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単位と基準と規格の常識・基礎知識事典
著者   白鳥 敬

花粉シーズン到来! 花粉症に関する単位・基準と限界

気象庁の花粉情報「多い」「少ない」の数量的根拠は?

毎年、花粉の季節になると、天気予報などでも花粉情報が出されます。「明日は、快晴で気温が上がりますので、花粉の量は非常に多いでしょう」などと言いますが、花粉の飛ぶ量が多いとか少ないとかの基準はどこにあるのでしょうか。

花粉の量は、次のような基準で4段階に分けられています。ただし、地域によっては、若干異なる分け方をしているところもあります。

「非常に多い」----- 1cm2 あたりの花粉数が一日に50個以上
「多い」----------- 1cm2 あたりの花粉数が一日に30個〜50個未満
「やや多い」------- 1cm2 あたりの花粉数が一日に10個〜30個未満
「少ない」--------- 1cm2 あたりの花粉数が一日に10個未満

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花粉は何時ごろいちばん多く飛ぶのか 「花粉飛散量の一日の推移」

花粉は、晴れて気温が高い日、湿度が低く風が強い日に多く飛散します。また、雨が降った日の翌日の晴れの日、午後であれば雨の降り始めの直後、などにも多くなります。では、一日のうちでいちばん花粉が多く飛ぶのは何時ごろなのでしょうか。

日本気象協会の資料によると、午後1時〜午後3時と午後5時〜午後7時までのふたつの時間帯にピークがあります。このあとの午後7時〜午後9時も、まだ花粉の飛散量が多いです。

午後に多いのは、午前中に山のスギ林で放出された花粉が都市にまで飛んでくるのに少し時間がかかるためです。日没後に多いのは、上空に舞いあげられた花粉が、日没とともに、地上に落ちてくるためと考えられています。

ところで、小型飛行機で1500フィート (約450m) も上がると、花粉症の症状がぴたりと治まります。この事実から、花粉は、それほど高空までが舞い上がらないことがわかります。

花粉の飛散量の日推移については、環境省のホームページ (http://www.env.go.jp/chemi...) に詳しい情報があります。

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花粉症患者の総数は? 地方と都市 どっちが多い?

花粉症は、スギ花粉などによって引き起こされるアレルギー反応です。主に、鼻や目の粘膜に働いて、鼻水・くしゃみ・鼻詰まり・目のかゆみなどの症状がでます。

どれくらいの量の花粉が飛散すると花粉症になるかは人それぞれぞれで、数量的限界点ははっきりしません。しかし、花粉が大量に飛散した年には、新たに花粉症になる人が増えているそうです。

花粉症患者数は年々増加しており、現在は約1300万人と言われますから、国民の約1割が花粉症ということになります。また、東京都の1996年の調査によると、都民の19.4%が花粉症にかかっているそうです。

このように、地方よりも都市のほうに患者が多いのが花粉症の特徴ですが、これは、車の排気ガス汚染と関係があると言われています。なかでもディーゼル車から排出される微粒子が、花粉症を引き起こすIgE抗体の生産を促進することが確認されています。

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花粉が飛び始める時期がわかる「最高気温の積算値」

スギ花粉が飛び始める時期は地域によって違いますが、東京では、毎年2月上旬あたりから飛散が始まります。1月の気温が高いと飛散が始まる時期が早くなります。

スギ花粉飛散開始日については、1月1日からの毎日の最高気温を積算した数値で、予測できると言われています。

この数値は、関東地方ではおおむね350〜400、東北北部で250くらいとされています。飛散開始日とは、1cm2あたり1個以上の花粉が2日連続して観測された初日のことを言います。

今年は、東京では、1月31日に最高気温の積算値が356.2、2月5日に407.7、6日には420.9に達しています。東京都のスギ花粉観測資料によると、2月6日から7日にかけて都内でスギ花粉が飛び始めていますから、最高気温積算値による予測が当たっていると言えます。

三共 (株) のホームページ (http://www.sankyo.co.jp/healt...) に、全国各地の積算温度を示した「スギ花粉温度計」が掲載されています。

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スギ花粉の飛散量の予測の目安 「着花指数」

前年の夏、日射時間が長く高温で降水量が少ないと、スギの雄花 (花粉) がたくさん発育し、翌年のスギ花粉の飛散量が多くなることがわかっています。つまり、スギの雄花を発育の状況を調べれば、翌年春の花粉の生産状況がわかるのです。

森林総合研究所では、着花指数という指数を編み出して、翌年のスギ花粉の生産量を予測しています。

着花指数とは、その年の暮れに、特定の調査林のスギの木40本の上部の雄花の量を観察し、その量をAからFの6段階に分け、各ランクに重みづけの数字を乗じて合計した数値で、0から4000の値をとったものです。この着花指数が大きいほど、翌年春の雄花 (花粉) の量が多くなります。ある年の着花指数を1として、今年はいくつかになるかといった形で用いられます。

着花指数、前年の夏の日射量・気温・湿度、最高気温積算値、毎日の気温や風向風速の観測値などから、花粉の飛散の状況がかなり正確に予測できるようになっています。

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花粉症に効くマスクとは? 「花粉の大きさ」「フィルター密度」

