問題が提起されている。

《本誌1951年版収録。以下、》

米国から我国への輸入品は、主に占領地救済費や、占領地復興費による対日援助物資である。この物資は、米国議会の協賛を経たドル資金で買入れられた食糧・肥料・薬品・石油製品・工業原料などであるが、これらの輸入品が国内において処理換金され、一定金額に積み立てられると、貿易資金から見返り勘定に移される。これが日本経済復興のために利用を許される見返り資金である。その積立額は25年9月現在で949億円に上っており、そのうち307億円が使用されている。この資金は、将来返還を要するものか、又は返還を要さない贈与となるかは、講和会議で決定される問題である。

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ECA資金

本誌1951年版収録。以下、

経済協力局(Economic Cooperation Administration)資金の略語。これは、米国国務長官マーシャルの欧州経済復興計画(マーシャル・プラン)に基づいて創られたもので、西欧諸国への援助資金は、これから提供された。目的は、これらの国々を経済的に復興させ、世界の繁栄を招来しようというので、米国経済政策の重要方策の一である。この資金は、アジアの経済復興のため、東亜地域へも援用されることとなった。オランダを通じて、インドネシヤへこの資金が流用されたのが、その最初である。また南朝鮮へも24年初めから、この資金による買付物資が送られた。日本にも援用される希望がある。

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在外財産

1952年版本誌収録。以下、

終戦当時国外および朝鮮、台湾等の旧外地にあった日本国、日本国民およびこれらの所有又は支配した団体(会社などをさす)の財産のことで、在外資産ともいう。今回の講和条約(★サンフランシスコ講和条約)によると、若干の例外(日本に占領されなかった連合国に許可をえて居住した日本人、在外公館及び慈善団体等)を除いて、(1)連合国にあったものは賠償と相殺の建前で没収され、(2)中立国および旧枢軸国にあったものは戦時中の捕虜虐待に対する補償として赤十字国際委員会に引き渡され、(3)旧外地にあったものは条約発効当時の当該地域管轄当局との取り決めで処置されることになっている。問題はこれらの在外財産に対する日本政府の補償であって、全額補償は到底認めないにしても、どの程度いかなる基準で補償するかについて大きな関心が払われている。

★今日、日本の財政が難局にあるとはいえ、このように大規模に「国民の財産権にたいする国家の保護・保障義務」が問われるような大問題は起こっていない。

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在外公館借入金

1952年版本誌収録。以下、

終戦当時、朝鮮、タイ、インドシナ等の在外公館(大公使館・領事館等)がその地域の邦人引上げの費用として在留邦人から借り受けた借金。在外資産と同様に、政府の補償が国内問題となっている。

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政府蓄積資金

1954年版本誌収録。以下、

昭和24年度のドッジ財政以来いわゆる超均衡財政によって政府に蓄積された純資産は巨額に達した。インヴェントリー・ファイナンスによる外資の手持をはじめ、見返資金および資金運用部の買入手持国債ならびに余裕金等がそうである。この余裕金も日銀預金となっているものもあるが、大部分は食糧證券や外国為替証券等の政府短期証券の保有となっていたから、政府蓄積資金というのは、ほとんど現金形態をとっておらず、したがって正確には政府蓄積資産とよんだほうがよい。近時財政に余裕がなくなってきたので、政府もこれを活用して財政資金に充てる方策をとっており、民間にはこの活用放出をもっと積極化せよとの声も強い。しかしそのためにはまずこれを円の現金化する必要があり、たとえば昭和28年度予算におけるように、見返資金や資金運用部の保有国債を日銀に売却するというような場合には通貨膨張の要因となることが注意されねばならない。

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歳計剰余金

1955年版本誌収録。以下、

一会計年度における国家予算の剰余金をいう。国の財政は、1年間の歳出と歳入の予算を作成し、これに従って運用するものであるが、その年間の途中で予算を使い果たすと、財政上の操作に種々の障害を来すので、歳入では予算額を多くとるのが常例とされ、そのために毎年その歳計上に多少の剰余金を生ずる。そして、この一会計年度(4-3月)の歳計の結果が確定するのは、翌年度の6月頃であるから、これを前年度剰余金ともいう。

★今日「…予算額を多くとるのが常例とされ…」とは表立っては言えないことである。

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新経済開発借款基金

1958年版本誌収録。以下、

アメリカがいままでの後進諸国向けの開発援助を大幅にふやし、贈与でなく借款の方式で出そうという、57年度からの米国対外援助の特色をなすもの。アイゼンハウアー大統領は本年度分5億ドルを要求したが米下院の歳出委は、2億2000ドルにけずった。後進国の返済能力からみて借款が放漫になるとか、政治不安などが理由で削減されたわけであるが、この借款方式の基金は確立された。岸首相の例の東南アジア開発基金は、アメリカのこの基金の設立を当てにしたものであるが、米議会の最終決定をまつとしても大きな額は期待薄となった。

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