スギ花粉症は、スギ花粉が鼻孔や目の粘膜に付着することによっておこります。つまり、スギ花粉が体内に入らないような防護策を施せば、症状を和らげることができるのです。

そのために有効なのが、フィルターによってスギ花粉をシャットアウトする方法です。花粉防止用のフィルターは、マスクをはじめ、エアコン、空気清浄機など、多くの分野で使われていますが、フィルターの効き目はどれくらいなのでしょうか。

スギ花粉の大きさは、直径0.03mm (30μm) くらいですから、これよりも大きな粒子を通さないマスクを装着すればスギ花粉の侵入を防げるわけです。実際、花粉症用として市販されている高級なマスクは、スギ花粉より一桁小さい2μmくらいの微粒子をフィルターで捕らえることができます。ただ、市販品の中には、花粉用とされていても花粉捕集率が95%程度のものもありますから、購入する前にフィルターの性能を確認したほうがベターかもしれません。

花粉症用のマスクを選ぶ場合、吸気抵抗も調べましょう。吸気抵抗とはマスクをしたまま息をするときの抵抗のことで、この値が小さいほど呼吸が楽になります。吸気抵抗が大きいと、呼吸が苦しくなるばかりでなく、マスクの縁の部分から呼吸とともに花粉が侵入してきますから、効果は低減してしまいます。

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スギ花粉が最も多く飛散した年はいつ?

スギ花粉の飛散量については、全国の多くの自治体で観測が続けられています。それらのデータを見てみますと、1991年から2001年までの11年間では、1995年がだんとつでトップです。なお、スギ花粉の飛散量とは、花粉飛散シーズン中に測定された「一日、1m2あたりの花粉数」の積算値のことです。

スギ花粉の飛散量は地域によって違いますが、ここでは甲府市と富山県についてみてみましょう。

甲府市の95年のスギ花粉の飛散量は、単位面積 (1cm2) 当たり約7,000個。富山県のデータでは約8,000個です。2番目に多かったのが、山梨県では91年の約3,000個、富山県では2001年が2番目に多く約5,000個となっています。

スギ花粉の他に、ヒノキ花粉もアレルギー症状を起こしますが、ヒノキ花粉の飛散量も、スギ花粉が多いときは多くなっています。

花粉症の季節は、5月上旬には、ほぼ終息しますが、今年の花粉飛散量について、東京都は、昨年よりはやや少なく、過去10年の平均値の1.8倍くらいではないかと予測しています。

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一本のスギから何個の花粉が飛ぶ? 花粉飛散量の計り方

スギの雄花1個の中に約40万個の花粉がつまっているそうです。雄花は、スギの木の枝の先端部分に何個も連なってくっついている大きめの米粒くらいの大きさの花です。一本のスギの木には、雄花が数万個ついていますから、一本のスギの木が出すスギ花粉の量は膨大なものになります。スギ林1ヘクタールあたり、5兆個から10兆個の花粉が出るという計算もあります。

現在、花粉の量が100分の1という低花粉量のスギが開発され、すでに出荷が始まっていますが、全国のスギ林が低花粉のものに置き変わるにはまだまだ時間がかかりそうです。

花粉の飛散量は、ワセリンを薄く塗ったガラス板についた花粉数を顕微鏡で数え、1cm2あたり何個あるかを、一日単位でカウントして出します。飛散量測定器には、ガラス板を水平に固定した「ダーラム型花粉採取器」、ガラス板を45度傾け、尾翼をつけて常にガラス面が風上を向くようにして採集効率を高めた「ロータリー型花粉採集器」などがあります。

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花粉症の症状の重さの分類

花粉症の症状は、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、目のかゆみなどです。日本アレルギー学会の「鼻アレルギー診療ガイドライン」では、次のように、症状を「軽症」「中等症」「重症」「最重症」の4段階に分類しています。

<一日のくしゃみ回数> 1〜5回 → 「軽症」、6〜10回 → 「中等症」、11〜20回 → 「重症」、21回以上 → 「最重症」
<一日に鼻をかんだ回数> 上に同じ。
<鼻閉> 口呼吸はないが鼻閉あり → 「軽症」、鼻閉が強く口呼吸が一日のうち時々ある → 「中等症」、鼻閉が強く口呼吸が一日のうちかなりある → 「重症」、一日中完全につまっている → 「最重症」

この他、目についても、症状の重さを知る目安があります。詳細は、環境省のホームページ (http://www.env.go.jp/chemi...) にあります。

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花粉症は3月で終わるか

花粉症の代表的なものがスギ花粉による花粉症ですが、この他に花粉症を引き起こす花粉がたくさんあります。スギ花粉は3月末くらいで、飛散量が減りますが、その後も、まだ、花粉症の症状が続くことがあります。これは、ヒノキの花粉が、スギ花粉より遅れて3月半ば頃から飛散を始めるからです。ヒノキ花粉の飛散が終わるのは4月末くらいにです。

この他、カモガヤの花粉は春から秋にかけて継続して飛散し、ブタクサの花粉は5月から7月にかけて多く飛散します。他にも、花粉症を引き起こす植物として、ハンノキ、サワラ、コナラ、クヌギ、イネ、セイタカアワダチソウなどがあります。

スギ花粉アレルギーの人は、スギ以外の花粉でもアレルギー症状を起こすことが多いと言われています。4月になっても5月になっても花粉症の症状が治まらない場合は、スギ花粉以外の花粉が原因になっているのかもしれません。

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